横浜映画サークル

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映画『凶悪』残虐性は「人間が持つ普遍的な暗部」と描く。だが最新科学は先天的障害であるとする(その2)

2014-03-31 18:44:58 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その1)の続き。

1.4 サイコパスは罰から行動を是正すことができない罰を無視し、罪悪感が無く、再犯率が高い

サイコパスには、なぜこんな単純なことができないのだろう、と思うようなことができない

報酬・罰逆転課題(受動回避課題、トランプ遊び課題とも言われている)。サイコパスは、途中から報酬と罰が逆転することをうまく対応できず、この成績が顕著に悪い

報酬・罰逆転課題:10枚1組のカードを被験者に提示し、1枚ずつ引く、報酬のカードであれば被験者が欲しているもの、たとえば金銭、タバコ、菓子などを1つ得る。罰のカードであれば、報酬カードで得たものを1つ失う。最初の1組目の10枚はすべて報酬カードになっている。1組目が終わって2組目は10枚中9枚が報酬カードで1枚が罰カードを含んでいる。罰カードがどの程度含まれているかは被験者には知らされない。いつゲームを止めてもいい。3組目は8枚が報酬カードで2枚が罰カード。4組目以後も同様に報酬カードが減り、罰カードが増えていく。健常者は罰が増えてくることを把握し、途中で止め報酬を確保する。だが、サイコパスは罰が増えても止める事はせず、報酬のすべてを失うこともある。このような報酬・罰逆転課題は多くの方法が試され、いずれもサイコパスは罰を無視してしまい、罰から行動を是正することができないことを示す(J.ブレアp71)。

報酬が有るか無いかだけの課題で、奪われる罰がない場合、すなわち逆転がない場合には、サイコパスは健常者と変わらない成績になる。サイコパスの報酬だけの判断は健常者と同様である。状況が逆転していることを把握する脳の部位は傍辺縁系の前頭前皮質(内側・眼窩・腹外側)で、サイコパスはここが機能不全である(J.ブレアp139、p177、p185)。この障害は子供より成人に、より顕著である(J.ブレアp186)。このことは扁桃体機能不全が子供の頃にあり、成長と共に周辺の関連脳部位の発達を阻害したことを示唆する。

報酬・罰逆転課題はサイコパスの子供は対応できるが成人になるとできなくなる。成人はサイコパスが進行した状態へ、すなわち扁桃体の機能不全が成長と共に周辺部の脳障害へと波及したと考えられる。子供の頃にサイコパスを発見し、治療をすることで、傍辺縁系の脳機能障害まで深刻化することを防げる場合があるかもしれないことを示唆している(J.ブレアp73)。子供のサイコパス傾向は3歳児頃から表面化し始める(J.ブレアp81)。早期(おそらく就学前)の介入が非常に重要だ(日経サイエンス、K.A.キール、p12)。

1.5 共感する能力はサルやネズミでも見られる根源的能力であるがサイコパスはそこに障害がある。  

アカゲサルの実験(J.ブレアp107):2本の鎖の一方を引くと多い餌が、他方は半分以下の餌が出てくる。はじめに、これに慣れて、多い方を引くように学習させる。次に多い方を引くと、見えるところで別のサルが電気ショックを受けるようにする。電気ショックの様子を1回見てから、15匹中10匹は別のサルが電気ショックを受けない少ないほうの餌の鎖を選ぶ。1匹は5日間どちらの鎖も引かなかった。1匹は12日間どちらの鎖も引かなかった。この場合の条件は、そのサル自身が電気ショックを受けた経験があること、電気ショックを受けるサルと親密度が高いことである。この実験は、サルの共感能力の存在を証明している。サイコパスはこれが無い。

ネズミの実験(J.ブレアp107):レバーを押すと別のつるされた苦しい状態のネズミを下に降ろし苦痛を除くことができる。このことを学習したネズミは、報酬が無くても、別のつるされたネズミがいるとレバーを押して苦しい状態のネズミを降ろす。おそらく、別のネズミの苦しい声などが無くなる事が報酬となっている。共感の原点といえる実験である。

人間の実験(J.ブレアp74):知人が電気ショックを受けているように思わせ、被験者の皮膚電気反応を計測する。健常者群は知人の電気ショックを見て激しく反応する。比較してサイコパスは反応が衰弱している。すなわちサイコパスは共感能力が衰弱していることを確認した実験である。サイコパスは、サルやネズミでも持っている共感能力が衰弱している。

サイコパスの特徴は、映画『凶悪』で言う「人間が普遍的に誰でも持つ暗部」などではなく、サルやネズミでも持っている基本的な能力を失っている重篤な病気と捉えることができる。

1.6 扁桃体を破壊した動物実験でも見られるサイコパスの特徴行動:K.B.症候群

ネコやサルの扁桃体とその周辺を破壊すると「クリューバー・ビューシー症候群」(以下K.B.症候群)といわれる症状を発症する。1937年、クリューバーとビューシーの二人が発見した。その症状は次の通り。食欲、性欲、安全欲求、認知欲求など動物の生存に係わる基礎的欲求構造が破壊されていることが分かる。サイコパスとはK.B.症候群が人間に起こった症状と考えられる。

