
個人事業主兼業正社員になった今でも、私は暇さえあれば求人誌をチェックしています。
転職を考えているわけではありませんが。人事に関わる総務職である以上、業務内容とその給与の相場や、求人募集の出し方をチェックしておきたいからです。
派遣でのお仕事はここ数年の官製賃上げもあってか、軒並みかなり高時給な案件が多いですね。
事務系のお仕事でも1000円以上はザラ。勤め先の月給を実労働時間で割ると、月刊所定勤務日数によっては最低賃金近くにもなることもある、私としてはフクザツな気分になります。
それでも、私はもう二度と派遣仕事に戻りたいとは思いません。
あくまで自分の意思では、なので。もし現在の正社員職を失ってしまったら、もしくは定年退職したあとで、否応なく、派遣ふくむ非正規職で働かざるを得ないでしょう。けれども、働き盛りの今はもうこりごりです。貴重なキャリア形成の時期を無駄にしたくないからです。たまに収入の足しに単発仕事を貰うのはいいと思うけれども。
私が派遣会社で働くのをやめた理由がいくつかあります。
・組織内で立場が弱い
派遣ではネームバリューのある大組織や官公庁で働くことができます。その反面、他の派遣会社や下請け会社従業員とのトラブルも多く。なにかミスがあると、すぐに責任をなすりつけられます。とくに自分の同級生や母校の先輩後輩などが正社員で上司にいたりすると、かなりしんどいこともあります。私はかなり学歴や資格歴のことをいじられてしまい、疲弊してきました。
・業務に慣れても長続きできない
俗にいう5年縛りルール。契約期間5年超えると正規雇用せねばならないため、同じ部署同じ業務で働けず、いったん契約終了にされたりします。また数箇月ごとに契約更新があるので、雇い止めにならないか、と冷や冷やしながら働くのは精神衛生上かなりキツイです。
・交通費がしっかり出るとは限らない
近年の法改正で、派遣社員にも通勤手当が支給されるようになりました。ところが! 定期券で通勤していた派遣先から契約終了されてしまうと、日割りでしか交通費がもらえないのです! これで大損をしたことが何度かあります。
・同じ派遣社員どうしの仲が悪い
シフトの融通が利かない、責任者に気に入られた人だけが勤務日数を多くしてもらえる。こうした待遇の差で、一緒に働く仲間なのに、ギスギスしてしまいがちです。そもそも派遣社員を雇うのは、その職場に人が定着しないからで、働きづらい要素があるからです。その派遣仲間もかなり曲者ぞろいでしたね。派遣仕事は長期的な組織内の人間関係を築きたくない人が集まりやすいので、しかたがないのかもしれません。
・仕事に対するモチベーションが低い
派遣社員は正社員よりもスキルが高い、なんて言われることもありますが。たしかに小手先のPCスキルが高いことはありますけども、組織内で長らく働いたキャリアからくる責任感や折衝能力、労働生産性ははっきりいいまして正社員のほうが高いです。仕事がないときは指示された業務以外は手をつけてはいけないので、しゃべくってばかりなんてこともあり、苦痛でした。手が空いたら、他の仕事もやったほうが組織はうまく回るのに、といつもモヤモヤしていました。仕事をどんどん片付けて達成感を得たいタイプの人は、ぬるい働きかたをしたら、かえってストレスになります。
・高齢になると仕事の紹介が減る
私がいちばん恐れていたのがこれです。どんなに専門スキルがあっても、同程度の登録者はわんさかいます。そして素直で従順な若い人ほど企業は欲しがります。40代になると、事務職などホワイトカラーの派遣仕事の紹介はなくなり、コールセンターのような仕事や、肉体労働系のサービス業務しか回してくれなくなります。好きな仕事が選び放題というのは、都会で求人が豊富ならそうかもしれませんが。地方では派遣を長く続けると、失職しやすくなります。
・時間に融通が利くとは限らない
正社員のようにサビ残がない。残業代は確かにしっかり出ます。その代り、正社員から高いお金払ってるのに、というあてこすりをされます。そのため、休憩時間中も余分に働いたり、早出をしたりして無理をしがちに。
・キャリアアップできるわけではない
いろんな企業を渡り歩いてスキルアップできる。確かに私も多くの勤め先を経て、ITスキルの無さを実感し、学習に努めたこともあります。ですが、派遣業務は単一の業務を請け負うことがあるので、正社員のようにマルチタスクをこなす能力は身につきません。経理業務でも決裁権をもたない、ただの入力だけや、伝票発行だけといった、誰でもできそうな補助作業ばかりです。企業の会計や経営の中枢にかかわる仕事ではないのです。将来、起業したい人は、営業や経理、労務管理をこなす正社員になっておくべきでしょう。逆に個人事業でそうした仕事を経験したひとは、企業が雇ってくれやすくなります。
・自己の業務能力を過信しやすい
中小企業の正社員と比べると、一見高時給なため、自分が仕事ができると勘違いしやすい。というか、派遣仲間でそういう人が多かったです。過去の有名な勤め先や業務を自慢してマウントしたり。でも、今の派遣仕事と何の関係があるのでしょうか? 転職するにせよ、直前の職歴が問われます。そして、歴史の古い中小企業ほど、派遣で鼻っ柱の高い人を雇いたがらないのです。職場に定着できない人と思われてしまいますから。
・ボーナスや各種手当が出ない
正社員は月給が低くても賞与や、なけなしの特別手当があります。私の勤務先では年始はじめの出勤者にはお年玉手当として数千円支給されますし、インフレ支援として冬の賞与には嬉しい加算もありました。さらに年末には現物支給で贈答品もあって、従業員はほくほく顔です。ふだんは給与が低いとぼやいていますが、経営に問題がない限りは身分保障される正社員職はやはりありがたいと思うのです。高時給でも短期間しかできず、キャリアに空白が空くぐらいならば、月給が低くても定年まで続けられる仕事のほうが生涯年収が安定するからです。
私はHSP気質があるので、職場の環境変化におおいにストレスを感じます。
安定した業務や穏やかな人間関係を築ける職場は、正社員仕事でもあります。実際、私は今の勤め先に、とても満足しています。業界としては好きなものではありませんし、正社員ですから経理総務の専門職以外の雑用もあります。けれども、職場の同僚や上司にも恵まれて、毎日職場に行くのが楽しいくらいです。
派遣仲間とつるんでいたときは、高時給の日雇い仕事を紹介され誘われましたが。
トラブル続きでうんざりしていたので、足を洗えてよかったわけです。実際、いま自分が人事に携わる業務ですので、求人応募にくる人や勤怠が良くない人に対して、会社がどう思っているかがよくわかります。
派遣職ではポンコツ扱いだった私が、まがりなりにも、そこそこの中小企業で働けるのですから。
いま派遣仕事で苦しんでいる人は、思い切って、正社員などの直接雇用にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
私は職場内の人間関係で苦労したので、いまの勤め先では新人さんが挫折しないようにフォローを心がけています。どんな人でも明るく楽しく元気に働ける会社にするのが、家族を過労死で失った私の夢なのです。
(2023/02/18)