散歩と俳句。ときどき料理と映画。

『Das kleine Buch der Vögel und Nester(鳥と鳥の巣)』

写真の本は1930年にドイツのライプツィヒで発行された、インゼル文庫の中の一冊『Das kleine Buch der Vögel und Nester(以下:鳥と鳥の巣)』である。フリッツ・クリーデルによる美しい細密な小鳥とその巣の絵が収められている。

天地185ミリ、左右121ミリ。表紙は厚紙の上製本。本文52ページ。鳥とその巣の細密な絵が32点収録され、巻末にそれぞれの鳥の解説がある。90年前の本だが、傷みもなく保存状態は良好。

ライプツィヒは音楽の街(バッハ、メンデルスゾーン、シューマンが活躍)である。ドイツに留学した森鷗外が一年ほどすごした街でもある。と同時に出版、印刷の街としてもよく知られている。ライプツィヒが出版、印刷の中心となったのは、それまでの中心地であったフランクフルトが、17世紀に神聖ローマ帝国の反カトリック的書物の検閲を受けるようになり、統制を嫌った出版業社が検閲のゆるいザクセン選帝侯領のライプツィヒへと続々と移転したからである。
インゼル文庫の歴史は古い。創刊は1912年であるから、ふたつの世界大戦をくぐり抜けている。第二次世界大戦後、ドイツが東西に分断された際には、西ドイツのヴィースバーデンに支店を開き西側での活動も始めた。1990年の東西ドイツ統一の翌年にはこのふたつのインゼル文庫は合併し、2010年に再創設された。
これまでにこの文庫は約1800のタイトルが発行されている。『鳥と鳥の巣』は百番目にあたる。すべてをを見ることは不可能だが、この本を入手した店で十数冊、目を通した。どれも表紙はテーマにそった絵を幾何学的に配置したもので、文字はフラクトゥールというひげ文字の書体で統一されている。
貝殻、鉱物、キノコ、植物、動物といった博物的な図鑑から、宗教的な絵画、文字だけの本とジャンルは多岐にわたっている。図鑑類はその細密な絵と造本で、美術品のようである。
『鳥と鳥の巣』は、1955年にすこし体裁を変えて再出版されている。

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