(1)恐怖・怒りの感情を表出すべき状況でもまったく反応がなくなる、恐怖・怒りに伴う反応の完全な消失。危険なものを避けなくなる。サルは何に対してもためらいなく近づき、恐れている火のついたマッチや蛇にさえも触れる。怒りなど顔の表情の消失。感情とそれに基づく行動である情動の喪失、情動の異常行動。

(2)手あたり次第に口に触れ、口に入れ、噛み、嗅ぐ、食べ物でないものを食べる。正常のアカゲサルにはみられない肉食がおこることがある。すべての対象物を口唇で調べているかのようにふるまう。特徴的なのは手よりも口を用いてものをたしかめようとすることで、同じものを何回も口に入れてみる。食べ物に関する認知の異常行動(口唇傾向、oral tendency)。(サイコパスが人の臓器を生で食べたり、血をすすったりすることがあるが「K・B症候群」と捉えることができる。〔M.ストーンp188、6名を殺害したR.チェイスや日本の神戸連続児童殺傷事件のA少年の例、A少年については後の1.16項を参照〕)

(3)周囲にあるものを見てもその意味を認識できない様子をみせる。サルは同じものを何度も手に取り熱心に調べる様にふるまう。対象物の認知の異常行動(視覚性失認症、精神盲:物は見えているのに、それを意味づけて認識・理解することができない)。(サイコパスは感情を乱すことなく遺体を切り刻む。あたかも時計の内部を見たくてバラバラにする調子である〔M.ストーンp193〕。これは「K・B症候群」の行動と捉えることができる)

(4)性的感覚の異常・亢進(異常な高ぶり):雌雄や種の区別なく、生物でないものに対しても交尾しようとすることがある。猫や犬では雌雄の見境なく何匹も重なり合ってしまう。(15人の男性を殺害したD.ニルセンの例。男性死体を床下に隠し、時々床を剥がして取り出しては興奮を味わい、腐敗が進むまで肛門性交を繰り返すなど異常な性行動〔M.ストーンp194〕。性的乱交や結婚・離婚を異常なまでに繰り返すサイコパスの特徴は、「K・B症候群」と捉えることができる)

出典:①「精神科ポケット辞典 弘文堂 P85クリューバー・ビューシー症候群」。②日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医伊古田俊夫(いこた・としお)のブログ、「クリューバー・ビューシー症候群  扁桃体への旅 その3」http://blogs.yahoo.co.jp/brainandaging/6115798.html(2014.3/1閲覧)③“精神医学事典”、加藤正明、保崎秀夫ほか編集、1975,弘文堂。扁桃体の基礎知識は川村光毅(慶應義塾大学 医学部 教授) 「扁桃体の構成と機能」http://www.actioforma.net/kokikawa/kokikawa/amigdala/amigdala.html(2014.3/1閲覧)より私が専門用語を一般的な用語にしたり、分かり易くしたり、短くしたりした。詳細が気になる人は出典を直接見てください。尚、上記出典には項目(4)の「生物でないものに対しても交尾しようとする」の内容はない。学術的でないが「恐怖が消え去り、全てが性交の対象になる - クリューバー・ビューシー症候群とは」に人間の具体例の記述があるので、付け加えた。http://sweettea.exblog.jp/(閲覧2014/2/27)

下の写真左は、扁桃体を破壊したサルが、普段では近づかない蛇を食べている、「K・B症候群」の項目(1)(2)の症状を示す。もし自然界で毒蛇であれば、サルのほうが命を落とすことになるので、生存の可能性が少なくなり淘汰される。写真右はニワトリに交尾を試みるウサギ、「K・B症候群」の項目(4)の症状を示す。写真はいずれも東京大学教養学部附属 教養教育高度化機構 前半担当: 坂口菊恵、心理Ⅱ3.脳の構造と機能局在http://l319.hocha.org/up1/data/07pdfより(2014.2/27閲覧)。

 

以下の(5)(6)の2例は、川村光毅(慶應義塾大学 医学部 教授「扁桃体の構成と機能」より。

http://www.actioforma.net/kokikawa/kokikawa/amigdala/amigdala.html(2014.3/2閲覧)を参考に、私が専門用語を一般用語にしたり、分かり易くしたり、短くしたので、詳細が気になる人は、閲覧元を見てください。

(5)扁桃体が破壊されたラットの恐怖がなくなる実験

ラットに音を聞かせると同時に電気ショックを与えて「恐怖条件づけ」を行なうと、音だけで恐怖反応(血圧上昇やすくみ)が起こるようになる。扁桃体を破壊したラットでは、この恐怖反応は起こらない。電気ショックを何回受けても、音から恐怖を感じる構造、恐怖反応は形成されない。恐怖反応の形成は正常な動物一般にみられるもので、その構造はヒトとラットで基本的に違いはない(川村光毅)。これは「K・B症候群」の項目(1)に相当する実験例。

(6)魚の情動障害

 メダカの扁桃体に相当する領域とその近傍を破壊すると群れの形成ができなくなる。コミュニケーション障害の研究のモデルとして使用可能である(坪川ら、1999)。扁桃体が動物の基本的な行動原理を形成していることがわかる例。サイコパスは、動物の基本的な行動原理に係わる病気という面を持つ。

