陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

いつまでもあると思うな、障害者利権(後)

2019-08-09 | 医療・健康・食品衛生・福祉

また先日には、ひとり親の身体障害者が障害年金受給のために、それまで支給されていた児童手当を打ち切られたことを不服として、訴訟を起こしました。
公的給付を併給できないことが理由とのことですが、父母の片方が障害年金の受給権者で、その片方が児童手当を受け取っているケースもあります。この原告の母親は、4人の子育てに追われる中で、突如、筋委縮性の病気にかかり車椅子生活を余儀なくされています。しかも、夫からDVを受けて離婚したとのこと。既婚者と比べるとシングルマザーは貧困に陥りやすいのに、かなり不合理な制度といわざるをえません。厚生年金被保険者のみだった産休中の年金保険料支払い免除とて、今年4月からやっと国民年金被保険者にも認められています。児童手当法によれば、児童手当は「15歳到達日以後の最初の3月31日までの間にある子(中学校終了前の児童)」に支給され、第4子までいれば月額5万か6万、年額にすれば70万以上にはなるでしょうが、しょせん子が大きくなるまでの期間限定です。公的給付は併給できないといいながら、障害基礎年金は、老齢厚生年金、遺族厚生年金と併給できます(ただし受給権者が65歳以上に限る)し、労災の障害(補償)年金、傷病(補償)年金、および休業(補償)給付、遺族(補償)年金は、社会保険の年金給付とは併給(ただし、労災保険の年金給付が減額)されます。配偶者の扶養にも入れないひとり親障害者で、しかも重度の身体障害者であるのに、差別されるのは不当きわまりないものです。

ただし、ここで注意しておきたいのは、この原告が「障害基礎年金」の受給権者であることでしょう。
障害基礎年金には、「受給権者によって生計維持される」子の加算があります。
18歳到達年度末までの子(障害等級に該当の子は20歳未満まで)が2人までならば、1人につき224,700円×改定率、3人目以降はさらに1人につき74,900円×改定率。これは年額ですから、この原告の4人の子18歳未満とすれば、60万円近くはこの加算額として支給されます。これは4人の子の児童手当年間受給額よりは少ないでしょうが、子が18歳まで支給されることをかんがみれば、障害基礎年金に子の加算額がある場合は、児童手当の支給を打ち切られてもいたしかたないのかもといえなくもない。

しかし、ここで問題なのは、配偶者がいる障害者のケース。
父が障害者でしかも、障害厚生年金(会社員として勤務中に障害等級2級以上に該当)の受給権者であった場合、配偶者加給年金額として母の分まで年金受給額が224,700円×改定率分だけ増えます。この父が、また別の障害で障害基礎年金の受給権者でもあったならば、障害厚生年金と障害基礎年金は併給できるので、上述のように子の加算額もあります。そこで、健常者の母が児童手当を申請すれば、障害年金の子の加算額と児童手当とが夫婦そろえば世帯に支給されるというわけです。働きざかりの父が障害者で介護が必要なほどであれば、子育てに追われながらの母は働きに出られませんから十分な補償といえましょうが、ひとり親の障害者からすれば、ふた親揃っているだけで併給できてしまうのは制度上の不備だと思われてもしかたない。

そもそも、日本の年金制度も税制も、サラリーマン男性に専業主婦、子がいる世帯という、すでに昭和モデルの家庭像にもとづいており、単身者や事実婚、あるいは法律婚できない同性パートナー、子がいない夫婦なども増える現状にあっては、きわめて時代遅れのシステムになりつつあります。専業主婦優遇策の年金政策が、女性の社会進出を遅らせたとも考えられます。

制度の不備から社会保障の恩恵に預かれない人、いたずらに福祉の利権にすがりつづける人も、それぞれの事情があります。
少子高齢化にともない、日本の社会保障費は年々ふくらみつづけ、世代間の不穏な軋轢を招いてもいます。この議論はみだりに政争の具にせず、常に国会で議論していただきたいものです。


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