手元にある『THE LINES OF MY HAND』は1989年版。
この写真集のオリジナル版は元村和彦が立ち上げた巴元舎の最初の刊行物である。
ユージン・スミスと交流のあった元村は、
スミスの紹介でロバート・フランクと出会う。
当時写真の世界から離れ、個人映画の制作に没頭していたロバート・フランクは
元村の願いでこの写真集を刊行する。
ここから、ロバート・フランクは写真の世界に戻ることになる。
杉浦康平のデザインによるこの写真集は、
今ではおそろしく高額で取り引きされている。
ワタシの手元にあるのは
その後アメリカの出版社から刊行されたものだ。
内容的にはオリジナル版と変わらないらしい。
〈最初期作品を中心にそれまでの人生を振り返り、その軌跡を辿るように編年的に構成。「The Americans」制作時期の作品も多く収録され、「The Americans」には収録されなかった写真やコンタクトシートも収録。写真のセレクトや編集においても、随所に映画制作を経て培われた感性やアイデアが感じられる〉
というのが評価の基準だろうか。
手元にはないロバート・フランクの最初の写真集『The Americans』に
収録されている作品を見ることができるのはうれしい。
50年代に撮られた写真を見て驚くのは
粒子の荒れた画面である。
70年前後のこの国のいわゆる〈コンポラ写真〉が、
どれだけロバート・フランクの影響を受けていたかがよくわかる。
この写真集のカバーそでに値札を見つけた。
買ったのはどうやらタトル商会神田店のようだ。
たしか神保町か。値段は$39.95。
30年前に買ったのなら、
対ドルの円は100〜130だから4〜5000円か。
よくそんな大金を持っていたものだ。
現在の古書値を調べてみると、某書店が14300円。
Amazonでは39194円である。
これは新刊だろうが、ずいぶん高い。
〈続く〉