陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

SNSではバズったのに、書籍になるとパスされる漫画

2019-01-29 | 教育・学術・読書・子ども

手塚治虫や藤子不二雄の形態模写で知られる漫画家の田中圭一氏が、ツイッターでこんな発言をしています。いわく、SNS漫画が書籍されても、最近、あまり売れなくなった、と。

インターネットは本を駆逐すると恐れられ、それは半分は正しいのですが、なかなかどうして。
iモードが流行ったときには、携帯電話からメールを打つ感覚で書いた簡潔な、ケータイ小説が話題に。主に若い女性向けの恋愛話が主軸ですが、横書きでいくつか書籍化されました。たしか、あの瀬戸内寂聴すらも別名義で書いたりしていたはずです。その後、ブログを書籍化するサービスもはじまり、たとえば主婦の書いたブログをもとにしたお片付け本やレシピなどがヒット。gooブログでいえば、「くるねこ大和」という、本職デザイナーさんによる猫漫画が知られていますね。その後、個人でキンドルにて電子出版できるようになったためか、ブログの書籍化サービスは下火になりましたけれど。

これに代わる動きが、SNSでここ近年登場。
ツイッターでバズったり、ピクシブで高得点の漫画などを、出版社が書籍化する流れがあります。オリジナル小説の投稿サイトでも書籍化をもくろんだ賞をもうけたり、人気作をアニメ化したりする企画もありますよね。

今回、ネットで好評だったわりには書籍化すると売れない、といわれはじめたSNS漫画。
このSNS漫画というものがどういったものか、私はいまいちよくわからないのですが…。ツイッターでよく流れてくる日常ネタ漫画みたいなものなのだろうか。オリジナル創作の百合とかBLとかの萌えだけの漫画なのだろうか。ネット上の漫画の投稿サイトのストーリー漫画ではなくて、ほんとにツイッター、ピクシブ、などでの活動しかしない描き手さんということなのでしょうか。だいたい、そういう人は同人活動もしていると思われますが。

この疑問に対して、ツイッター上のまとめでは。
・SNSでリツイートやいいね押しをした人が購入するとは限らない。反論やただのブックマーク、義理ポチでの反響もありうる。
・お金を出して所有したいプロの漫画と、暇つぶしに流し見するだけの漫画の違い
・消費者の財布のパイが限られているのに、SNS発から濫造しても無意味
・SNSでの漫画の見栄えと、製本された漫画の質は異なるから

などの意見が見られたのですが、いちばん興味深かったのは。
「SNSでは作者と読者の距離が近いのが売り。しかし、書籍化したとたん、作家ぶって遠ざかってしまう」という分析でした。逢いに行けるアイドルだった人が遠い存在になって、ファンとしたら、いささか淋しいといったところ。

たしかに言われてみれば、人気のあるユーチューバーと、テレビに出て名の売れた芸人や役者の存在感の差というべきなのかもしれません。
人気者のユーチューバーやインスタグラマーはいつでも普通の素人に戻ることが出来そうですが、その昔、ドラマの子役として売れたり、紅白に出たことがあったりするような歌手などだった人には、現状はともかく、その体験が特別なものとして認識されすぎているはずです。誰でもできそうなことで庶民の英雄になるのと、限られた狭い世界に仲間入りした特権意識を持つのとの違い。そして、マスコミも、エンタメ業界も、ポピュリズムの波にのまれて、主導的にヒットを生み出すことが予測できなくなっている。識者とか専門家といった集団におけるタコツボ化、なのかもしれない。

しかし、私、すこし気になるのは。
漫画ほんらいの質よりも、ネットでの話題性ばかりを尊ぶ傾向が、良作を埋もれさせているのでは…?という懸念。 編集者さんが自前で作家を育てようとせずに、即戦力になりそうなネット上での野良クリエイターを安く買いあさって、フォロワー向けに営業もさせ、労せずして利を得ようとする姿勢にあるのではないかと思うわけです。漫画だけではなくて、小説でも同じなのでしょうが。

個人が好き勝手につくったものを、こちらの販売ルートで売ってやるから権利を半分寄越せと言っているような横暴さを見てとる向きもある。
書籍をぽんぽん出すのもいいけれど、すでに絶版になったような過去の良作をもっとPRしてもいいのでは。SNSでウケる漫画はやはり電子書籍として収益があがるようにしたほうが、読者層ともマッチするように感じますね、やはり。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。



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