(7)好奇心の認知欲求は恐怖の安全欲求と同じレベルの基礎的欲求

米国心理学会元会長のA.H.マズロー(Abraham Harold Maslow)によれば好奇心の認知欲求は、恐怖を感じる安全欲求と同じレベルの動物の基礎的生存欲求レベルである(「人間性の心理学」A.H.マズロー、産業能率出版部、1987)。扁桃体の機能不全を起こしているサイコパスは、認知欲求の異常な行動を伴うことが多い。K・B症候群の(2)(3)が認知欲求異常を示すものである。

1.7 サイコパスは見た目や会話では分からない

脳の障害のために、見た目では分からない。また、扁桃体と関連部位以外の言語、記憶、論理思考などの障害はないので、会話してもわからない。論理思考は障害が無いので、隠蔽工作は狡猾になる。下の2枚の写真は、元米国共和党員で、弁護士を雇わず、自ら弁護をしている知的なテッド・バンディ(Theodore Robert Bundy =Ted Bundy)である。この写真から、彼の犯罪が推察できますか?正解は少し後で。

 

写真の出典:左:ウイキペディア「テッド・バンディ」(2014.2/24閲覧)。

右:Criminal minds a virtual panel、

http://7criminalminds.blogspot.jp/2012/04/handsome-smart-and-deadly.html(2014.2/24閲覧)(日経サイエンスp20と同じ写真)

ニューメキシコ大学のK.A.キール博士は、犯罪心理学を学ぶ大学院生の経験を積ませるために、犯罪歴を見せずに、まず面接するよう指導する。院生は「これほど言葉遣いが丁寧で信用できる人物が間違って刑務所に入れられているに違いない」と思い込むようになる。麻薬、詐欺、強盗、売春などの事実を知って、学生が再び面接すると受刑者の態度が変わる。ぶっきらぼうに「ああ、あれね。ああいう事はあれこれ話したくなかったんだ」などと言われ、仮面が剥がされる(日経サイエンスK.A.キールp6)。サイコパスには他の精神疾患に見られるような、幻覚、幻聴はなく、混乱や不安におびえることもなく、人付き合いが下手ということもない。見かけでは“正気の仮面”をつけている。これがサイコパスを「人間が誰でも持つ普遍的な暗部」と誤解される原因の1つとなる。この暗部は誰でも持っているわけではない。ほんの一部の人が持つ、脳の病なのである。「生まれつき邪悪な人間などいない、人間の中の獣を呼び覚ます状況があるだけだ」(仏人ジャーナリスト、シュライバー)というのも正確でない。「生まれつき邪悪な人間」は稀とはいえ存在する(M.ストーンp289)。それがサイコパスなのである。

刑務所のサイコパスは“正気の仮面”により、弁護士や刑務所スタッフや精神科医などを騙し、模範囚としてじっと釈放のチャンスを窺う。M.ストーンは、早期に『もはや危険無し』と誤った判断を下して、釈放後に犠牲者を出した多くの例を挙げている(M.ストーンpp298-304、p213のJ.ウンターヴエーゲル(Johann Unterweger=Jack Unterweger)事件:釈放後直ちに3人の女性が拷問と殺害の犠牲になった)。釈放すべきでない仮面をかぶったサイコパスを早々と釈放する一方、悔い改めて危険性が無い、釈放すべき犯罪者の刑期を長引かせている。この誤りを防ぐためにもサイコパスの理解が重要と述べている(M.ストーンpp26-33)。

写真のテッド・バンディの犯罪を説明する。女性をレイプした後に殺害し、遺体を切り刻んで遺棄した。人数は30人以上と自白したが正確な人数は分からない。15歳の時に8歳の女子を殺害した可能性があるが事実は不明。相手を殴りつけて意識を失わせ、それから性行為を行う。遺体を切り刻んだ後、切断した女性の頭部の口の中に射精したという。日本の酒鬼薔薇事件の犯人は、頭部を切断し、その顔を切り刻んだ時に、性器に触れることなく射精をしたというのと似ている。なぜこのような残忍で奇妙な行為を行うのかについては扁桃体の機能不全と関連付けてはじめて理解が可能になる。テッド・バンディは最後まで、物事を深刻に受け止めることができず「自分は上訴に勝つ。死刑にはならない」と話していたが、1989年に42歳で、電気椅子で処刑された。出典はウイキペディア「テッド・バンディ」(2014.2/24閲覧)。サイコパスは、一般に、最後まで自分の犯罪を否定し続け、明白になった事実についても真実を語ろうとしない傾向がある(M.ストーンp30)。サイコパスが裁判で嘘に嘘を重ね、無実を主張するこの振る舞いのために、健常者の無実の主張がサイコパスと同じように捉えられて、冤罪を引き起こす原因にもなる。嘘を重ねることは、被害者と共感しないので悪いことをやったという意識が無いこと、すなわち罪悪感の喪失から生じていると私は考える。残虐な犯罪を次々起こしたオウム事件の主犯、麻原彰晃はサイコパスと私は思うが最後まで真実を語らないかもしれない。テッド・バンディのM.ストーンの邪悪度レベルは拷問をしていないのでレベル16程度となる。

