ブナの原生林で世界遺産となった白神山地は、緑が目に染みる雄大な森だった。
いくつもの湖が点在し、ブナの大木が自らの姿を湖面に映していた。


青池の水はライトブルーで、底には倒木が白骨のように横たわっている。
死の池か?・・・と思いきや、15cmばかりのなんという名の魚か、悠々と泳いでいた。

白神山地の山里は、田植えが終わったばかりだった。
霧が山すそを這うようにゆっくりと動き、やがて天空へ昇って行った。
民家の柱につながれていた秋田犬が、こちらを向いて「ワン」と吠えた。
私も、負けずに「ワン」と答えた。
すると、その犬「変わった人間がいるもんだな」と思ったのか、首をかしげて不思議そうに見返してきた。

