陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「戦場にかける橋」

2017-08-15 | 映画──社会派・青春・恋愛
1957年のイギリス映画「戦場にかける橋」(The Bridge on The River Kwai )は、戦闘シーンがなく戦争の愚かさを描いた異色の反戦映画。惨たらしい殺戮がなくとも、地位のある人間の驕慢や誇りというものが、弱い立場の人間を苦しめる。それが戦争の本質だということをブラックユーモアをまじえて(?)描ききった大作です。人によってはこれが人間愛に溢れる作品と映るかもしれませんが、私には戦時下の無情を描いたとしか思えません。

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太平洋戦争中、日本軍に占領されていたビルマ・タイの国境。
英国人のニコルソン大佐率いる部隊数百名が、日本の捕虜収容所に送還されてきます。収容所所長、斉藤大佐はクワイ河に架かる鉄道橋の開通(ビルマとタイを結ぶ泰緬鉄道)を急ぐために、英国兵捕虜を労働力として駆り出す命を発します。
が、しかし。誇り高いニコルソン大佐は、将校らまでも現場の労役にあたることを受け入れられない。あくまで、英国人将校の陣頭指揮のもとで行いたいと主張を曲げない。飲まず食わずの監禁状態に置かれても屈しないニコルソン大佐を受け入れ、ついに斉藤大佐のほうが折れることになります。

前半部ではあたかも斉藤大佐が非人道主義者の鬼のように、対するニコルソン大佐が脅迫にも怯まない勇猛なヒーローのように印象づけられます。
ところが、ニコルソン大佐は橋の建設が、敵国を利する反逆行為であるということをすっかり忘れているのです。彼にあったのは、囚われの身であったとしても後世に残る大事業を成し遂げたという名誉欲だけなのでした。ニコルソン大佐の行いは純粋にも思えますし、しかし、目的のためなら傷病者まで駆り出すという非道さは、むしろ斉藤大佐の強引さをも超えていくのです。

ニコルソンの心血を注いだ橋が完成したとき、まさにそれは、ふたりの日英の軍人の友好の架橋の象徴となっていたのでしょう。人間は目的を同じゅうする際にはいがみあっている隣人とも手を携えあっていけるものです。このあたりは、第一次世界大戦中のドイツ人捕虜と日本人収容所との交流を描いた「バルトの楽園」とも似ているのですが、本作は国を超えた人情ものに終わったりはしません。

本作の第三の主人公として物語のクライマックスを握るのが、アメリカ海軍所属で捕虜の身となったシアーズ中佐。彼は仮病を装って野戦病院にまんまと入り労役を逃れたあげく、脱走に成功します。斉藤大佐やニコルソン大佐に比べれば、将校の名が廃るといえるほど軍人としての誇りが一分も感じられない彼の行動に呆れかえるのですが、それには驚くべき事情がありました。
そして、シアーズもまた、流されてきた川を逆に押し返されていくように、逃れてきた戦場に戻らざるを得なくなります。

口笛の行進シーンや、落下傘の事故などがなんとなく、「史上最大の作戦」を思わせますが、複数の主人公をまじえた群像心理劇という点では、なんともたくみな構成です。時代がかった音楽もいいですね。

出演は、「麗しのサブリナ」のウィリアム・ホールデン、本作でアカデミー賞主演男優賞を手にした「アラビアのロレンス」(1962)のアレック・ギネス、元祖日本人のハリウッドスターにして「緑の館」の早川雪洲。
監督は「ライアンの娘」「ドクトル・ジバゴ」「アラビアのロレンス」など戦争を扱った大作を得意とするデイヴィッド・リーン。
原作はフランスの作家ピエール・ブウルの小説『クワイ河の橋』

本作は、アカデミー賞で作品賞、監督賞ほか七部門を制覇。
日本人の描かれ方がやや気になりますが、淡々とドライに物語を進めていく手法がかえって結末のあとに押し寄せる虚無感を増してくれるのです。

それにしても、本作の筋書きは、近年、東南アジア諸国に進出して外国人労働者を監督下におきながらも運営に四苦八苦している日本の企業の実情にそっくりあてはまるのではないでしょうか。

(2011年3月22日)

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