邪悪度の最上位レベルは拷問を目的とした22になる。その1人デイヴィッド・パーカー・.レイ(David Parker Ray)を説明しておく。同僚や息子の前では好人物と見られていた。映画『凶悪』の”先生“も家庭では好人物と思われているところは似ている。

拷問殺害した女性は10数人ともその何倍とも言う。5回結婚。10代半ばには女性を木に縛り付けて拷問殺害。「拷問部屋」を自ら作った。防音、滑車、鎖、ウインチ、テーブル、拘束具、スタンガン、弱電流の牛追い棒、釘で覆われた張形、婦人科用器具、注射器、薬品、強化壁と強化ドア、カメラ、モニターが備え付けられていた。

女性を誘拐。手足を拘束し、口をガムテープでふさいで、天井から吊してから、自ら録音したテープを聞かす。

テープは『君には1ヶ月か2ヶ月ここにいてもらう。興奮させてくれたら3ヶ月になるかもしれない。永久にいてもらうことだってある。』とこれから被害者の身に起こることを言う。テープは文字に書き起こすと16ページになるがあまりに邪悪すぎて活字にできるのはわずかだけ、思わず耳をふさぎたくなる、とM.ストーン。ウインチと鎖で絞め上げられ、電気ショックなどの拷問が加えられる。主な関心は性器に向けられた。備え付けられた器具などであらゆる可能な拷問、苦痛、辱めが加えられ、ずたずたに切り刻まれ、最後は殺害された。日記や47枚の拷問を加えられた女性たちのスケッチを残しているが、邪悪すぎて1枚として掲載できない、とM.ストーンpp198-203。他の邪悪度22のサイコパスの例には、同じように拷問部屋を作り、20人以上を拷問・殺害し、記録ビデオを取ったレオナード・レイク(Leonard Lake)(M.ストーンpp204-206)や、森の人気の無い場所へ連れ込み、殴り倒し、縛り上げてナイフで切り、手押し車の柄を性器に突っ込み、性器を焼き、乳房に針を打ち、乳房と左足の一部を切り取り、最後は殺害するというような拷問をしたジョン・レイ・ウェーバー(John Ray Weber)(M.ストーンpp243-248)や、喉を切り裂き、大量の血が流れるのを見ると『アドレナリンがドッとめぐる』のを感じると言い、70人以上を殺害した、トミー・リン・セルズ(Tommy Lynn Sells)(M.ストーンpp207-212)がいる。トミー・リン・セルズと面会したM.ストーンは、半分人間、半分悪魔になっていると言う。サイコパスがなぜこのような奇怪な拷問や残虐行為を行うのかは、後の項「1.18サイコパスが邪悪で暴力的である根本原因」で述べる。

1.8 サイコパスと反社会性人格障害やその他の犯罪の違い

反社会的人格障害の中の一部にサイコパスが含まれる。「その他の犯罪」は、万引きや道路交通法違反などで、経済的環境や年齢で大きく変動する。「その他の犯罪」に比較して反社会性人格障害者は変動が少ない。サイコパスはさらに変動が少なく、経済的環境や年齢に依存しない特徴がある。

反社会的人格障害とサイコパスの違いは下記表の通り、扁桃体の障害が有るか無いかが基本になるが、サイコパスチェックリスト(PCL-R)の点数で分けることが試みられている。犯罪としては慣習的違反(社会秩序の違反)と道徳的違反(他者が嫌がることの違反)の組み合わせでおおよそ分けることができる。

 

サイコパスでない反社会性人格障害

サイコパスの反社会的人格障害

概要

法律違反を繰り返し、何回も逮捕される。社会的義務を果たす意思はない。情動障害は無い。

左記に、他人を傷つけることを求め、異常な性欲や認知欲求など情動障害が加わる。

犯罪の特徴

慣習的違反(社会秩序の違反)

左記に、道徳的違反(他者が嫌がることの違反)が加わる。

脳の障害の部位

扁桃体を除く傍辺縁系等の障害

扁桃体を含む傍辺縁系等の障害

付加する形で、統合失調症や躁病や薬物中毒など他の脳の障害を併発していることがある。

PCL-Rの点数

30点以上、子供で27点以上J.ブレアp11

アメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアル第4版(DSM-Ⅳ)で反社会的人格障害(ASPD)を定義しているが、長いのでそれを参考にポイントだけを私がまとめ上記表「概要」に記した。アメリカ精神医学会のDSM-Ⅳでは反社会的人格障害からサイコパスを分離していない。また、反社会的人格障害は18歳以上で17歳以下は行為障害(CD)と分けているようである。JブレアやK.A.キールらは、治療を考慮してサイコパスを反社会的人格障害から分離して対処することを提案している。サイコパスを判定する標準的な方法が検討されつつあるが、多数の専門家や使用できるfMRIなどの医療機器の普及が必要になるので現状は進んでいない。また、K.A.キールは、サイコパスが巧みに嘘をつくので、正確な診断を下すのが実務的に難しいことも分離することを妨げていると述べている(日経サイエンスp13)。日本の『犯罪白書』では、「精神障害者等」としてまとめており、反社会性人格障害もサイコパスも分離されていない。『犯罪白書』はサイコパスや反社会性人格障害の原因や対策を検討するうえで必要な科学的なデータを国民に提供するものにはなっていない。サイコパスチェックリスト(PCL-R)を知りたい人はウイキペディア「精神病質」を見てください。

