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東京~成田が20分台に? 京成電鉄の“時速200km”逆転シナリオ → 「狭軌の新幹線」の最大時速

2022-10-16 01:38:21 | 政治経済問題
いわゆる、「スーパー特急方式」と言われる、「狭軌(1067㎜)の新幹線」における最大時速に挑もう、ということだな。




“ドル箱”スカイライナーが閑古鳥
 京成電鉄(千葉県市川市)が2020年度、2021年度の2年連続赤字にあえいでいる。コロナ対応で世の中が「リモート」の合言葉のもと、国民が一斉に不要不急の外出を手控えた結果、列車内はガラガラとなり、鉄道会社の経営を直撃したのは周知のとおりだ。京成の場合はこれに加え、インバウンド(訪日外国人)を事実上入国させない「令和の鎖国政策」が経営難に拍車をかけた。

 同社には、他社がうらやむドル箱路線「京成スカイライナー(SKL)」がある。東京都心~成田空港を直結する全席指定の特急電車で、まさに「京成の顔」。ところが、政府が進めるコロナの水際対策でインバウンドの日本上陸を事実上シャットアウトした結果、インバウンドの利用割合が極めて高い成田は閑古鳥が鳴く状況に陥り、SKLも連日「空気を運ぶ状況」となった。果たして、業績を回復させて“安定飛行経営”へと移行する処方箋はあるのだろうか。

在来線でトップクラスの速さを誇るSKL

京成は、JR山手線日暮里駅~成田空港(空港第2ビル駅)を最短36分で結ぶSKLを筆頭に、アクセス特急(同路線を走る普通運賃の電車)、京成本線を走る同じく普通運賃の快速特急などを加えた、都心~成田のいわゆる成田空港アクセス線が収益の大黒柱で、営業収益全体の実に3割を占める。

 ちなみにSKLが走る京成成田空港線(スカイアクセス線)は、京成本線の京成高砂駅(葛飾区)から分岐し、千葉県の松戸市や鎌ヶ谷市、千葉ニュータウンなどを横切って成田に至る路線で、全長は約51km。高速運転を前提に建設しカーブも少なく、全線が連続立体交差で踏切は皆無だ。

 そもそも京成の線路幅は新幹線と同じ1435mmの標準軌のため、JR在来線や東急電鉄の大半、東武鉄道、小田急電鉄など国内の大半の鉄道会社が採用する同1067mmの狭軌よりも幅が広いく、列車は安定してスピードが出しやすい。その結果、SKLは最高営業時速160kmと、国内在来線のなかでもトップクラスの速さを誇る。

 SKLにとっての富の源泉である成田は、政府が2016年に掲げた観光ビジョン(2020年度にインバウンド4000万人、30年度に同6000万人)を追い風に飛翔を続け、コロナ前の2019年の空港旅客数は過去最高の約4434万人(外国人約3670万人、日本人約764万人)を果たした。だが、コロナで事態は一変。2021年は約524万人(同189万人、約335万人)と失速し、外国人に至っては前年比約85%減という、歴史的な負の数値を記録せざるを得なかった。

 翻って成田国際空港株式会社(NAA)が調べた、2018年度の出発旅客のアクセス交通等実態調査によると、鉄道が全体の約47%を占め、

・バス(約35%)

・自家用車(約13%)

を大きく引き離している。また鉄道の内訳を見ると、京成が28%(SKL13%、他の成田スカイアクセス線6%。京成本線9%)で、JR東日本の19%(成田エクスプレス/NEX14%、他のJR線5%)に大差をつけている。ところが、成田の旅客数激減でこうした京成の優位性が一転、アキレス腱(けん)になってしまった。

2029年に発着枠50万回目指す成田

その後のワクチン接種が功を奏し、2022年夏ごろからコロナまん延に歯止めがかかり出すと、政府は景気浮揚策に本腰を入れ、その最右翼として旅行需要喚起戦略を推進した。同年10月には「県民割」など旅行支援策が始まり、並行してインバウンドに対する水際対策も事実上解禁した。

 京成にとっては待ちに待った成田の復活でドル箱SKLの再起に望みを託しているはずだ。しかも絶妙のタイミングでSKLの機能強化を訴える動きも出始めている。

 政府が唱える「インバウンド2030年に6000万人」の一大戦略に基づき、国交省が設置した首都圏空港機能強化技術検討小委員会は2016年に検討結果を踏まえた上で、6000万人の受け皿として、首都圏の羽田、成田両国際空港のさらなる機能強化を提言した。

 また、具体的に両空港で年間100万回の発着枠(スロット数)、うち成田が半分の「50万回」の確保を目指すとしたが、実はこのときのプランが事実上成田拡張構想のベースとなっている。

