陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本を維持していくという覚悟、ありますか?

2017-10-15 | 政治・経済・産業・社会・法務
期日前投票、さくっと行ってきました。
混雑で並ぶのは時間の無駄。選びたい候補はもうあれしかない。迷うことはありませんでした。就活や受験が迫った高校生や大学生はたいへんだろうと思いますけど、自分で社会に関心を持って一票を投ずるのは、大人の自覚を促す大切なことです。

開票まで1週間と迫ってきましたが、地方では盛り上がっていません。
遊説、いつ巡回しているのか。ウグイス嬢のアナウンスが、閑静な田舎にむなしく響く。駅前でなにか喋ってるな、という感じ。選挙区が拡大して、議員さんの負担もたいへん。

国会議員の選挙に限らず、地方では選挙に冷めているふしがあります。
私の業務が関与する某自治体は、町長選で対立候補がおらず、副町長だった人物がそのまま当選。遠戚筋に昔、選挙に出て負けた人がいます。北杜夫の『楡家の人びと』の病院長よろしく、落選した後、家業も傾いて落ちぶれていくんです。選挙にはお金がかかりますから。

いまはネットというツールもありますから、国民の反応が政治家にダイレクトに届きやすくなっています。ですから、金満体質といわれた自民党ですら、民主党連立政権へ政権交代の二の舞を恐れて、国民におべっかをふるまうような公約を口にするようになっています。
数年前のなんちゃら野党の「アジェンダ」とか「マニフェスト」とかいう言葉がすっかり聞かれなくなった今、与野党の政策方針にあまり違いはなくなっているのではないか。

自民党の掲げた公約は、なんとなく、ふわっと緩い。
策士ですね。具体的にこれをやります、なんてもう言えない。民放の原則では、口約束でも契約は成立するのだけれど、彼ら政治のプロはかつて、国民の合意というものを意識していなかったのです。でも、いまは、すこしでも言質をとられるから慎重になる。なんとなく悪い数字を隠していて、国民を欺いているような気がする。産業構造が変化して、為替リスクで企業業績が激変して、こんなにハイスピードで少子高齢化が進むなんて予想できやしなかった。国際情勢だって、隣国の指導者の顔が変わっただけで反転してしまう。安倍さんも解決に助力した北朝鮮拉致問題について、なぜか意欲的なトランプ米国大統領は嬉しいけれども、人口減少が急速に進む日本は、移民受け入れで国土を侵略される恐れがある。

われわれ国民だって怠けている。選挙の時だけ、国の行く末を考えてしまう。
ふだんは自分の目先のことだけに忙しいから。国民は移り気ですよね。政治家のスキャンダルは叩くけれども、では、自分が国を維持するために何ができるか、深く考えているのか。

私と同世代の就職氷河期、もしくはそのうえの団塊ジュニア世代は、子どもの頃にバブルを経験しています。正社員としての就職率は悪かったかもしれないけれど、すくなくとも、子どもの頃に家でご飯が食べられない、ということはほとんどなかったはずです。いま、子どもの貧困は少し解消したとはいえ、先進国では最悪の水準。

いまの30代、40代で定職に就けていない、すなわち、ずっと派遣社員、大企業や公法人などでの非正規のままの人は多いです。自分も一時期そうでした。組織のネームバリューに寄りかかって不安定な身分のまま、職業能力開発ができていないので、自分の専門業界がつぶれたらどこにも行けないんです。労働契約法改正によって2018年4月から無期転換ルール(有期労働契約が通算5年超えで反復更新されたら、労働者の申込によって無期転換可能)が適用されるのですが、正規社員と非正規社員との格差は依然あります。すでに働くことすら、もうあきらめている人だっている。将来的な無年金者・低年金者を大量に生じます。

いまの団塊の世代が75歳以上になると年金給付額と医療費高騰で社会保障が圧迫される「2025年問題」が話題になっています。でも、ほんとうに問題なのは、次の人口ボリュームゾーンである、いまの30代、40代です。この世代が結婚もしないし、子ども産まないし、低所得のままでいる、下手したら親に依存して自立していない。いまだに高収入の男性と結婚して養ってほしいと夢見ている、中年シングル女性もいます。自分が伴侶に恵まれないので、女性を攻撃している男性もいます。子どもがいるけれど、精神的に幼い人もいますよね。『未来の年表:人口減少日本でこれから起こること』(河合雅司著・講談社現代新書・2017年)が指摘していますが、私と同じ中年のこの世代が成熟しないまま65歳を迎える2040年代以降が、どうなっているか、考えたら恐ろしいものがありますよね。

「自立する力」を相続できない子が貧困になる──運命を分ける「非認知能力」の向上を支援せよ(東洋経済オンライン 2017年3月27日)

教育の大切さは身に沁みて理解しています。
若い皆さん、その教育を受けられるありがたさをもう少し考えてほしい。老人もそうだけれど、ひとりの学生を養うために、どれだけの働く人が苦労しているか、わかってほしい。私は公的支援や企業からの奨学金がなければ、学ぶことができませんでした。いま、その恩返しだと思って、収入を上げて、少しでも多く納税したいと思っています。教育費支援は、やる気のある低所得世帯のお子さんにお願いしたい。政治家は納税者が納得するように、税金の割り振りを考え、身を正してほしい。

日本にいる限り、今を生きる限り、過去が残したものも、未来へ残さなくていけないものも、承諾なくして受け継がされていくんです。これだけお金払ったから、それにふさわしいサービスを、では済まされなくなっている。行政サービスを縮小すべきなのに、みんな国にぶら下がろうとしている。

世代間でも不公平があるけれど、同世代でも、シングルか否か、子や親の扶養義務、職業形態、学歴、介護や空き家の負担などによって、格差がひろがっています。当然ながら、弱者を自称する人の声ばかりが大きい。漫画家やユーチューバーになって楽して稼ぎたいとか小学生が平気で言う世の中、おかしいと思いませんか? 長生きしたくない、早く死にたい、と嘆く人もいます。でも、これまで普通に生きているだけで、国に育ててもらった分を、先の世代に負担してもらった分を世の中に返さねば、勝手に死ぬのは、大人としては無責任ではないでしょうか。

いまだに老親が毒母・毒父だったと嘆く人。あとは若い人に任せた、と責任を丸投げする人もいます。自分はあんな中年になりたくないな、醜くていやらしい、という負のモデルに確実に自分が近づいている。いまは、しっかり納税していますけど、明日はどうなるかわかりません。でも、自分が上の世代から投げ下ろされてしまった重荷を、そのまま下の世代へ押し付けていいとは思っていません。先日、NHK朝のラジオ番組で、法政大学総長の田中優子氏が語ったように、「わたしたちは、次に生まれるこどもたちのために、貰うべき年金を諦めねばならない」のかもしれない。

自分をふくめて、就職氷河期世代や団塊ジュニア世代は、今後の日本の未来でのお荷物になりかねません。いつまでも若いとは言っていられない。わがままな老人にならないように、これからの未来に自分がなにができるか考える機会が、この選挙でもあるのでしょう。代議士を再就職させてあげるだけでなく、自分の政治思考を見直す契機でもあるのです。


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