ふしょうなブログ

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佐伯祐三展

2005年10月20日 18時38分37秒 | 日記のようなもの
  今週の月曜日、観にいけなかった練馬区立美術館における佐伯祐三展と併せ渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムにて開催中のギュスターヴ・モロー展を観てきました。天候に恵まれたせいか、両展とも平日にもかかわらず盛況でした。平日の静かな美術館巡りとならなかったこと、ちょっと残念です。

※先ずは佐伯祐三展の感想より投稿します。

  佐伯祐三、1898年大阪に生まれ、1928年フランスの精神病院にて夭逝するまで僅か30年余りの人生でした。多くの作品はパリの街頭風景を描いたもので、ユトリロの影響が見られるとの事です。また、Yock自身が昔、油彩に興味を持っていた頃、たまたま購入した画集を通じ佐伯祐三の作品群にふれ、本気でパリへ絵を描きに行きたいと考えた懐かしい思い出があります。そんな思い入れ溢れる作品群と今更になって出会う事ができるとは夢にも思いませんでした。

  では、Yock自身の感想を述べてみたいです。
  (1)目を描いていない、描いていても単純化されている
   1階第1展示室を入ると直ぐに佐伯祐三の自画像、裸婦像、長女の絵、婦人像など
   人物画が展示されています。1枚の精悍な自画像(東京美術学校卒業作品)を
   除き、目を描く事を避けているような印象を受けました。また有名な郵便配達夫
   の絵でも目は一筆で描かれており、とってつけたような印象を受けました。
   最近観に行っている中世西洋絵画では、今にも瞬きをしそうなほど写実的に描か
   れた眼差しに見慣れていたせいか、かなり印象的に映りました。
   目でモチーフを見るのではなく心で見る。そんな気構えの顕れと思いました。
  (2)パリの街並みを中心に描いている
   展示されている作品群がたまたまだったのか、パリ郊外、たとえばバルビゾンとか
   の風景画は一作も展示されておらず、二度に渡る滞仏時代の絵は殆ど街並み、
   レストラン、ホテルなどの建物の絵でした。停泊中の船の絵が何作か展示されて
   いたのと、滞仏中の人物画としては、先に述べた郵便配達及び靴屋の絵の2作
   のみでした。
   そして、どんよりとした空の色、晴れた空が描かれているのは下落合の風景画
   1作のみで他は灰色で塗り固められた厚い雲におおわれたパリの空、かなり印象的
   でした。
  (3)総ての道はパリへ
   第1時滞仏期と第2時滞仏期の間で描かれた下落合辺りの絵画では道路わきの
   電柱及び電線が描かれています。総ての道はパリへ通じているのでしょうか、
   そして電線は通信を、そして閉ざされがちな内面と外界とを結ぶ密かな通信手段
   なのでしょうか。
   また、道行く人々も付けたしとまでは言いませんが、マンション販売パンフ等の
   パースに描かれている人物のように単純化されているのも印象的でした。
  (4)一見すると平板に見える光と影
   絵を鑑賞する際のひとつのポイントとして光線の具合を見るのですが、佐伯祐三
   の描くパリの街並みは一見すると平板に思えます。初期のキュビズムに通じる
   モチーフをマスとして捉え、圧縮された遠近感。しかし、佐伯祐三の絵は決して
   平板ではありません。筆よりもナイフを多様した絵具の厚みにより陰影を
   出しています。そして風景をその場で切り取る事に専念したのでしょうか
   半乾き、もしくは渇かぬままにカンバスに置かれた空と建物、絵具の交じり合いも
   かえって味のある印象となっています。
  (5)カンバスの表裏
   一心不乱に描きつづけたのでしょうか?燃焼する命と引き換えに描きつづけた
   人生。時間を惜しんだのか、1枚のカンバス両面に描かれた作品が数点展示
   されていました。総ての作品でも、そうであって欲しかったのですが、
   1作品のみ(表裏で都合2作)両面を鑑賞できるようになっていました。
  (6)まとめ
   パリの街並みをこよなく愛し、短い生涯を燃焼しきった佐伯祐三の人生、
   荒々しくも繊細なタッチの冴え、印象派好きの日本人向きかなと思います。
   もし彼が30歳以降、生き長らえたとしたら、その後の世界大戦を含む
   歴史の激動とどう向かい合っていたのか興味は尽きる事ありません。

なんども会場内を行ったり来たりして、我青春の1ページであった彼との再会を胸奥深くに刻み、練馬区立美術館を後にしました。


*関連URL

練馬区立美術館
URL: http://www.city.nerima.tokyo.jp/museum/

佐伯祐三(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia))
URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E4%BC%AF%E7%A5%90%E4%B8%89

佐伯祐三展(大阪市立近代美術館)
URL:http://plaza.harmonix.ne.jp/~artnavi/05-artscene/00-mus-exhibition/161008-osakinbi-saeki/01osakinbi-saeki.html


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