yoosanよしなしごとを綴る

つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

2004年埼玉設計監理協会主催・第4回卒業設計コンクールはいずれも都市をテーマにした意欲的な作品が上位

2016年08月24日 | studywork

2004 第4回・埼玉卒業設計コンクール

 埼玉建築設計監理協会主催の埼玉卒業設計コンクールは、2001年から始まり、2004年が第4回目となった。2004年は18点の応募があり、参加大学の先生方や協賛、後援の機関の代表による特別審査委員14名と設計監理協会からの一般審査委員11名による公開審査の結果、「creater's index 都市複合施設による新宮下公園計画」が最優秀賞に選ばれた。優秀賞は、「miller-mur 新宿のメディアテーク」、「アートネットノウズマクトシヲオウダンスル」、審査員特別賞は、「混交する町 住工混在地区におけるモデル工場の提案」、「Forest 森と人の接点としての木材市場」、「新しい京都的集合住宅の提案」の3点が選ばれた。

  入賞の3点はいずれも都市が主題である。若者にとって、依然、都市が魅力的のようだ。
 都市は若者のエネルギーを吸収して活気を生みだしているのであり、若者に魅力的な都市が再生産されているのであるから、当然といえば当然である。見方を変えれば、若者が都市の魔術にはまっているとも言える。
 「creater's index 都市複合施設による新宮下公園計画」は駐車場を下層階においた公園、「miller-mur 新宿のメディアテーク」は新宿駅の線路上空の空隙、「アートネットノウズマクトシヲオウダンスル」は芸術系の大学が多い小田急沿線に着目し、(若者にとって)もっと魅力的な都市を提案している。

 「creater's index 都市複合施設による新宮下公園計画」がもっとも現実的であり、提案内容も共感を呼んだようだし、空間構成と図面表現がバランスし、最優秀賞を獲得した。ただし、都市への期待がカプセルホテルやカラオケボックスのレベルにとどまってしまったのは残念である。表現もCADに依存しすぎている。手書きを併用し、設計を楽しんでほしかった。

 「miller-mur 新宿のメディアテーク」の線路上空への着眼はとてもいい。線路によって町が分断されていることへの挑戦である。しかも実際の電車を考えると、垂直壁のシステムは俄然、現実性を帯びてくる。しかし、巨大な商業空間にはさまれ、JRも虎視眈々とビジネスを狙っていて、果たしてメディアテークが成り立つかは不安である。

 「アートネットノウズマクトシヲオウダンスル」のアーティストの住む町は、力みが無く、親しみやすさを感じる。屋上階の開放もいい。しかし、都市の将来像といった展望が見えてこないのが惜しまれる。

  「混交する町 住工混在地区におけるモデル工場の提案」のモデル工場は、かつて京浜工業地帯を支えた町工場の「たくみ」に着目していて、好感が持てるが、町の生活が見えてこないのが惜しい。
 「Forest 森と人の接点としての木材市場」の木材市場は、森・木材・人・生活が視野に入っていて、しかも図面表現は抜群であり、やはり好感が持てたが、背景の自然との調和や木材を強調したデザインの工夫がほしい。
 「新しい京都的集合住宅の提案」の京都的集合住宅は、図面効果もいいし、設計も手堅いが、なぜ、いま、京都で、集合住宅なのかを、もっと訴えてほしかった。市町村合併は現代的課題であるが、提案が展示空間にとどまってしまったのは残念。
 「ダンチのユクエ」も今日的課題だが、住民による計画づくりをもっと強調してほしい。NPO、駅、大学など、現代的な気になるテーマもあったが、設計意図が分かりにくかったり、表現がもう一歩であったり、高得点を得るに至らなかった。

 総じて、若者らしい夢がしぼんでいるように思う。現実の課題を敏感に感じ、若者らしい新鮮な目で課題を直視しているのだが、変革への挑戦が見えてこない。その責任は、大人の側、教育者としての我々の課題とすべきかも知れない。(2004.4記)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする