陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「シークレット・サンシャイン」

2019-11-09 | 映画──社会派・青春・恋愛

2007年の韓国映画「シークレット・サンシャイン」は、最愛の我が子をうしなった母親と不器用で優しい男性との愛と再生を描くヒューマンドラマ。

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事故で夫を亡くしたイ・シネは再起を図るために息子ジュンと共に、ソウルから夫の故郷・密陽(ミリャン)へ向かいます。途中、車が故障し修理工場を営むキム・ジョンチャンに助けられます。彼の好意で住処を見つけピアノ教室も開くことができたものの、都会肌のシネはおせっかい風を吹かせる狭い商店街では浮いた存在となっています。街の空気になじめないシネ母子を何かと気づかうのがジョンチャンですが、シネはつれない。

夫に操立てしているというよりは、そう大して幸せな夫婦生活でもないのに母であることにしがみついて矜持を保っているかのように見えるシネ。ある日、そのよすがであったはずのたったひとりの愛息子を誘拐されてしまいます。この誘拐事件も彼女の羽振りのいい生活への妬みが透けてみえるのですよね。

やがて家族を二人もうしなったシネは絶望の淵へと落とされることに。
このあとのヒロインの嘆き悲しみといったらもうどう表したらよいか。まさに気が狂ったとしかいえない状況。人のいいジョンチャンが影となり日向となり支えようとするのですが、彼女が救いを求めてしてしまうのは宗教。どうしてすぐ側にいる人間を頼らないのか、もどかしさが募りますよね。視聴者はどうしたって切ない思いをする側に肩入れしてしまうもの。絶望する女から自暴自棄な女に、付きまとう男はいつしか無邪気で包容力のある男へと変じていくのか。

しかし、ときに罪人をも赦すという神の恩寵は、奪われたままで取り戻せない者からすれば平等にみえる不平等でしかない。シネの精神は壊れ、生活は荒れていくいっぽう。そして最初に感じたヒロインへの同情心が湧いてこなくなる怒濤の展開の連続。男がここまで尽くしてくれるのに見返りに愛など求めてこないのに、なにが不満なのかと言いたくなります。

この主人公の男女、けっして美男美女ではないのですが、日本の俳優がやると個人のイメージがついて回ってうさんくさく感じられるドラマもすんなり受け入れられるんですよね。

極端によけいなBGMがついていないのに、ひどく緊張感を掻き立てられる映画です。
難点をあげれば、多くの方が指摘していることですがやはりあの統一教会らしき影響でありましょうか。弱ってるときに妙に優しくしてくれる宗教って怖いんですよね。宗教では救われないと批判を込めている映画なのですけどね。宗教の集会をじゃまするシーンはヒロインの特性を生かしているだけになかなか笑えてしまいます。

主演は本作で2007年カンヌ国際映画祭主演女優賞に輝いたチョン・ドヨンとソン・ガンホ。
この女優は後半から怪しいぐらいに綺麗になっていくし、男優は頼りがいのある紳士へと変化していくのがすごいですね。微妙に深い絆へと発展しはしない中途半端なラブストーリーといったところか。最後をもうすこし印象的なものにすればよかったのかも。

監督はイ・チャンドン。

(2011年6月14日)

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