ヨダログ

囲碁棋士 依田紀基のブログ

頭はしっかりしているつもりです。

2010-02-22 | 日記
ある観戦記者さんと話していて、僕としては意外なことを言われた。

それは、僕が初手7の十や、5の十に打つのは、

どう打っても勝てると思っている相手だから打っているのではではないか?

というニュアンスのことを間接的に言われたからである。

多くの人からはそう見えるのかと思った。

僕はプロだから、自分の碁についてどのように批評されようと構わないと思っているが、

同じ棋士からも、「どーしちゃったんですか?」と心配されていた。

全国の依田ファンに心配をかけていると思うと心が痛むので、

一応、自分としては頭はしっかりしているつもりであり、

どういう心境の時に、そういう手を打っているのかという話をしたいと思う。

まず、一般的な常識として、碁は最終的に陣地の多い方が勝つゲームである。

そして陣地を囲いやすいのは隅である。

おそらくそういう理屈で、四隅から打ち始めるのが良いとされているのだと思う。

しかし、その常識は本当にそうなのだろうか?という思いが僕にはあるのである。

もうひとつの大きな理由として、いつもと違った景色を見たいということがある。

自分以外に打った棋士は他にはいないだろうということである。

だから、僕が明き隅から打たないときは、気力が充実し、エネルギーが満ちていると自分で感じる時である。

僕がそういう手を打っている時の相手を調べてもらえば、

ほとんどがトップクラスかそれに準ずる打ち手であることがわかるであろう。

どう打っても勝てると思う相手には逆に打つことはない。打つ意味もない。

僕は碁盤に向かえばいつも大真面目にやっているつもりである。

山下君は碁聖戦で5ノ五へ打った。

僕は5の十へ打った。

棋聖戦で7の十に打った。

その道理なら、天元戦は天元に打つところだが、僕は初手天元は勝率が悪いのである。

五手目の天元は勝っている。

もう15年近く前の話だが、高尾君と山下君がテレビの早碁であたり、

黒の高尾君が一手目、5の五に打ち、

白番の山下君が、2手目で天元に打っている碁があった。

高尾君は7手目くらいに天元の白石にツケていった。

僕は、高尾君に、「天元にツケるタイミングが悪いよ」と言った。

僕は続けて「黒は3手目、つまり、白が天元に打った瞬間に、つけなくてはならない。

そして、白がハネてくれば、キリを含みにハネた石に近い方の5の五に打つ感じだろう」と言った。

高尾君は、「どちらからツケるところですか?」と聞いてきたので、

僕は「内側からツケるのは5の五がだぶる感じなので、外側からツケるに決まっている。」と答えた。

高尾君は急に晴れ晴れとした表情になって、「勉強になりました。」と言っていた。

3手目にツケるのでなくては、鮮度が悪いのである。

しかも、間、髪を入れずに打つのが望ましい。

僕はこういう訳のわからない話を大真面目に議論するのが好きである。
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