
ふだんよりも長い連休があると、あれやこれやと計画をめぐらせてしまう。
だが実際はその半分もこなせないことが多い。スケジュールを詰め込み過ぎて倒れてしまうことがあるからだ。
会社員としての就業がはじまると、私がまず真っ先に気遣うのは時間管理である。
これは個人事業主専業時代とは異なる点だ。
家でひとりで仕事をすればいいときは、好きなだけ、細かくつきつめてやればよかったし、疲れれば途中で寝ても、深夜に片付けてもよかった。嫌なことはと回しに、自分のご機嫌次第でいくらでも行政機関に毒づいたり、士業の専門家に電話して尋ねればよかった。すべては自分優先だった。
だが、会社は朝型人間の舞台。
労働契約で決められた就業時間内に仕事を終えないと、無駄な残業代が発生してしまう。いやでも、自分の労働時間単価を意識させられてしまう。
休日もそうで、仕事同様、あらかじめやることをリストアップしておく。
早朝は集中できるゴールデンタイム。静かだし、空気も澄んでいるし、電話もかかってこず、不意打ちの訪問客もおらず、誰にもじゃまされない。
平日最後の金曜夜に、その週の洗濯と掃除をすることにしている。
そうすれば土曜は丸一日自由に使えるからだ。自分のプライベートに使うのは日曜の午前中まで。午後からはもう仕事モードで、就業先の資料準備や下調べ、業務ノートの見直しに臨む。
一週間の仕事着も、洗濯が渇いた土曜日はローテーションで決めておく。
そうすれば、日曜夜になって、明日から仕事だな、と鬱々とした気分で準備しなくてもいいからだ。
休日は、完全に24時間フルに遊ばない。
空き家の管理も時間を決めて、さっと切り上げている。同居人からの面倒なお願いも、できる範囲を限定し、無理そうならシャットアウトしている。何もかも請け負うと、自分がつぶされるからだ。
以前、日曜夜になってから水道の蛇口が壊れて自分で修理をする羽目になったときは、さすがに同居人に猛烈に抗議をした。同居人は家事の分担者でもあるのよいが、まったく他人の、あるいは近い身内の時間のかかることを無償で頼んでくるような人とは縁を切っている。すぐに返事しなくてもいい電話やメールには出なくてよい。
掃除や片づけはいっぺんにではなく、スキマ時間にこまめにやれば、時間がかからないし、いつもほどほど衛生的に保たれた部屋で過ごすこともできる。
散らかりやすい本や書類は置き場所を決め、そこからはみ出ることがあれば、自分が疲れて正常な状態ではないと認識する。
休日に読む本も精神的負荷のあまりかからないものにしている。
二次創作などの趣味も、時間のある時でないと作業しない。のめりこんでしまうのが怖いからだ。シリーズの長い漫画や小説も手を出さなくなった。現実へ戻れなくなってしまうからだ。美術鑑賞や映画鑑賞も縁遠くなってしまったし、もう楽しむ余裕もない。それでいいかと思ってもいる。
こうしたペースをつかんでいくのに、私は個人事業をはじめて、さらに会社員とも兼業して、10年かかってしまった。
休日のみならず、これは出勤当日朝も同じで。
以前は朝3時起きでおこなっていたタイピング練習やら資格の勉強やらをやめて、出社準備できたら半時間ぐらい仮眠をとることにしている。これがかなりカラダが楽で、仕事がしやすくなった。
ほんとうは士業資格に挑戦したいが、会社員の仕事の支障が出て、収入を失ってしまっては本末転倒だからだ。
個人事業主一本いや、それ以前の無頼の身であったときから、私はすでに定年退職後のシニアのような、暇を持て余した生活をしてしまっていた。
ときにはゆったりと自分の人生について考えるのもよいことだ。だが思索しすぎると、よけいな事を考えてしまいがちになる。
休日に、あるいは出社前のスキマ時間に、余裕のある時間を過ごすことで、仕事に対するやる気と疲弊のリカバリーが異なってくる。中高年になると、これは大事な処世術である。
(2022/07/17)