1.9 子供のいじめとサイコパス発見方法

(1)道徳的違反(他者が嫌がることの違反)からのサイコパス児童の発見

道徳的違反(他者が嫌がることの違反)を子供は、早くから認識できる。「健常な発達をする子供は、慣習と道徳の違いを生後36ヶ月(3歳)になれば区別することができる。子供はすべての違反を同じようには判断していない。むしろ他人に害を与える違反(道徳的違反)と社会秩序を乱すだけの違反(慣習的違反)を区別している。」(J.ブレアp106)。サイコパス傾向の子供はこの区別がつかないので、これを手がかりに、早期にサイコパスの病状を検知し、治療を開始することができるのではないかと私は考える。

「いじめ」を繰り返し行う子供、他の子供を神経衰弱や自殺にまで追い込む子供は、サイコパスの検査を受ける必要がある。後の項目「1.11(1)サイコパスの割合」で示すように、250人に1人程度の割合でサイコパス特性の子供が存在すると考えられる。すなわち、40人学級であれば6クラスで1人程度は陰湿ないじめをする子供がいることになる。教師などはこの現実に眼を背けず対処する必要がある。M.ストーンは「・・・訓練の結果、サイコパス傾向の子供が――たとえ心の底では善悪の差を「実感」できなくても――自分のためになるからという理由で行動を律することができるようになれば、やがては、道徳的に悪とされる行為や暴力から遠ざかる習慣が身についていくかもしれないp280。」と述べている。

サイコパスは相手が嫌がっている苦痛を、共感することができないので、相手の苦痛により“罰せられる”ことがない(J.ブレアp172)。健常者はいじめをしたときに犠牲者の苦痛の共感により罰せられる。悪いことをしてしまったという罪悪感(嫌悪反応)の罰がある。一般には行為をする前に、その共感の苦痛を予測して、行うことはない。サイコパスが、罪悪感が無いのは、苦痛の共感が無いことから生じている。これは、こどものいじめの原点になる。サイコパスでなくても、成長期の子供は共感する能力が他の欲求能力と比較して相対的に未発達のためにいじめが生じることがある、その場合は成長と共に収まる。扁桃体の機能不全から生じるいじめは、陰湿で手加減がなく、エスカレートすることはあっても、自然に収まることはない。

子供のサイコパスについては後の項目「1.15(6)サイコパスの遺伝要素と環境要素(例:虐待)」も参照してください。

(2)新生児模倣からのサイコパス児童の発見:判別が正確にできないので実用性はない。

新生児は生後1週間も経つと、人のまねをする。たとえば、人が舌を出したり引っ込めたりすると、新生児は舌を出す。これは、じっと目を見合って、動作は変化させながら行う必要がある。尚、この人まねはチンパンジーでも、他のサルでも見られる(放送大学、発達心理学特論、第2回「心の進化と発達」京都大学大学院准教授、明和政子)。この人まねは、まだ確認されていないが、ミラーニューロンによるものと考えられる。サイコパスはミラーニューロンの機能に障害があるため、この人まねが、生まれたときからできないかもしれない。もし、扁桃体の機能不全が始めにあり、その後、扁桃体の異常が周辺に波及してミラーニューロンが機能を失うのであれば、生まれたばかりではミラーニューロンの機能が正常と考えられるのでサイコパスでも新生児模倣は生じることになる。いずれにしても、サイコパスを早期に発見して、適切な対処をすることが重要なことである。尚、新生児模倣は2ヶ月程度で次の段階のコミュニケーションへと成長するため、消滅する。

1.10 傍辺縁系の一部が損傷し扁桃体は正常な場合の例

下の写真はF・ゲージ(Phineas P. Gage)という、穏やかで、部下に信頼されていた作業長が、現場の事故で鉄の棒が刺さり、傍辺縁系の前頭前皮質が損傷した事件を示す。写真左は貫通した鉄棒を持つF.ゲージ本人。右は事故で鉄棒が貫通した状態を再現したCG。F.ゲージは事故後、粗暴で思慮深さを失い、部下たちは別人になったと言った。傍辺縁系の損傷で人格障害を起こしたが、扁桃体は正常のため情動障害は併発せず、サイコパスにはならなかった。人格障害と情動障害が脳の別の部位に属することを示す例である(日経サイエンス、K.A.キールp10)。写真はウイキペディア、「フィアネス・ゲージ」より。

 

