風録blog

風のごとく過ぎ去る日々を録したい

書評:男子の本懐

2008-08-29 18:58:01 | Weblog

城山三郎の代表作である。
昭和4年から昭和6年まで第27代内閣総理大臣であった
濱口雄幸(はまぐち おさち)とその内閣の蔵相であった井上準之助
の人生に関する物語である。
総理と蔵相という形で、協力し合って、金本位制の復活、
緊縮財政の実践を行なった。
ともに日本の平和を貫き、国民を幸せにしたいという思いから、
確信に満ちた政策を打っていく。この時代の内閣は、貴族院あり、
枢密院あり、次第に身勝手になりつつある軍部ありで、
内閣と言っても、現代より複雑な組織運営を強いられる。
勿論、最高意思決定者としての天皇がおられる時代でもある。
その中で、短期的には国民に嫌われる、しかしながら、将来は
明るいと確信する(金本位は世界のディファクトに従い輸出入を
スムーズにする、緊縮は黒字経営を目指す)施策を打っていく。
濱口は、考え抜いて耐えつつ仕事をする「静のタイプ」、
井上は思い立ったら関係者を訪ねて回って施策を固めてゆく
「動のタイプ」。相互補完的に動ける二人である。
不確定要素の多い中で、信ずることを押し通す二人、
反対者も多い中できっといつかは「やられる」と覚悟は決める
ものの、日本の平和と繁栄のためには自分が施策を打たずして
誰がやるのか、という思いで施策を打ってゆく。
結果は道半ばして、二人とも1年違いで凶弾に倒れる。

施策には正しい正しくないはなく、自分がどう考え、お客様
(上記の場合は国民)に喜んでもらえることは何かを考え、
それに最も相応しいと思われる(確信する)施策を打つべきだと
我々に教えてくれている。

濱口が好きな言葉は「遠図」(遠大な意図:ビジョンかな)であり、
海外が長い井上の口癖は「One thing once」(ひとつのことは一回:
ひとつひとつを大切に)だそうである。これも相互補完。

本の最後に
青山墓地には盟友二人の墓が、両方とも戒名なしの俗名のみを
記した墓として仲良く並んでいる、と書かれている。印象的な文末で
あった。
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書評:悩む力

2008-08-25 20:01:55 | Weblog

著者:姜尚中
集英社新書 2008年刊

たまたま読んだ。
姜尚中氏は私と同じ年である。
そういう意味では同世代であり、多少の親近感はあるものの
彼がなぜここまで深く思慮できるのかは理解できない。
この本は、文豪・夏目漱石と社会学者・マックス・ウェーバを引き合いに
出しながら、私とは、今を生きるとは、金とは、青春とは、愛とは、
老いとは、などを考え悩む本である。

私が確かにそうだと納得したのは「働く」ということ。
「働くのはなぜか」という問いに対して彼の答えは
「他者からのアテンション」のため、すなわち「ねぎらいのまなざしを
向けられること」と書いている。
それは、「社会の中で自分の存在を認められること」「社会の中で
そこにいていいという承認が得られること」であり、できれば
「相互承認」になりたい、ということである。

やはり人間はひとりでは生きられない、他者との相互承認がないと
生きられない、ということを改めて感じた。
余生は晴耕雨読で、と言う人もいるだろうが、常に社会に何を
還元するかを考え、行動しながら暮らしていきたい。
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貞観政要(じょうかんせいよう)

2008-08-15 15:52:20 | Weblog
友人に借りて、以下の本を読んだ。

書名:「貞観政要」に学ぶ上に立つ者の心得
渡部昇一 谷沢永一 著 
至知出版

唐の時代の太宗という皇帝が、諫議大夫と呼ばれた参謀たちと
会話した内容が「貞観政要」であり、日本では原田種成という方が
それを復元し、それを読み込んだ、著者お二人の対談の本である。
・太宗は24年間も皇帝の座におり、その秘訣がわかるのが「貞観政要」
・諫議大夫(かんぎたいふ)という皇帝への直言メンバーシステムを
有しており痛いことを言われても、その直言を聞き、皇帝は実行した。
ー>この態度はすばらしい。
・皇帝はずけずけ言われても、言われたことに感心し、皇帝も反省した。
・「君主は舟、民は水」・・・水は舟を浮かべることも転覆させることも
できる
ー>これはその時代の皇帝としてはすごい発言だと思う。
言い換えれば「経営は舟、社員は水」ということだろう。
・直接、民を治める地方官は重要な職責である。だから、地方官には
最大限気を遣う。->現場に気を遣い良く教われ、ということ
・草創(創業)と守文(守成)はどちらが難しいか、守文(守成)のほうが
心が緩むから難しい。
ー>起業時と経営オペレーションは両方とも難しいが、オペレーションの
気の緩みが最悪ということ、然り。
・罰せれれる者が少ない世の中を作らねば成らない。むやみに罰しては
ならない。
・人材不足を嘆くのは、「人探しの能力がない」と言うに等しい。
ー>むーーん、参ったねえ。もっと探さないと。
・登用した人を試すような行為は恥ずべき。
・部下を詰問すれば決して正直な言葉を聞き出すことはできない
・「忠義な部下」より嫌なことも言う「良い部下」を
・すぐれたリーダーは必ず専門家の声に耳を傾ける
・悪を悪と知るのはやさしいが、それを改めるのは難しい
ー>その通り。間違ったと思ったら、すぐに改めないとね。
・人材登用の物差しはその人間が本当に役立つかである
・うまく行っているときこそ、直言に耳を貸すべし

千数百年経っても新鮮な響きを持っているのは、人間が成長して
いないということか、あるいは組織運営というのはとても難しい
ということなのか。
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