連日止まらぬ、派遣切りに内定取り消し問題。
そういえば先日、外国のプレスが、トヨタは依然として多額の最終黒字見通しが出ているというのに、どうして大量に労働者を雇い止めするのか?といった質問をぶつけていたらしい。加えて膨大な剰余金があるにもかかわらず、生産台数が急激に落ちたとはいえ、真っ先に人を切るという行動に打って出ることに対して、外国ならば即座にデモや、場合によっては暴動が起こるのに日本ではそうしたことが起きないのか?黙って受け入れてしまうのか?という声まであったとか。
昨日、契約期間中途で雇い止め通告された直後に組合を結成した青年たちが、派遣先であるキャノン大分工場へと出向き、大量の派遣切りを行うにもかかわらず、来年早々にも新規派遣雇用の募集を行うという、明らかに舐めきった態度に出ていることに対し、新規派遣採用を行う場合には、今回派遣切りされた労働者から優先的に採用するよう要請したところ、同工場の関係者は、
「その話はウチでは関係ないから。派遣会社に行ってくれ。」
と完全に無視した対応を取ったらしい。
確かに2009年度の業績はどうなるか分からない。しかし少なくとも2008年度については、先日、構造改革という名の下、海外の工場を含めて16000人の人員削減を発表したソニーとて、まだまだかなりの最終利益が出る見通し。普通ならば、利益が出ている以上、利益が出ている間に経営をどう立て直すかということを考えるのが先決であって、人というのは、それこそ最後の最後で手をつけるものであるはず。真っ先に人切りを行ったことで、結局とどのつまり、経営が立ち行かなくなったビッグスリーの例を見ても明らかなこと。
もっとも、厚生労働省も漸く、派遣切りや内定取り消しについての規制等の通達を行うこととなったが、それでもまだまだ派遣切りを行う企業は後を絶たないだろう。昨日も、旭化成がやはり、派遣切りを行うと発表した。
大企業の規模拡大路線を容認し、常に競争状態に晒されることにより、独占は起こりえないとした、フリードマン型の新自由主義思想はもはや終焉を迎えつつあるというのに、まだその考えにクビを突っ込んでいる企業があるというわけで、それがこともあろうに、人は最後の最後で手をつけてきたはずの日本の大企業が、率先してそれを行おうとしているわけか。
とはいっても、本当の意味において世界戦略というものを考えている日本の大企業は少ない。要は日本では通用しても、世界的には通用しない「国際競争力」思想を持った企業が大半。税負担がまだまだ重いということであるならば、本社機能をアメリカなりに置けばいいはずだが、そうすると本当の意味で国際競争力に晒されてしまうから、ただ日本国内において、「欧米並みに実効税率を下げろ!」と言っているだけのこと。
欧州の場合、確かに実効税率は日本よりも低いかもしれないが、社会保障負担率は日本よりもはるかに高いし、加えて炭素税なども徴収されるため、これではあまりにも負担がかかりすぎるという観点に立って、法人実効税率を低く抑えているにすぎない。しかし、日本の政府も財界も、こうした都合の悪い背景は絶対に触れようともしない。
ま、仕事がないんだったら、派遣切りはやむをえないのかもしれない。とはいっても、多額の黒字見通しと、膨大な剰余金がある企業が多いことを考えると問題は大有りだが。
となると、何度となく言っているけど、今だからこそ、逆に法人実効税率を上げるべきじゃないかな。というか、共産党の論理でいえば、10年前の水準に「戻せ」ということになるが。
日本の大企業については、社会保障負担率は年々減っているし、加えて環境税などの徴収もいまだ行われていないことに加え、国の財政が逼迫した状態が続いているにもかかわらず、いまだ超優遇税制が続いている。にもかかわらず、景気が悪くなったからといってとたんに大量人切りでは、これでは社会の害悪と言われても仕方ないぞ。
昨日、社会保障費に関する将来の税制法制について、消費税を今以上に引き上げるとした与党の考えがまとめられたが、税率表示については明らかにされなかった。しかしながら思うに、今の状態で消費税を二桁なんてことにしたら、ますますモノは売れなくなる。加えて、金融商品の拡大も、サブプライムローン問題のこともあり、なかなか思うようには進まないだろうし、また一時期、収益の柱とされた投資信託は今全く売れない。したがって今、収益の柱がないと、メガバンクも弱り果てているとか。だったら今こそ積極的に中小企業に融資すればいいのに。
そう考えると、一般消費者、つまり国民にだけ負担を強いるやり方は明らかに得策とはいえない。仮に消費税を引きあげるというのであれば、最低限のインフラ整備を整えることが先決。アメリカも欧州も、今回の一件についてはほとほと懲りた様相をみせているらしく、先日オバマ次期大統領が、「ニューニューディール」ともいえる大掛かりな公共投資策を公表したばかり。
日本の場合は逆に、無駄な公共投資がいまだ続いている以上、それを食い止めることが先決だし、医療や福祉といった分野が壊滅状態だから、まずはそれをしっかりと整備することが大事だろう。
その次に、消費拡大、つまり内需拡大策を図り、国民経済が上向いた頃になって、消費税の引き上げや、法人実効税率の引き下げ等の議論に移していけばいい。
ということは、少なくとも今後5年ほどは、消費税率の暫定的引き下げ、法人実効税率の引き上げ、社会保障費2200億円の削減路線の撤回を行った上で、民主党が血道を上げているはずの、公務員改革(霞ヶ関解体)を徹底して行っていけばいい。
いまや、国際競争力なんてものよりも、国内の経済安定を図ることのほうが先決。むろん、理不尽な派遣切りなんてやろうものならば、日本から出て行け!とシュプレヒコールを上げろ。ま、そういわれたところで、出て行く企業は恐らくほとんどないだろう。だとしたら今こそ、法人実効税率を引き上げるチャンス。
それを断行すれば、麻生総理の支持率もグーンと上がるはずなんだけどねぇ?