キキ便り

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「ウソ」が得意な自閉症児

2010-01-12 03:42:38 | 自閉症アメリカ教育事情
息子が小学校低学年頃までは、自閉症児は「ウソ」がつけないと信じていた。

自閉症者は、「自己と他者の識別、自分や他者の心の動きを推測する能力」と説明される「心の理論」に障害があるらしい。そのような息子に、人の反応を予測しながら、自分がトラブルにならないために、ウソをついたりだますという高度なことができっこないと思いこんでいた。それから社会観念としてよく言われる障害児=純粋=天使というイメージが、私の心の隅っこにあったに違いない。

ところが大きくなるにつれ、事情がだんだん変わってくる。叱られたくないための「ウソ」が増え、しかも顔色一つ変えず、淡々と「ウソ」をつくところが「達人」レベル。

二日前にこういう事件があった。息子が落ち着きのない様子で次のことを話す。

「誰かがボクのToonetown(http://play.toontown.com/about.php)のアカウントをハッキングしたみたいなんだ。そして、ボクになりすましてメッセージを送っているみたいなんだ。だからボク、自分のアカウントのユーザーネームとパスワード、急いで変えたんだ」

それから、またハッキングのこととか、アカウントのことを何度も話しに私のところにやってくる。なんだか様子がおかしい。話の内容が少しずつ変わってくる。そのうち、本当のことを打ち上けてくれる。

「実は、ハッキングされたというのはウソで、ボクが相手を中傷するような書き込みをしたから、4日間使用禁止というEmailをもらったんだ」

「いったい、なんて書いたの?」と聞くと

「What the heck!What the heck!What the heck!」と書いたらしい。

これは、「ちきちょう」とか「どうなってるんだ」という言葉で、hellの代わりにheckをいれて表現を緩和する言葉だが、それ程ひどすぎる言い回しでもないようだ。

(ちなみに、うちのダンナがイライラしている時によく使う表現なので、これは父親の責任)

この事件でしばらくお気に入りのゲームサイトへのアクセスが禁じられたのは、本人にとっては「オンラインゲーム熱冷まし」になって不幸中の幸いだと、ダンナと話していた矢先に、次の出来事が。。。

「お母さんの携帯貸して」
「いいけど、どこかけるの?」
「お父さんのところ」
「いいよ」


その晩、ダンナが息子の電話はウソで、実はゲームのカスタマーサービスに親になりきって電話をかけたらしい、と話してくれる。

ところが、カスタマーサービスは子どものウソ電話に慣れているらしく、「すいませんが生年月日を教えてください」のところで1996年と自分の生まれた年を言ってしまったらしい。それでバレてしまい、息子のウソは成功しなかったようだ。

ウソをついてまで、オンラインゲームをしたかったらしい。「ウソはいけません」と何度も教えているが、伝わっていないのが悲しい。



コメント
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