陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

どうする、どうなる、日本の不適切統計

2019-02-03 | 政治・経済・産業・社会・法務

日本の社会保障制度は、世界的にみれば充実しています。
この制度は、日本人が契約を守り、法に則(のっと)り、支払うべきものは支払うという不文律によって、成り立ち、維持されています。だからこそ、われわれは税負担にも耐えている。しかし、その制度を運営するはずのお役人たちが、このありさまでは…と思ってしまう事態がまたしても露見してしまいました。

昨年末より明らかになったという、厚生労働省による不適切な手法による統計調査。
常時使用5人以上の事業所を対象とした毎月勤労統計の調査で、東京都内の大規模な事業所を調査しなかったため(一部のみ抽出調査にしていた)に、日本人の平均賃金の算出に狂いが生じたとされています。その期間は、平成12年ごろからすでに十数年におよぶ。「毎月勤労統計」では平均給与額(労働者1人あたりの毎月決まって支給する給与の平均額)を求め、「賃金構造基本統計」では、労働保険の給付に必要な、年齢階層別の最低限度額・最高限度額を毎年度改定しています。おもに影響が出たのは、雇用保険法による求職者給付のうちの基本手当、さらには労働者災害補償保険法による遺族補償年金など。ひとりひとりの日額にすれば微々たる差額なのですが、その影響は1900万人超におよび、追加支給すると500億円以上の予算を新たに組まねばならないことに。基本手当は最長でも360日ぐらいですからいいとして、労災の年金給付なんて何年もつづく場合もあるわけで、受給権者によってはかなり損失をこうむったのではないか。労災の保険給付の認定って、なかなか下りないとも聞きますし、中高年で就職困難者ですと、その給付だけが命綱の方も多いのではないでしょうか。

総務部や人事部門にお勤めの方ならご存じでしょうが、毎月勤労統計の調査シート、かつての勤め先でも郵送で送付したことあります。マークシートみたいな紙に手書きで記入した覚えが。まさか、役人さんが直接訪問して聞き取り調査するものだったとは。厚労省側の言い分は、直接訪問の予算がつかなかったとか、大規模事業所に煙たがられたからだとか。いやいや、相手が嫌がっても、事業主からきっちり厚生年金、労災、雇用保険の保険料徴収はするでしょうに。滞納したら、督促状送って延滞金つけるでしょうに。失礼なのですが、公務員は離職しても基本手当もらえないし、労災保険とは違った業務災害・通勤災害の補償になるので、自己利益にならないものは仕事をいい加減にしたとしか思えないですね。

厚生年金が平成27年に公務員や私学教職員加入の共済と一元化する前までは、公務員の共済年金は3階建て構造の年金で手厚かったですし。以前の郵政省のかんぽの保養施設もそうですが、旧・厚生省が集めた年金を積立はしたものの、自分たちの豪遊のために濫費した疑念も拭えないわけでして。

そもそも厚労省関係の疑惑と言えば。
平成19年ごろに発覚した、あの年金記録抹消問題。
さらには厚労省女性課長への証拠捏造による逮捕劇や、日本年金機構による配偶者への振替加算支給漏れや、中国への下請けに出したデータ入力で個人情報流出、働き方改革関連法審議中に議論紛糾した裁量労働制時間データの捏造などなど。記憶に新しいものでもかなりの数にのぼります。

制度をあまり知らなかったせいか雇用保険の基本手当をもらったこともなく、労災保険のお世話にもなったことがないので、今回の一件では自分は部外者ですが、他人ごととは思えない。
基本手当の受給は、働きながら老齢厚生年金を受給している高齢者の年金調整(在職老齢年金)にも響くから、影響は雇用保険、労災保険だけにとどまらないような気もしますね。労災の年金給付と国民年金・厚生年金の障害年金・遺族年金とは併給調整されて、労災側が減額されます。もし、労災の年金額を増やしたら、障害厚生年金や遺族厚生年金などが過払いになるから、内払処理(払い過ぎた分を将来の年金から減らす)したりして、もう処理が大変になりますよね。統計調査を担当している職員さんは、多年にわたって、一時的な仕事減らしのために行ったことがこんな事態を招くとは考えられなかったのでしょう。正直、子どもたちに思考力とか判断力とか求めて教育改革している側から、「頭がいいはず」のお役人がこれでは呆れますね。大臣と責任者幹部(退職者)をふくめて減給処分などがなされたらしいですが、正直、その期間の給与と将来の年金を没収してほしいぐらいです。案の定、野党が政争の具にして国会で議論紛糾中ですが、この不正統計は、あの民主党政権時代も含まれていたわけですから、安倍政権だけの問題ではありません。

もう十年以上前の記録なんて保存期間過ぎていて廃棄されているでしょうし。労災、雇用、そして年金法の給付を受ける権利の時効はだいたい2年、長くても5年なので、2000年代のデータなんてないんでしょうね。

業務量が多量で手抜きしたかったのか、非正規職員が多くて教育できなかったのか。
この統計、各省庁で調べてみたら、かなりの数、不適切手法が明らかになったようで。障害者雇用の水増し問題もありましたねえ。日本の公務員の不正は賄賂の多い海外よりはまだマシで、米国のように政権交代すればそっくり官僚が入れ替わってしまうのに比べたら、労働環境はまだまだ安定しているはずですけれど。民間企業でもそうですが、責任者がかってにマイルールで仕事のやり方を変えてしまって、それが受け継がれていってしまうケースはありがちです。

昨年は、厚労省のみならず、文科省や財務省でもトップ級官僚の不正が相次いだものでした。
アベノミクス景気がいざなぎ景気を抜いたというニュースがあっても、庶民の懐は淋しいまま、社会保険料の負担率は年々増加し、可処分所得は増えず、日銀が物価上昇をもくろんでも年金の価値が下がるばかりでいいことはありません。

なんだか役人批判の記事になってしまいましたが。
正直、毎月勤労統計にしても、調査が煩雑ならば正式な手続きを踏んで、悉皆調査をサンプル調査にするとか、柔軟にしてもいいのではないでしょうか。いたずらに不安を煽るつもりはないですが、このすばらしい日本の社会保障制度が十全のままでいつまで続くか懸念材料が多いですよね。国債の発行額はますます増えていますし。

今年の春闘では官製賃上げの声が控えめで、企業なベースアップに消極的な姿勢が示されています。給与が上がれば、所得税も社会保険料も上がり、事業主も個人も自己負担が増える。物価が上がれば手取りは減ってしまう。悩ましい限りですね。この10月にはいよいよ消費税増税もありますから。


ジャンル:
びっくり
この記事についてブログを書く
« ブログやSNSに好きな作品... | TOP | 映画「シービスケット」 »
最近の画像もっと見る

Recent Entries | 政治・経済・産業・社会・法務