
2025年04月06日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[洋上風力発電と漁業 日本の経験#106 水研機構の大関フェローが日本海スケトウダラ繁殖行動への懸念指摘]
国立研究開発法人水産研究・教育機構フェロー大関芳沖様(以下:大関フェロー)は、“水産振興”第648号で、広範囲で洋上風力発電プロジェクトが進められている本州・北海道の日本海側を対象に、水産海洋学の立場から、漁業への影響に関する懸念として、「漁業振興策と事故回避」、「温暖化と魚礁効果」、「資源回遊状況変化」、「風車の発する音」、「渡り鳥と海」、「地球温暖化と風況」、そして「漁業者への拠出金の合理性」と項目整理している。
この中の「風車の発する音」への懸念として、大関フェローはスケトウダラの繁殖行動の阻害を指摘している。
スケトウダラでは繁殖行動の際、雄同士の威嚇行動と、雌への求愛行動に異なる周波数の音を利用している。
洋上風力発電施設から海中に伝搬する卓越周波数は14Hz〜400Hzの範囲にあり、150Hzの騒音は1km程度まである程度の音圧レベルで伝わっていくと報告されている。
北海道日本海側のスケトウダラ産卵場は風車建設予定地と重なっている。
大関フェローによる“水産振興”第648号「洋上風力発電と水産-水産海洋研究の立場から懸念されること」では、次の点を具体的に指摘している。
①タラ類が種独自の鳴音と聴覚器官が広く利用、スケトウダラでは繁殖行動の際の雄同士の威嚇行動の際に800Hz以下の攻撃音を、また、雌への求愛行動の際には500Hz以下の求愛音を発することがわかっている点。
②①はスケトウダラがこれらの音を発する能力だけでなく、周波数を識別する能力を備えていることも示唆している点。
③洋上風力発電施設から海中に伝搬する音の周波数については報告事例が整理されており、卓越周波数の範囲は14Hz~400Hzにあり、特に130Hz~200Hzが多いことがわかっている点。
④風車タワーからの音の海中伝搬については、水温の鉛直分布・底質・構造物の音響中心位置などにより異なると考えられるが、浮体式洋上風力発電からの150Hzの騒音の水中伝搬をシミュレーションにより解析した結果によれば、距離が離れるにつれて徐々に減衰していくものの、1km程度まではある程度の音圧レベルで伝わっていくことが報告されている点。
⑤複数の洋上風力発電が並ぶウインドファームでは、個々の風車の発する音が合成された音源となって影響を与えることも示唆されている点。
⑥現在、北海道日本海側のスケトウダラでは資源の低迷が続いており、一方で、この系群の産卵場はウインドファーム建設予定地とほぼ重なっており、底質環境としての産卵場は維持されても、繁殖行動が阻害されることで再生産が行われなくなることがないことを願う点。
なお、大関フェローは、これら懸念点の多くが個々の洋上風力プロジェクトでは解決できない問題であり、本州・北海道の日本海側全体で問題を共有して、統合的な調査と対応により解決策を見いだしていく工夫が必要だと結んでいる。


