風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

2010年04月22日 | 詩集「母の肖像」
Bu


ちっちゃい鯨ね
ぼくの絵日記をみて母が言った
海色の夏休み


まちの博物館の
部屋いっぱいに展示された鯨の骨を
ぼくたちはスケッチした


鯨も夢をみたのだろうか
とほうもなく大きな夢を
まるい船の窓そっくりの
博物館の窓を
ぼくは青く塗りつぶした


骨のままで眠りつづける鯨
夢のなかで
夢のそとで
ぼくは探しつづけた
丸い窓には
空と海しかなかったけれど


ときどき鯨の夢をみる
草原をおよぐ
緑色の長いながい夢だ
繋ぎとめられた無数の
鯨の白い骨のように
夢は目覚めることができない


だから、おかあさん
ぼくはまだ帰ることができません


(2005)






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