風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

2010年04月27日 | 詩集「家族の風景」
Rekishi2


妹が泣いていた
だいじなオルゴールの中に
嫌いな虫がいるという
ふたを開けると
ときどき
キロロンと虫が鳴く


ふしぎな音のでる
オルゴールのピンを折ってしまったのは
ぼくなのだ
妹はそれを知らない


いっぱいだいじなものを壊した
父の万年筆とカメラ
母のネックレスと手鏡
おじの釣竿とバイク
みんな好きなものばかり


壊れるように
父は眠り
おじは消えた
母は歩行器がないと歩けない
この秋
母親になった妹は
はじめて
虫の声を聞いている


(2008)


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