 以下(その3)へ続く。テッシーでした。

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扁桃体とミラーニューロンについて (ケン)
2015-06-26 21:54:13
扁桃体の異常が周辺に波及してミラーニューロンが機能を失うと書いてあるけれど、僕は違うと思う。 「悪の経典」では 、サイコパスの主人公 蓮実聖司は、新生児の頃からすでにミラーニューロンはなかった。 小説に書いてあることが正しいとは一概には思えないが、扁桃体の異常が周辺に波及するのではなく、扁桃体の異常の中に「ミラーニューロンの機能の欠如」があるんではないのかなと思った。
ケンさん、コメントありがとうございます。 (テッシー)
2015-06-27 19:49:07
ケンさんがご指摘の通り、サイコパスが新生児のころから偏桃体とミラーニューロンの機能不全を同時に持っている可能性はありますが偏桃体とミラーニューロンは脳の別の部位です。偏桃体は健全でミラーニューロンだけに障害を持っている人がいます。この人たちは感情が豊かなのに、人の気持ちを写し取ることが出来ないのでとても苦労をしています。この人たち(自閉症の人たち)に暴力性や残虐性は全くありません。自閉症については本シリーズの『その3』「1.15(4)サイコパスと他の精神障害の関係4)サイコパスと自閉症」にまとめていますので参照してください。
『扁桃体の異常の中に「ミラーニューロンの機能の欠如」』は含まれず、別々にとらえるべきと言うのが私の考え方です。また、本ブログ(その2)では幼少期と成人期の違いから偏桃体の機能不全が成長とともに傍辺縁系へ影響する可能性を述べましたが、ミラーニューロンへ影響することは述べていません。
映画「悪の経典」主人公 蓮実聖司(伊藤英明)は多数を殺害していますが首を切断したり、内臓を取り出したり、監禁して死に至るまで虐待し続けることもしていないので、サイコパス特性は低い。自動小銃2丁とマグナム銃2丁を持って学校に侵入し教師など16人を虐殺したトマス・ハミルトンを米国の犯罪者精神鑑定医の権威M・ストーンは悪の等級のレベル16にしている(「何が彼を殺人者にしたのか」マイケル・ストーン、2011年、イースト・プレス社、pp136-137)。蓮実聖司もレベル16程度と思います。本ブログの(その1)で述べたテッド・バンディと同じ。蓮実聖司よりはるかに残虐なレベル17以上のサイコパスはたくさんいます。映画の中で「蓮実聖司は、新生児の頃からすでにミラーニューロンはなかった。」と言う場面を私は見落としましたが、蓮実聖司は実在人物ではないことを考慮した方がいいのではないかと思います。
Unknown (コルト)
2015-08-23 14:43:46
初めまして、私はサイコパスについて色々調べたりしているのですが、パッと調べて出てくるような特徴は飽きる程見て来たのでもっと細かい情報がないか探っています。
例えば味覚や嗅覚、聴覚や視覚(目の動きなど)、五感について唯一分かった事は目の焦点が合わないとか鼻が悪いというだけですが、感じ取れる距離なら匂いというものにどういう興味を示すのかとか、普段の仕草やどんな夢を見るのか、泣き落としに使う涙はどうやって出してるのか、想像力が浅はかだったり中には空想虚言といった想像力豊かなサイコパスも存在するそうです。
積極的だったり大人しかったりといった共通点や矛盾などは個体差にもよるとは思うのですが、その個体差とはどの程度のものか、ジェームズファロンの歩んできた人生にも興味があり、彼は人生で本気で泣いたり笑ったり楽しんだりした事はあるのか、不安や発作はあったのか、妻や子供の事をどう思っているのか、サイコパスな子供はいじめっ子になりやすいのか、逆にいじめられる子もいるのかとか、失敗したサイコパスは務所にいる者の事を言うが、成功したサイコパスはどの程度の事を成功というのか?何にさえサイコパスとバレずに普通の人間として人生を歩んでいる者の事なのか、それとも社会のトップに登りつめた者の事を言うのか。
成功した側は失敗側と比べて明らかに考え方が違い、スピーチでも平常を保っていた失敗側と比べても異常に高かったらしいです、じゃあ何故高かったのか?緊張によるものなのか、興奮によるものなのか。
共感性のスイッチのオン、オフはどの場面で切り替わるのか、とても気になる事ばかりでこれ以上探しても見つからないのは分かっているのですがついつい情報を探してしまいます、そういった事は海外の方が詳しそうですが、残念ながら私は英語が読めません、新たな情報が日本で更新される事を密かに待っています。
コルトさん、コメントありがとうございます (テッシー)
2015-09-21 11:59:45
コルトさんの問いかけは、経営に係わり重要です。長くなりましたが、よろしければ以下読んでみてください。返事が遅くなり申し訳ありません。
まずサイコパスを3つに区分します。これは私の区分で一般的には認知されていません。以下3区分の要点を説明し、その後コルトさんのコメントを考え、その後『トロッコ問題』で説明します。
1、真性サイコパス
本物のサイコパス。偏桃体機能不全症候群。本ブログのサイコパス。自分の行為で生ずる相手の苦痛を積極的に求める。人を助ける感情はない。
2、疑似サイコパス
似ていてまぎらわしいサイコパス。偏桃体機能不全ではない。環境圧力で偏桃体の反応が抑制されている。環境が変われば回復する可能性がある。自分の行為で生ずる相手の苦痛に目をつぶる。苦痛に共感しないよう心に障壁を作る。利害関係のある人以外助けたいと感じない。真性サイコパスを利用し、又は利用される関係となることがある。J・ファロンやK・ダットン(Kevin Dutton、NHK心と脳の白熱教室第3回「あなたの中のサイコパス」講師)が言っている「サイコパス」はこの「疑似」のこと。「真性」と混同している。「疑似」と「真性」をはっきり分ける必要がある。
3、健常者
相手に深入りしない好ましい冷淡がある。「疑似」の冷淡とはっきり分ける必要がある。相手が苦痛を感じる行為をしない。困っている人すべてに、出来るかどうかに係わらず助けたいと感じる。「真性」「疑似」の行為を許せないと思う。「疑似」を健常者は自分の延長上で捉える事が出来るが、「真性」の行為は自分の延長上で捉える事が出来ない。健常者と「疑似」はスペクトラムでつながり、両者は程度の違いになる。健常者は環境の圧力で「疑似」になる。「真性」は健常者とスペクトラムの関係にない。全く別の領域にいる。

