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つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

バイキング・ビッケシリーズは小学生向けの児童書、大人顔負けのビッケの智恵で難関を切り抜ける

2018年06月16日 | 斜読

book466 小さなバイキング ビッケ ルーネル・ヨンソン 評論社 2011
 北欧を訪ねるので、予習の本を探した。ヨーロッパでベストセラーになり推理協会の賞も取った本を数冊見つけ、それぞれ借りて数ページ読んだが、どれも事件が陰惨すぎた。社会の一側面は分かるが観光旅行の予習には向かない。

 かつて、スカンディナヴィア、バルト海沿岸を本拠とするヴァイキングが、ヨーロッパ~地中海沿岸で略奪、侵略を働いた話は知っている。視点を変え、ヴァイキングをキーワードに本を検索し直したら、子ども向けで大人気の「バイキング ビッケシリーズ」がヒットした。
 作者はスウェーデン人である。スウェーデンやノルウェーでは子どものころからヴァイキングに馴染んでいるのであろう。「バイキング ビッケ」シリーズは、図書館の児童書コーナーに配置されている。小学生低学年向きだったので、童心になって読んだ。

 子ども向けの本は筋が単純化されている。登場人物の役割も、知恵がある・おっちょこちょい・力持ち・勇気がある・善人悪人など、はっきりしている。
 事件が起き、困った!どうする?と子どもに思わせるが、主役となる少年少女が仲間と力を合わせながら、解決していく、あるいは目的を達していき、大団円で終わる展開がいいようだ。
 子どものころは、はらはらしながら主役に感情移入し、自分も参加した気分で見事に難事業を成し遂げ、主役といっしょに次なる冒険をめざす、といった本を読むと、子ども心に夢が膨らみ、積極的に行動するようになるのではないだろうか。少なくとも、小さなキーボードと苦闘するゲームよりは精神的に健康に育つと思う。

 要所要所に、エーヴェット・カールソンによる挿絵が挿入されている。挿絵はユーモアたっぷりの描写で、子ども心を楽しませてくれる。

1.ビッケ、オオカミに追いかけられる 
 まだ少年のビッケがオオカミに追いかけられている場面から、まだオオカミと戦えるほどの力は無いが、オオカミの習性をよく知っていて、知恵を働かせオオカミを気絶させるビッケの力量をさらりと紹介している。
 p12には、ハチミツを塗ったパン、チーズをのせたパンなど、ビッケの食事を通してヴァイキングの食事に触れている。
 ビッケの父ハルバルは勇猛で、フラーケ地方の族長を務めているが、ビッケの母イルバに頭が上がらないこともさらりと描かれている。子ども向けの本ではよくある設定である。p17にアースガルドの神々、p19に漁、狩り、p23塩商人が登場する。ヴァイキングは信心深く、普段は漁業、狩猟、交易を生業としていた
ことが理解できる。
 

2.ビッケとハルバル、石はこび競争をする
  親子の他愛ない力比べの話で、父ハルバルは怪力で石運びをするが、ビッケは投石機を活用して石を投げ飛ばし、わずかな差でビッケが勝つ。ハルバルは男らしく負けを認め、知恵者のビッケを夏のヴァイキング遠征に連れて行くことにする。


3.バイキング、罠にはまる
  ビッケたちのヴァイキング船は32組のオールがつき、中央にマストが立っていて、舳先から艫に竜骨が走り、船底は厚板で、船足は遅いが長い航海に適したつくりだそうだ。さっそく財宝のありそうな建物を見つける。
 しかし、ここの領主は罠を仕掛けていて、全員がとらえられ、閉じ込められてしまう。ビッケは途中でノコギリエイを見つけていて、ノコギリエイのくちばしを使って閉じ込められた建物から逃げ出す。
 追いかけてきた領主は、金貨10枚、桶100、ネックレス50、杯25、お椀20とノコギリエイの交換を申し出る。子どもは、ノコギリエイのくちばしで木を切ったり、金銀財宝と交換する場面で大いに喝采するのではないだろうか。
 p63にスウェーデン人も襲来した話が出るので、スウェーデンのヴァイキングも常識のようだ。

4.バイキング、竜頭船に追われる
  オランダ・フリースランド人のヴァイキングが3隻の竜頭船に乗って現れる。
 p115に、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーのヴァイキングは船が出会ったときは手を振り、病気の流行を知らせあうなど粗野だが礼儀もわきまえているが、フリースランド人は他人の物は自分の物と略奪する野蛮人、と記している。民族性の違いだろうか。
 その竜頭船は48組のオールを備えていて、すぐそこまで迫ってきた。ハルバルたちはヴァイキングらしく戦う覚悟だったが、ビッケのアイデアでハルバルが火の付いた矢を竜頭船の帆に放ち、難関を切り抜ける。子どもたちはここでも拍手喝采するのではないだろうか。

以下、5.フランク人の城 、6.デンマークの海峡税 と展開し、ビッケの智恵で切り抜け、7.終わりよければ、すべてよしとなる。
 小学生の子どもにおすすめである。(2018.6)

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