アンリ・ミショーの詩集『閂に向き合って』(青土社/1980年)を
東中野のブックオフで100円で買ったのは3年ほど前か。
元々は豊島区立図書館の除籍処理済のリサイクル本である。
ワタシはこの手の本を新刊で買ったりしないし、古書店で買うこともない。
たまたま100円で売られていたから買ったようなものである。
時々読んでいる。
昨晩読んだ一節に
〈あの偉大な「仏陀」でさえ、彼の管理の外にあった食事を好意で受け入れたために、死に見舞われたのである〉がある。
仏陀の死因は、鍛冶屋チュンダが供養した食事だったとされる。
しかし、ブッダは一切チュンダを責めることはしない。
それどころか
「涅槃に入る前の最後の施食は、ほかのどんな供養よりも
はるかに大きな果報と功徳がある」と説き、
チュンダの後悔の念を和らげようという深い慈悲を示す。
こうして腹痛と下痢に悩みながら仏陀は死を迎えた。
狩野元俊による〈涅槃図〉
〈アンリ・ミショー(Henri Michaux 1899年5月24日-1984年10月19日)は、ベルギー生まれのフランスの詩人・画家。特異なイメージや内面的風景をそなえた詩によって、またアンフォルメルの先駆けとなった絵によって、20世紀の文学と美術において独自の地位を占めた。長らくブランショやピンチョンと同様の「顔のない作家」だったが、晩年にはブラッサイらによるポートレイトも公開されている〉
ブラッサイ撮影によるアンリ・ミショー
ミショーはシュルレアリズムにもっとも近い場所にいながら、その運動に加わることはなかった。
ミショーの詩にとくに惹かれることはないが、絵画はとても面白い。
詩集『閂に向き合って』も熱心に読むわけではないが、
拾い読みで時々面白い箇所に出くわすと、その背景を調べたりはするのである。
残された時間もそう多くはないのにご苦労なことではある。
Mouvements 1950
Untitled 1977