goo blog サービス終了のお知らせ 

洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 日本の経験#105 三菱商事の洋上風力 補助金変更は「救済」 競合が反発

2025-04-06 20:01:19 | 日記

2025年04月06日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#105 三菱商事の洋上風力 補助金変更は「救済」 競合が反発]

①洋上風力発電が本当にCO2削減に貢献するのか、②洋上風力発電事業自体が再エネ賦課金だのみの不採算事業であり漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、③政府が責任をもったMSP(海洋空間計画)を設定すべきではないのか、④政府がベースラインをしっかり作るような漁業影響調査を指導すべきではないのか。

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

経済産業省は今年2025年春にも大規模な洋上風力発電の公募指針を見直す方針を明らかにし、すでに落札者が決まった海域を対象に、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)から電力市場価格を参照して補助金を決める「FIP」に変更する「FIP転」が可能と明記、三菱商事への「事実上の救済策」と見る業界関係者は多く、怨嗟(えんさ)の声が広がっていると日本経済新聞(鈴木大洋様)がリポートしている。

 

2025年04月05日 日本経済新聞(鈴木大洋様)から転載

[三菱商事の洋上風力、補助金変更は「救済」 競合が反発]

経済産業省は今春にも大規模な洋上風力発電の公募指針を見直す方針を明らかにした。すでに落札者が決まった海域を対象に、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)から電力市場価格を参照して補助金を決める「FIP」に変更する「FIP転」が可能と明記する。三菱商事が落札したラウンド1の採算が大きく改善する見込み。「事実上の救済策」と見る業界関係者は多く、怨嗟(えんさ)の声が広がっている。

インフレや円安で採算厳しく

「入札後にFIP転できるという認識はなかった。公募の信用を失墜させ、サプライチェーン(供給網)などにも大きな影響が出るだろう」。再生エネ事業を手掛ける企業の幹部は憤りを隠さない。

経産省などが3月10日に開いた洋上風力に関するワーキンググループでは、すでに落札された洋上風力事業についてFITからFIPへの移行を認める方針が示された。事業者が申請し経産省が認めればFIPが適用されることになる。

2021年に結果が出たラウンド1と長崎県五島市沖の浮体式洋上風力はFIT価格で入札を実施し、ラウンド2からFIPに移行している。そのためFIP転はラウンド1と五島市沖が対象となる。

ラウンド1では三菱商事陣営が1キロワット時あたり11〜16円台という他社より大幅に安い価格で3海域全てを落札した。ただロシアのウクライナ侵略などによるインフレや円安の進行で資材価格が高騰し、事業環境は悪化した。三菱商事は今年2月、3海域で522億円の損失を計上したと発表し、「ゼロベースで今後の方針を検討する」(中西勝也社長)と撤退の可能性を否定しなかった。

経産省「制度変更ではなく運用を明確化」

FITは国が発電事業者から固定価格で再生エネを買い取る仕組みだ。一方、FIPは発電事業者が再生エネを販売することができる。さらに日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格をもとに参照価格を算出し、あらかじめ決めたFIPの基準価格を参照価格が下回る場合は補助として「プレミアム(上乗せ金額)」を受けられる。

FIPの場合、事業者はコーポレートPPA(電力購入契約)で再生エネを電力需要家に販売することが多い。自然エネルギー財団によると太陽光のPPAの場合、平均価格は13〜16円。さらにプレミアムを受け取れる可能性があり、収益性が大きく向上する見込みだ。

ワーキンググループで経産省は「制度変更ではなく運用を明確化する」と説明した。FIP転は既設の太陽光や陸上風力などで実施した実績があり、洋上風力も例外ではないことを明記するという立て付けで、公募ルール変更には当てはまらないとしている。

基準価格、ラウンド2・3と大差

ただ業界関係者の間では三菱商事のラウンド1の救済色が強いという指摘が相次ぐ。

まずFIPの基準価格が高い点だ。FIPは23〜24年に結果が公表されたラウンド2・3で適用され、大半の海域では基準価格が1キロワット時あたり3円だった。参照価格が3円以下になることは現実的ではなく、実質的に補助が受けられない「ゼロプレミアム水準」と呼ばれる