 そしてこれを逆算する形で、2029年度までに滑走路増設や既存滑走路の延伸など空港機能を強化して、成田の年間発着枠を今の30万回から50万回に大幅に増やす、というシナリオが粛々と進められているのである。

 翻って年間50万回となれば、京成やJR東日本が擁する成田空港アクセス線の輸送能力も単純計算で現行の1.6倍増量が求められる。こうした需要予測をたたき台に、運輸総合研究所(JTTRI)は成田空港鉄道アクセス改善に向けた有識者検討会を発足し、2022年7月に提言をまとめている。

 これによると京成の場合、SKLの混雑率が100%を超え「満員で乗れない」が常態化すると予測し、現在の8両編成を9両編成にしたり、1時間当たりの運行本数を今の3本以上にするため、成田付近の単線区間(成田湯川駅~成田空港駅)を複線化したりするなどの対策が必要と指摘する。

 一方、都心側の受け皿拡大にも言及し、現行ではダイヤが過密状態であることや、ホーム増設も物理的に至難の業であることを考慮して、比較的ダイヤに余裕のある押上線を活用すべきと強調している点が注目だろう。

 同線は京成本線青砥駅(葛飾区)から分岐し、荒川を渡って墨田区に入り、東京スカイツリー直下の押上駅、さらに都営浅草線へと相互乗り入れする路線である。

都心~成田空港を20分台か

さらに提言は、世界の主要空港と中心都市とのアクセス時間と比べ都心~成田は見劣りするため、

「20分台が望ましい」

と畳み掛ける。しかも達成には、SKL時速200km化も考慮すべきと訴えている。

 現在、都心~成田の最短時間はSKLの36分だが、提言では、例えばロンドン~ヒースロー空港(イギリス)は15分、ニューヨーク~JFK空港(アメリカ)は30分、香港国際空港(ランタオ島)~香港は24分、浦東空港~上海は8分といずれも短いと指摘する。

 激しさが増す国際空港・都市間競争で勝ち残るには「1に快適、2に便利」は当然で、都心~成田空港20分台はもはや絶対条件と言っても過言ではないだろう。

 幸いにもSKLは設計上時速160kmが出せ、路線の曲線改良や退避設備の増設、ホームドア増設、車両性能の向上などで対応可能と提言は見ている。とにかく、京成が新幹線と同じ標準軌だったのは幸運だ。

 さらに、都心主要駅までの所要時間20分台も強調する。翻ってSKLの事実上の都心ターミナルは日暮里駅だが、都心の主要駅とは言い難く、やはり理想は東京駅となる。

 となれば、仮にSKLが時速200kmを発揮して日暮里駅~羽田空港を29分で結んだとしても、JR線に乗り換え東京駅に向かうには最低でも10分はかかる。乗り換え時間も入れれば20分は見るべきで、合計すると東京駅~成田は50分台に届いてしまい、もはや、現行のNEX(東京駅~空港第2ビル駅)の51分と大差がない。乗り換えの煩雑さを考えればむしろ不便で、時速200kmにしたメリットがあまりない。そこで提言では、前述のように押上線の活用をさらりと提唱しているようである。

押上線から大深度地下で「新東京駅」へ

実は、交通政策審議会(国交大臣の諮問機関)が2016年4月に答申した「東京圏における今後の都市鉄道のあり方」には、「具体的なプロジェクトについての検討結果」の筆頭として、押上駅から東京駅への延伸計画を俎上(そじょう)に載せている。

 具体的には押上駅から地下に潜り、JR東京駅丸の内側(皇居側)付近の大深度地下に新東京駅(仮称)を新設し、さらに地下を掘り進んで南下し京浜急行泉岳寺駅(港区)で京急線とアクセスする、という壮大な構想である。これなら、SKL都心~成田空港29分も夢ではない。

 泉岳寺駅で羽田空港に乗り入れる京急線と直結すれば、成田~東京駅~羽田が1本の横串に刺さりアクセスの利便性も飛躍的にアップする。しかも、泉岳寺駅の至近には中央リニア新幹線の駅も設置される模様で、こちらとのアクセスも便利となる。まさに一石二鳥だ。

 同答申は「首都圏鉄道新設の憲法」とも呼ばれるもので、実現の可能性が期待できるが、やはり問題は莫大(ばくだい)な建設費だろう、特に都心部での大深度地下工事となれば数千億円、もしかしたら1兆円を突破するかもしれない。

 もちろん国や自治体の全面支援のもとで進められるはずだが、コロナ対策で多額の予算を使い、貯金をほぼ使い切った東京都は、現実問題として「ない袖は振れない」状態にあり、計画に難色を示すかもしれない。

 京成にとっては起死回生の切り札ともなり得る新東京駅発SKLだが、まだまだ問題・課題も数多く、提言が出されたからと言ってもぬか喜びは禁物だろう。
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