4、コルトさんのコメント要約
コメントをまとめると1)真性サイコパスに関して①~⑥、2)J・ファロンの疑似サイコパスに関して⑦~⑭の合計14項目になると思います。
1)真性サイコパスに関する以下6点。
①五感(味、臭、音、視覚、触覚)に健常者と具体的にどういう違いがあるか?
②普段の仕草に何か特徴はないか?
➂どんな夢を見るか?
④泣き落としに使う涙はどうやって出しているか?
⑤「想像力が浅はか」や「空想虚言と言った想像力豊か」なサイコパスもいる、この多様性はどう考えるか?
⑥「積極的」だったり「大人し」かったり、個性の個体差はどの程度か?
2)J・ファロンの疑似サイコパスに関する以下の8点。
⑦人生で本気で泣いたり笑ったり楽しんだりした事はあるのか?
⑧不安や発作はあったのか?
⑨妻や子供の事をどう思っているのか?
⑩サイコパスな子供はいじめっ子になりやすいのか?
⑪逆にいじめられる子もいるのか?
⑫失敗したサイコパスと成功したサイコパス?
⑬サイコパスはスピーチ、プレゼンがうまいのか?
⑭共感性のスイッチのオン、オフはどの場面で切り替わるのか?
5、コメントについての私の見解
1)真性サイコパスに関して
①五感
「唯一分かった事は目の焦点が合わないとか鼻が悪い」とのこと。サイコパスの本質が表れているように思います。とても興味ある。差支えなければ出典を教えてください。「感じ取れる距離なら匂いというものにどういう興味を示すのか」などについて私の考え方は以下の通り。
特に恐怖に係わる感覚に麻痺があるので五感(味、臭、音、視覚、触覚)のすべてで、健常者が恐怖に感じることが何も感じない。強烈な苦い味、強烈なにおい、強烈な騒音、残虐な場面、皮膚への強い刺激のいずれも鈍感で、恐怖を除いた残りの感覚であると推察される。五感のいずれについてもさらに強烈で恐怖の神経回路がわずかでも反応するような激烈な刺激に興味を示すはず。ただし、「残虐な場面」や「共感」に健常者と異なる反応を示す以外は具体的に計測されたことはないと思う。「疑似」でも健常者と異なる反応になるので、「真性」と「疑似」の反応の微妙な違いを計測できるようにする必要がある。今は出来ていない。ジェットコースターやバンジージャンプや高所などで健常者でも恐怖を感じない人がいますが、これは健常者の多様な個性。サイコパスとの違いを見つけ出す必要があります。サイコパスの病理を五感の違いだけで見つけ出すのは、とても難しく、単純化に注意が必要と思います。
②仕草
興味や興奮状態が仕草に現れるので、仕草に違いがあることは予想できるが詳細不明。
➂夢
健常者とは違う。恐怖の夢は見ないはず。詳細不明。
④涙
健常者のウソ泣きより狡猾なウソ泣き。「真性」は悲しくて泣くことがない、ふりをする。涙も流す。詳細不明。
⑤想像力の多様性
大脳皮質は健全なので健常者と類似の多様性があると考えられる。
⑥個性の個体差
大脳皮質は健全なので健常者と類似の個体差があると考えられる。
2)J・ファロンの疑似サイコパスに関して
⑦本気で泣いたり笑ったり楽しんだりした事はあるか
「疑似」はある。「真性」はない。
⑧不安や発作はあったのか
「疑似」は不安に鈍感だがある。動物虐待、放火、レイプを発作とするとない。「真性」は恐怖の感情が委縮しているのでほとんど不安がなく、発作あり。
⑨妻や子供の事をどう思っているのか
「疑似」は自分の利害範囲なので健常者と変わらない。部外者にのみ冷淡。「真性」は妻や子供を含め誰にでも冷淡。
⑩いじめっ子になりやすいのか
「真性」は陰湿ないじめっ子に自ら進んでなる。「真性」は子供か大人かを問わず、粗暴な反社会性人格障害者や「疑似」を操り、徒党を組み、激しいいじめをすることがある。映画『凶悪』原作はこの徒党の関係を示している。「疑似」は「真性」の徒党に入ることはあるが自ら進んではならない。
⑪逆にいじめられる子もいるのか
「疑似」も「真性」も腕力がないものは、他の「真性」の徒党にいじめられる。又は、その徒党の一部になりいじめをかわす。最もいじめられるのは腕力のない健常者や反撃をしない自閉症傾向の子。

