yoosanよしなしごとを綴る

つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

「超高速 参勤交代」三日目~五日目斜め読み

2023年01月15日 | 斜読
三日目  湯長谷藩一行7人は磐城街道から水戸街道を抜け、土浦宿近くの廃寺に着く。亥の刻(夜の10時ごろ)、駈け通しだったので一行は眠りこけていた。
 約束の金10両を受け取った段蔵はそっと起き、霞ヶ浦に面した木原村へとひた走る。5年前に別れた30になる妻・松と6歳の娘・美代が暮らす粗末な家に忍び込む。


 かつて段蔵は酒に溺れ、美代に暴力を振るったことで美代は左目の視力を失っていた。松は美代と実家に帰ったが不幸が重なり、一家は離散して悲惨な暮らしだった。段蔵は松に土下座して罪をわび、10両を渡して出て行こうとする。松に起こされた美代が赤い折り鶴をお守りといって段蔵に渡し、仲良しはいるの?、一人はさびしいよ、私は仲良しがいるよ、と言う。
 家を出た段蔵は、自分の愚かさを自嘲する。突然、湯長谷藩一行の「我らは仲間だ」の声が脳裏によみがえる。懐の小刀に触れ、微笑む政醇の顔を思い出す。段蔵は猛然と駆け出す。青木・高坂の襲撃に間に合うか?・・土橋流筆裁きにハラハラさせられる・・。


 湯長谷藩一行6人は廃寺で眠りこけていた。そこを20人ほどの野盗が襲いかかる。湯長谷藩一行は竹光なので戦えない。逃げ出したところ、公儀隠密の青木・高坂が待ち構えていた。
 挟み撃ち、多勢に無勢、相手の知り尽くした土地、これまでと覚悟したところに、段蔵が現れる。大きな黒布で野盗の放った弓を防ぐ。火炎が袖から5・6mも飛び出し、くさびのように飛び回る紅雀と呼ばれる術で野盗を攪乱、野盗の頭領を棒手裏剣で倒す。


 三日目は、段蔵の取り返しのつかない過去と、湯長谷藩一行のぬくもりに目覚めた段蔵が主軸である。
 馬を走らせ牛久宿・旅籠鶴屋に着いた政醇は飯盛り女お咲が出会う。政醇・お咲の話は四日目に展開する。


四日目  冒頭は湯長谷藩江戸屋敷で、琴姫が沙耶の着物や化粧道具を処分させ、320両になった話、この320両が五日目に役に立つ。
 舞台は牛久宿の政醇に変わる。湯長谷藩一行が約束を過ぎたのに着かない。いらいらする政醇を、お咲が閉所恐怖症を治すといって押入れに押し込む。お咲の優しさを感じながらも、お咲の誘惑を自制する。
 話を飛ばし、夕刻、お咲が政醇に精魂込めた料理を用意する。お咲の生い立ちを聞き、ついに政醇はお咲と床を一緒にする。
 話が戻る。段蔵は湯長谷藩の6人を引き連れ走るが道を誤り、牛久の2つ先の藤代に着いてしまった。湯長谷藩の6人は取手宿に向かい、段蔵だけ政醇のいる牛久に引き返す途中、激しい頭痛に襲われ、休もうとして意識を失う。
 
五日目  政醇はお咲に心を引かれるが、今日の戌の刻(午後8時ごろ)までに江戸城に入らなければならない。後ろ髪を引かれながら取手宿に向かうが、段蔵とすれ違ってしまう。


 取手宿の手前の原っぱで政醇と段蔵の到着を待ちわびていた湯長谷藩6人には、頼んでおいた中間が遅れてきた分の手間賃を払え、金が無いなら行列道具をいただく、といって去ってしまう難題が起きていた。
 殿・政醇が到着しない、行列もできない、切腹もできないとうろたえているところに、磐城平藩の行列がやって来た。頭を下げていた家老・相馬に藩主・内藤政樹が声をかける。老中・信祝の命による5日での参勤を聞いた政樹は、政醇にはいつも世話になっている、200人を超える磐城平藩の行列を自由に使えと話す。
 磐城平藩は上がり藤なので、相馬のとっさの機転で、上がり藤を逆さにして下がり藤とし、取手宿に入る。