今回の見直し案には「(移行した場合の)基準価格は、変更前の認定公募占用計画に記載された調達価格と同じ」とある。三菱商事の落札価格を反映すると基準価格は11〜16円台となり、ラウンド2・3を大きく上回る。陸上風力(12〜15円程度)と同水準だ。

さらに政府はラウンド4から公募ルールの変更を予定し、落札後の物価高などに合わせた基準価格の引き上げを盛り込んでいる。ラウンド1〜3の事業者も申請すれば遡及して適用される見込みだ。適用すると、撤退などの際に保証金が増額されるなど不利な点もある一方、建設費などの資本費部分にインフレ影響を反映できる。

資本費は事業全体の7割とされ、インフレ影響は最大4割とみられる。ラウンド1の価格に当てはめると最大20.9円程度まで上がり、高額のプレミアムを受ける可能性がある。

PPA顧客の奪い合い激化

もう一つはPPA市場の競争激化だ。FIPでは売電先を自ら選べる。ラウンド2・3の事業者はFIPの補助を事実上受けられないため、PPAを使って高値で売電することで採算確保を狙っている。ある電力関係者は「ゼロプレミアムの洋上風力は27円や30円の水準で売電しないと採算が合わない」と明かす。

もしFIP転が認められた場合、大量の再生エネがPPA市場に出ることとなる。三菱商事がラウンド1で落札した洋上風力の合計出力は約169万キロワット。設備利用率を3割と仮定すると年間発電量はおよそ4400ギガワット時となり、ソニーグループの年間電力消費量の約1.6倍の規模に相当する。

FIP転した陸上風力の場合、PPA価格は「20〜25円が相場」(電力関係者)といい、ラウンド2・3の事業者が想定するPPA価格を下回る可能性がある。電力販売を担当する関係者は「PPA顧客の奪い合いが激化することになり、危機的な状況だ」と嘆く。

競合他社からは擁護の声も

FIP転の容認について競合他社の意見は割れる。洋上風力はインフレや円安により事業環境が厳しい。仮にラウンド1の採算性が見込めず、三菱商事が撤退し再入札を実施する事態になると、政府の再生エネ導入目標に影響が出かねない。「洋上風力への地域の信用がこれ以上なくならないようにするには仕方がない」という発電事業者の声もある。

ただ批判の声が多いのも事実だ。三菱商事が大幅に安い価格で落札したラウンド1からルールが変わり、ラウンド2以降は価格点が満点になるゼロプレミアムでないと落札できない海域が大半だった。「(ラウンド1がFIP転すると分かっていたら)ラウンド2は価格点ではなく、(安定稼働に向けた計画の具体性や地域との連携策など)他の評価項目が焦点になっていただろう」(風力関係者)という声もある。

公募で落札できないと調査費用などを損失として計上するため、株価が大幅に下がったり、経営方針の変更を余儀なくされたりしたケースもある。ある再生エネ事業者は「重大な話にもかかわらず(約1時間の)ワーキンググループでFIP転の説明は3分程度だった」と経産省の対応に不満を漏らす。

事業者と経産省の見解に食い違い

複数の再生エネ事業を手がける企業の関係者は「ラウンド1終了後に経産省に『FIP転を想定した公募だったか』と質問したところ否定する回答があった」「ラウンド1はFIT前提の入札と説明があった」などと証言し、FIP転を容認するのはルールの事後的な変更とみている。一方、経産省はラウンド1時点でFIP転を許可するかの議論はなかったと説明するなど見解が食い違う。

三菱商事は日本経済新聞に対し「改訂案の素案が示されたことは認識しており、改訂の方向性も踏まえて事業性の再評価を進めている」とコメントした。1月を予定していた千葉県銚子市沖の着工を先送りするなどスケジュールが遅れており、事業の実現に向けて採算性以外にも乗り越えるべき課題は多い。

日本の洋上風力はまだ黎明(れいめい)期で、これから大量導入が始まる。安価に導入できるという楽観的な見通しは崩れ、追加コストを誰が負担するかという議論は避けられない。仮にFIP転などにより公的支援が増えると、再生エネ賦課金という形で国民が負担することになる。どのようにコスト負担や公募ルールの見直しを議論すべきなのか、浮かび上がった課題は重い。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。