陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

幸せに働くこと──ある新人イラストレイターの遺した手紙(一)

2017-11-23 | 仕事・雇用・会社・労働衛生

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若葉が薫るこの初夏をいかがお過ごしでしょうか?

先日体調を崩し、大事をとって会社を休み、家で休養していた時、この数日間、部屋の掃除をするのも手付かずの状態でしたので、この機会にしてしまい、ふと机の引き出しを覗いてみると、О先生が担当なさっていた頃に毎日書いていた日記を発見し、思わず読み耽ってしまいました。そして、懐かしさのあまり、こうしてペンを取りました。

毎年、私が先生宛に出している年賀状は書きたいことがたくさんありすぎて、いつも多くの文章で埋めてしまうので、見た目にも、ちょっと見苦しさを感じさせてしまうので、申しわけありません。なんとか無駄な言葉を省こうとしても、私の文章力がないせいか、墓穴を掘ってしまいます。これからは辞書を片手に上手くまとめようと思っていますので、どうか長い目で見て下さい。

さて、私は中学、高校を卒業し、この不況の中、無事に就職して2年目に入るわけですが、今、社会の厳しさをひしひしと感じている真っ最中というところでしょうか。相変わらず苦難の日々が続いています。

先生、人間関係って難しいですね。
日記に目を通している時に、先生が「嫌いと思っても、それ以上嫌いと思わないようにする」という言葉が書かれてあり、その言葉をはじめて聞いた時から今でもずっと印象深く残っています。中学の時の私なら、その言葉に対して「絶対、私には理解できないことだろう」と思っていました。何故なら、私には小さな頃から人見知りが激しく、話をする仲であっても自分の気の許せる相手ではなかったら、挨拶もしないぐらいでした。ですから、「自分が嫌いなら、嫌いなままでいたらいい。どうせ、自分に関係ない人」と思っていました。

今、思えば、とんでもないことですね。
現に今の会社でも嫌いな人はいます。男のくせに女のように噂話が好きで(何故か私の課の男の人達全員がそうです)、特に一人では何もできない人は最低最悪ですね。おまけに本人がその場から離れている時に言ってたりしていることが聞こえてきた時は、何とも言えない気分です。私から見れば、そんな事を言える立場じゃない人も数人います。けど、みなさん、立派に仕事をこなすところがすごいなと尊敬してしまいます。あとは思っていること、何か気が付いたことを素直に忠告でもしてくれたら私も文句はないのですが…。なかなか難儀な所です。それと周りにそういう男の人がいるのに、男の人が嫌いにならない自分が不思議です(笑)。

「嫌いな人をそれ以上嫌いと思わないようにする」。
自分でも実現できているのかわからないのですが、昔に比べると、必要以上に人見知りすることはなくなり、また相手によって話を合わせたり、そして目上の人が私のことを褒めてくれても、例えばイラストを描いても「すごいなー、こんなん描けるん?」と言われたら、「でも、この前、△△さんが描いていた親子で二人三脚しているイラストの方がすごいですよ。あの表情の表現の仕方など私も見習わないといけないと思いました」と言って、逆に相手の立場を持ち上げたりするようになりました。私の苦い経験で、先輩の格を下げる発言をしたしてしまったことがあるので、自分の立場を弁えることは気をつけています。

それに何より、「嫌い」と思う人自体少なくなりました。うれしいことです。あとはそうですね。私自身もっと大らかになりたいです。

仕事の面では、何とか上手くいっています。
今はイラストと、LINAXというコンピューターの担当と、それと製版の仕事をしています。去年、我が社の商品化したものを作り、販売していく目的で、私が描いたイラスト8点のうち2点が見事に封筒と便せんになり、また今年も描かせてもらえるのですが、描くテーマが去年と同様、地元の名所なので、ちょっと苦戦しています。それに描き方もサイズも変わったので、まだ手付かずの状態です。仕事の合間に描けたらいいのですが、今ではその合間がなかなかできません。でも、私のことだから、そのうち何とかしていることでしょう、多分……。

それとうれしいニュースがあります。
私が高校3年の時に県が主催しているスポーツ・レクレーション祭が始まり、当時から母校の美術部の方にポスターの依頼がありました。私もその時描いたのですが、その年は私のポスターは候補には挙がったのですが採用にはなりませんでした。美術部顧問のK先生が私のポスターを県庁に持っていたところ「新しいのを1枚描いて下さい」と言われて却下。そして、3回目の今年についに、私のが採用されました。うれしい限りです。もともと、そのスポーツ・レクレーション祭に関する印刷物は全て我が社でしていたので、K先生もずっと薦めて頂き、やっとのことで採用されました。この話を聞いた時に思わず「しぶとい作品だな」と思いました。

もともと私が××印刷株式会社に入社できたのも、このスポーツ・レクレーション祭がきっかけなんです。県庁へK先生がポスターを持って訪れた時に、我が社の営業部長のI部長がいて、先生と知り合いになり、就職のことなどをいろいろ聞いて下さって、先生も「10年に1人の逸材の子がいるんですが…」と言ったそうで(これは後から、I部長に聞いたのですが)、それを聞いて部長は「そういう子がいるのなら、ぜひ一度、我が社の入社試験を受けてみて下さい」と言ったそうです。

おかげ様で今はこうして、私の好きなイラストを描ける仕事に就かせて頂き、K先生はО先生同様、私の恩師です。今でも仕事のことを相談しに時々母校の方へ足を運ぶのですが、いろんな事を言って同意してくれたり、間違っていればはっきり否定して頂き、そして励まされ、そのたびに「私は頑張ろう」と思います。

これからも長い道のりがあるでしょうけれど、いろんなことを経験し学び、成長し、1人でも多くの良き理解者を得たいと思います。

それから、私は理想が果てしなく高いので、1年ずつ現実に近づけるつもりです。どんなに長い時間をかけてもです。ですから先生が「次に結婚するのはTかも」と言ってましたけど、当分の間無理ですよ。でも、私の目の前に私好みの人が現れたら別ですけど…。

最後に、日記に先生が「毎日色んな事を感じ、そして学習していますね。良いものを良いと感じる心や反省点が自分の心の宝であると思います。他人に責任を負わせるのではなく、自分自身を反省し、周囲に振り回されることなく、芯のしっかりしたやさしい女性に成長してくれると思います」と書いていました。

私は今、少しでもそういう女性になっているでしょうか?
先生が心の片隅にでもそう思って下さるのなら、私はうれしいです。では、O先生は私の父と同じように大切な人です。いつまでも元気でいて下さい。


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【幸せに働くこと──ある新人イラストレイターの遺した手紙(二)】
会社にとっては、ひとりの未来ある新人が会社で亡くなった事実など、芥子粒にひとしいできごとにしかすぎない。しかし、家族にとっては、その人間は誰にも置き換えることができない。貴重な働き手をうしなうことは、大きな損失であることを認識しよう。
 
【幸せに働くこと──ある新人イラストレイターの遺した手紙(三)】
政府も、企業経営者も、管理職も、その会社で働く人も、その家族も、みんな幸福に健康に働くことの意味を考えてほしい。元気で働ける人は、ますます少なくなっていく。この国で、誰一人として、欠けてはいけない。


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