 そこへ、仙台藩62万石伊達吉村の行列がやって来た。・・土橋氏は次々と難題を用意する・・。小藩は大藩に道を譲らねばならないが、2000人を超す仙台藩を待っていると刻限に間に合わない。またも相馬の機転で、内藤政樹に行列を頼み、湯長谷藩6人は 褌姿の飛脚に化け仙台藩の行列を走り抜ける。
 仙台藩の行列が通り過ぎるまで止まっていた湯長谷藩を装う磐城平藩・内藤政樹に、伊達吉村は駕籠を止め、政醇は若いころ当藩で武者修行した、秋保の湯にも案内させたなどと話しかける。政醇になりすました政樹は、伊達殿と同じ陸奥の生まれ、幕府は飢饉ののちも陸奥に冷たい、と応じる。
 取手宿を過ぎた伊達吉村は、忍者集団黒脛巾組(くろはばきぐみ)頭領・横山隼人に江戸に行けといくつか指示する。横山は行列に先行して様子を探り、磐城平藩が湯長谷藩を装うからくりを吉村に報告していた。にもかかわらず伊達吉村が湯長谷藩・内藤政醇になりすました磐城平藩・内藤政樹の芝居につきあったのは、老中・松平信祝の仙台藩・一関の年貢取り立てを厳しくとの命に怒り心頭だったからである。


 土橋流筆裁きのハラハラはまだ続く。政醇の思い出に浸っていたお咲を公儀隠密・青木・高坂が捕らえ、政醇の行き先を聞き出そうと手痛く拷問する。お咲の悲鳴を聞きつけた段蔵が駆けつけ、大量に血を吐き、気を失いかけているお咲を医者に運ぶ。
 昼ごろ、取手宿を歩いていた政醇に、お咲から行き先を聞き出した青木と高坂が襲いかかる。政醇は神夢想流の使い手だが二人に一人で苦戦し、苦無を背中に受け危ういところに段蔵が現れる。段蔵は政醇を抱きかかえて沼に飛び込み、火遁の術で逃げ切る。
 青木と高坂は男色で、取手宿近くの納屋で絡み合っていたところに、尾行していた政醇と段蔵が現れる。青木・高坂はお咲を拷問したことを自慢げに話す。怒った政醇は高坂小太郎の腕を切り落とし、首謀者が松平信祝と白状させる。


 雨の中、政醇と段蔵は全力で走り、利根川近くまで来る。政醇は、心から寛げると感じたお咲の生死が気になり、牛久に戻ると言い出す。段蔵は必至に説得し、自分の暗い過去を打ち明け、政醇を思いとどまらせる。政醇いわく「人は弱い者よな」、段蔵「弱くなければ、人の世を生きるとは随分とつまらぬもの」と答える。
 利根川は氾濫し、船も止まっている。段蔵一人なら泳ぎ切れるので政醇は大胆な計画を段蔵に託し、段蔵は川に飛び込む。
 湯長谷藩江戸屋敷に相馬ら6人が倒れ込むように到着する。そこへ裸馬が突っ込み、段蔵が転げ落ちた。段蔵は、下がり藤の懐刀を琴姫に見せ、政醇の秘策である琴姫が政醇になりすまして登城、遅れて利根川を渡った政醇が江戸城で琴姫と入れ替わる作戦を伝える。兄思いの琴姫は不服ながら髷を結い、沙耶の化粧道具などの320両で武器を用意させる。