以下の⑫⑬は経営におけるサイコパスの重要な問いかけ。
⑫失敗したサイコパスと成功したサイコパス
「疑似」と「真性」の成功・失敗は本人から見たか、健常者の社会から見たかで成功・失敗が逆になる。成功・失敗を定義すると分かり易い。
本人から見た成功=望む人生を歩んだこと。失敗=望まない人生を歩んだこと。
社会から見た成功=他者を犠牲にせず自己実現したこと。失敗=他者を犠牲にしたこと。
この定義でコルトさんの設問を考える。
・刑務所にいる者:
「真性」にとっては残虐性を満足させることが出来ず、望む人生でないので失敗。社会にとってはこれ以上の犠牲者を出さないので成功。尚、「真性」は刑務所の中で他の受刑者を虐待し満足を得ることがあるので刑務所入りが失敗とは限らない場合がある。
・バレずに普通の人間として人生を歩んでいる者:
「真性」にとっては残虐性を発揮できていれば成功、発揮できていなければ望んだ人生ではないので失敗。社会から見れば他者の犠牲があれば失敗。
・社会のトップに登りつめた者:
「真性」にとっては社会のトップに登りつめることはさほど興味がない。その地位で残虐性を発揮できる場合に興味がある。すなわち、残虐性を発揮できれば成功。できなければ地位が上でも「真性」にとっては失敗。社会から見れば、その地位のために他者の犠牲があれば失敗。
「疑似」についても同様で、他者を犠牲にしている限り社会から見れば失敗。
⑬サイコパスはスピーチ、プレゼンがうまいのか
「真性」「疑似」を問わずスピーチやプレゼンがサイコパスの方が健常者よりうまいということはない。ただし、恐怖感がないので上がることがなく、平気で嘘をつけるので、落ち着いた「魅力的な」スピーチになる。サイコパスが聴衆の心を操ることに長けているのはこのためと思う。知能レベルが高いわけではない。
本シリーズ(その3)の「(3)サイコパスと知能指数(IQ)、教育状況の関係」「『サイコパスは平均以上の知能を有している』という都市伝説の証拠は全くない(Jブレアp31)」。参照。
⑭共感性のスイッチのオン、オフ
「真性」:常にスイッチオフで、他者と共感することはどんな条件下でもない。脳に共感の機能障害。
「疑似」:自分の利害がスイッチのオンオフの境目。利害共同体枠内の近親者には共感オンし、枠外にいる人には共感オフ状態に切り替わる。戦場で周囲の利害関係のない死体には共感オフになる。戦友の死体にはオンになる。「疑似」経営者は企業の利益が増大すれば、労働者の苦痛に共感することはない。時系列的にもオンオフは生じるが、利害の境目を行き来する場合と思う。健常者は、近親者にも、関係しない人にも共感する。「真性」「疑似」の行為には共感しない。
6、トロッコ問題の「真性」「疑似」「健常者」
この問題はK.ダットンが好んで使う。NHK心と脳の白熱教室第3回「あなたの中のサイコパス」の話や日経サイエンス「心の迷宮」(2013/4/18)でも使っている。ダットンは「疑似」と「真性」を混同している。以下の「疑似」はダットンが言う「サイコパス」のこと。ダットンは「真性」について触れていないので私が追加した。各事例は私が単純化している。事例3は私が追加。
事例1:
高速でトロッコが来る。レールの先には5人の作業員がいて、このままではトロッコにひかれて5人が死ぬ。レールには切替装置があり切り替えてもそこには一人の作業員がいる。
あなたは切り替え装置のレバーを操作することが出来る。切り替えるか?
ダットンの答えは、「疑似」も「健常者」も死ぬ人数が少ない方を躊躇なく選択し切り替える。「真性」は、死ぬ人数が多い方を選び切り替えない。
事例2:
高速でトロッコが来る。レールの先には5人の作業員がいて、このままではトロッコにひかれて5人が死ぬ。ここまでは、事例1と同じ。切り替え装置はなく、あなたはレールの上の陸橋にいる。あなたの前に、見知らぬ大男がいる。大男を突き落とすとトロッコがその大男を引いて止まり、5人は助かる。あなたは大男を突き落とすか?
ダットンの答えは、「疑似」は躊躇なく突き落とす。「健常者」は躊躇してなかなか突き落とせない。「疑似」は合理的な判断で冷淡に行動し、経営者の素質があるとダットンは考える。本当に経営者の素質と言えるか文字数がオーバーするので別の機会に。「真性」は、5人を助けることを意識せずに、積極的に突き落とす。このことは次の事例3ではっきりする。
事例3:
あなたはレールの上の陸橋にいる。レール上には作業員はいない。あなたの前に、見知らぬ大男がいる。大男を突き落とすとトロッコにひかれてバラバラになり死ぬ。誰も見ていない完全犯罪が出来る。貴方は大男を突き落とすか?
「疑似」と「健常者」は突き落とさない。「真性」は積極的に突き落とす。バラバラになり、内臓が飛び出た死体を見に下に降り、興奮を再び味わえるようスマホに記録する。また、興奮を引き出してくれる切断され歪んだ頭部をビニール袋に入れ宝物のように持ち帰る。もし頭部が切断されていなければ、自分で刃物を使い切断する。
この事例3が「真性」をよく表している。JファロンやK.ダットンはこの「真性」に深入りしない。「疑似」を「サイコパス」として一般化し、みんな程度の差があるが「サイコパス」特質を持っていると論理を立てている。この「真性」と「疑似」の混同はサイコパスの理解を誤らせている。以上

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