陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

健康本、読んだからといって健康になるわけがない(後)

2020-02-01 | 教育・学術・読書・子ども

私が次に読みたいと狙っている健康本はコチラ。
広報誌で書店員が紹介していた本です。アスリートでなくても、運動能力がなくても、からだを鍛えることはできる!という触れ込み。通販カタログのようなこしゃれたモデルが写真付きでエクササイズ。わかりやすいです。でも、三日坊主になりそうな予感も(笑)。日常の動作の気づかいで身体の老化・劣化を防ぐというのは驚きの発見ですね。

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私が健康本ヲタクになってしまったのは、自分に健康コンプレックスがあるからです。
私の父も高校時代は剣道の有段者で体力に自信はあったはずですが、中年になると、健康サプリや温熱療法、サメの軟骨でのがん治療と、惜しみなく健康療法にお金を使い、それでも50代前半で亡くなっています。糖尿病気味でお酒が手放せなかったのが命取りに。横綱千代の富士のように、早世してしまったスポーツマンもいます。健康とは、運動ができることなのか、病気や怪我とはまったく無縁なことなのか、心身タフで強いことなのか、考えさせられます。

私はかつて運動部だったので、初対面で良かれと思ってそれをアピールしたら、この人は元気だから面倒なことを押し付けても文句言わないだろうと思われることが多いです。だから思いがけず体調を崩して、実は胃腸が弱いのでとこぼすと意想外に失望されます。とくに女性陣に。女の人は自分が楽できるために使えないとわかるやいなや、180度正反対の態度をとってくる人が多いですよね。自分が痩せ我慢しているから、あなたも我慢しないとおかしいみたいな、妙な共同戦線を張ってしまうのが女なのですが、自分がイザ倒れそうになった時に誰も助けてくれなくなりますよ。

ですから、最近はもう私は健康で! 万全で! 明るくて体育会系です! というアピールをやめました。
この戦略をとっている中年男性の方も多いようです。ほんとうは寒い日には家でじっくりインドア読書するのが大好きで、という真実の自分に落ち着いてしまうのです。健康本を書いている方も、ほんとうはそういう人が多いのではないでしょうか。完全な健康法などがあるわけもなく、医学の学説が年年歳歳ころころ変わり、良薬の副作用などが批判されたりもしている時代ですから。

私の好きな作家の三島由紀夫は、中年期になって、ギリシア彫刻のような筋肉美に憧れたのかボクシング習ったり、自衛隊で演習に参加したりして肉体改造を果たします。でも、彼がいくら身体を鍛えても、やはり生粋のスポーツマンには程遠く、やはり色白の脆弱な男性に見えたそうです。この不世出の文豪がマッチョイズミに取りつかれたのは、身体検査で劣っていたため徴兵を逃れ不当にも生き延びてしまったという自責の念があったのではないでしょうか。ミシマはあまりに理想が高すぎて、自分が生み出したマッチョな英雄と自己同一化しようとして、みずからを滅ぼしてしまったという他ありません。作家が作中人物と同じに、完全完璧で、美化される必要なんてないんです。人間の駄目さ、愚かしさ、弱さを描いて、それでもなんとなく可愛らしい、そう思えるような物語こそ、ひとの感動を誘うものです。

たしかに適度な運動をして、食事にも気遣って、体形がスリムな人は、自己管理能力が高くて仕事もきちんとこなす人が多いです。でも、人間には能力差があるように、体質にも体格にも格差があります。本人の生活習慣もありますが、遺伝子的要素も加味しています。私は血糖が高いわけではないですが、お菓子や脂っこいものは控えています。両親から色濃く糖尿病を受け継いでしまったので、好きな甘いものも自由に食べられないという人もいます。

私は上司や同僚に振りまわされて無駄な作業をおしつけられ、朝四時起きで、休日も早朝も深夜も仕事のために時間を割き、あげく身体を壊してしまったあとで、「お前の健康管理が悪い」となじられたことがあります。通勤に数分しかからない他の人は仕事中にゆったり休憩したり手を抜いたり、有休で好き勝手に休んだりしているのに、です。風邪を移さないようにマスクをしたり余分に着込んだりすると、その出で立ちをからかわれたりしました。たしかに、自分が身体を壊せば誰かに負担がかかります。でも、過労死で若き家族を亡くしたことの痛みを知っている自分としては、許せない言葉でした。私の家族を殺した会社も、葬式の後で社長が「あんなに働かなくても良かったのに、なぜ適当に休まなかったの」という暴言を、わたしたち遺族に投げつけました。経営者一族はゆったりと腰掛気分で働いて、一般社員は取り換えの利く歯車のように酷使され、使えなくなった途端、捨てられる。日本のブラック企業の典型ですよね。

社会保障を抑えるために、自分で健康管理をすることの大切さが説かれています。
しかし、ひとは誰もが老いますし、不慮の事故や病気で動けなくなることもあります。自分の健康だけには神経質になっている癖に、奥さんや子どもが病気になったら、看病もしない、おかゆもつくれない、病気になるお前が悪いと吐き捨てる薄情な夫もいます。こうしたモラハラは熟年離婚の原因にもなり、お互いの老後に孤独と貧困を招きます。

度の過ぎた健康神話や運動能力賛美は、害悪でしかありません。
甘えのために弱者を装うことはいけませんが、誰もが、いつでも、どこでも、能力を十全に発揮できる漫画やアニメのようなスーパーマンではないんです。

今回は本の話から、いささか逸脱しすぎましたね。
そもそも健康本のなかには、これ実践するのは無理でしょうという方法も含まれています。
健康本、読んだからといって健康になるわけがない。しかし、私のメンタル改善のひとつは、健康本を読んで、「健康になれそうな自分」を夢想することでもあるのです。「疲れないカラダになる」って、そりゃ、死んだらそうなるでしょうよ…と言いたくなりますね…。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。

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