 琴姫と相馬が出立して四半刻(30分)後、政醇が江戸屋敷に着く。平川御門を目指して馬で走る政醇を、50人の江戸城御庭番が取り囲む。政醇の名刀・和泉守国定が5人を切り倒す。
 政醇とともに屋根を飛ぶように走ってきた段蔵は御庭番に火遁の術を使うが、よろめき膝をつく。御庭番衆が段蔵を襲おうとしたとき、湯長谷藩の武士が武器を手に現れ、御庭番を次々と倒す。仲間思いの強い湯長谷藩の武士に声をかけられた段蔵は、戦闘呼吸法で立ち直り、心の中で「お美代、これがおまえの父ぞ」と叫びながら、御庭番を倒していく。新たに現れた鉄砲隊を、鈴木吉之丞が剛弓で倒す。
政醇、段蔵が一橋門を抜け平川御門に着くと、老中・松平信祝の命を受けた警護隊である鉄砲百人組が待ち構えていた。政醇は「真の刃は小さくとも必ず刺さる、信じてついてこい」と、一直線に切り込んでいく。段蔵も四方八方に手裏剣、撒菱を投げるが、2人と100人では限りがある。
 そのとき伊達藩黒脛巾組・横山隼人が水遁の術の一つ、霧隠の術を用いて現れた。霧が晴れると、横山配下の40人の鉄砲隊がいっせいに銃撃し、警護隊は大混乱になる。
 政醇、段蔵は白鳥堀に面した石垣を登り、石垣のあいだに段蔵が開けておいた横穴に入る。閉所恐怖症の政醇は、段蔵の「お咲」の言葉に奮い立ち、横穴を抜け、大奥の庭にたどり着く。
 大奥から下御鈴廊下を通り、つきあたりの座敷の天井裏に上がり、黒書院の天井まで進む。


 政醇を横穴に入らせたとき、段蔵は夜叉丸の矢を受ける。段蔵は夜叉丸の執拗な攻撃を受け傷を負いながら戸隠流秘奥義・鏡返しで夜叉丸を倒すが、警護隊が追いつく。段蔵は「さらば」と爆死する。石垣には赤い折り鶴と懐刀と白い梅が残されていた。


 五日目は大詰めで話が前後する。老中部屋の松平信祝は夜叉丸からの報告で、登城した政醇は影武者ではないかと疑う。
 政醇(琴姫)は、8代将軍吉宗との謁見の場である総赤松造190畳の黒書院の一番後ろに控えた。まだ吉宗は現れていない。そこに信祝が寄ってきて鼠をなぶる猫のように政醇(琴姫)を愚弄し、うなじの白さに気づく。
 政醇は黒書院の天井板をずらして信祝に嘲弄される琴姫を目にし、段蔵から預かった煙玉を投げつけるが、煙が出ない。そこに将軍吉宗が現れ、上座に座り、政醇(琴姫)に声をかける。
 そのとき、謁見のさなかにもかかわらず信祝が湯長谷藩の参勤は物乞いのような行列だった、武士の規律を守らせる立場の老中首座・松平輝偵にも責任がある、と口をはさむ。
 輝偵は、水戸・徳川宗翰からの書状で、高萩宿での勇ましい行列、愉快な猿舞を話す。なおも反論する信祝に、吉宗が、仙台藩・伊達から届いた2000名を越える整然とした行列の話をし、信祝を大喝した。
 信祝が政醇は替え玉で女と言いかけたとき、琴姫は緊張のあまり失神しそのはずみで煙玉がはじく。黒書院に煙が満ち、吉宗は避難する。政醇は飛び降り、信祝を渾身の力で殴り、女中のかつらをかぶせる。気づいた琴姫は女中の着物を着て竹の廊下へ逃れ、政醇は琴姫が脱いだ裃を着る。
 煙が消え、吉宗以下全員が黒書院に戻る。政醇は吉宗に挨拶し、女中のカツラをかぶった信祝を我欲が尽きないと名指しし、白水村の山から黄鉄鉱が出たが金に似ていて慌て者が金と勘違いしたらしいと話す。
 吉宗が幕府の要職にある者が私利私欲に走るなど許さぬと話し、黒書院は幕となる。
 
 五日目は物語の終演、一日目から四日目までの展開が凝縮され、読み手は一気に読み通す。これが土橋流なのであろう。


六日目  湯長谷藩7人が傷を負いながらも列を組み、帰路につく。そこに吉宗が現れ、信祝の不正の証をつかむため、湯長谷藩を見込んで無理な参勤をしてもらったと告白する。
 湯長谷藩を見込んだのは、政醇の献上した大根の漬け物と笑う。
 六日目は後日譚である。
 
終章 吉宗の享保の改革を紹介したあと、政醇が早馬で牛久に向かい、瀕死の重傷から峠を越えたお咲に会い喜び合ったところで物語の幕を下ろす。
 映画を思い出しながら何度も読み返して物語の展開をまとめているうちに長いあらすじになってしまった。次に映画が放映されることがあれば、この斜め読みを読みながら映画を見ると、映画をもっと楽しめると思う。 
(2023.1)
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