じゃっくり

日常をひたすら記すブログ

微笑みの貴公子

2005年09月09日 | 雑記
いつものようにゲーセンで鉄拳5をしていると、急にゲームの電源が切れ画面上に「システムエラー」とかいった文字が表示された。僕と隣で同じくプレーをしていたテッケナー(鉄拳をする人をこう呼ぶ)は顔を見合わせちょっと笑った。

「けっこうこうなること多いんですか?」と微笑んだまま彼は聞いてくる。
「そ、そうですね」と僕は答える。

不慮の出来事が起こったとき、なぜだか人は他人と交流をもちたくなってしまう。その話題を他人と分かち合いたいのだろう。前にもゲーセンでこういうことがあって、初対面の人とちょっと交流できたりした。

しばらくして復旧した。微笑んだまま彼は再度100円を入れる。
「100円もったいなかったですね」と僕は親指と人差し指で丸を作り彼に言う。ははと彼はいっそうしわを深くし微笑む。顔もイケメン風だし、僕は彼を「微笑みの貴公子」と呼ぶことにした。頭の中で。

僕も鉄拳をやりはじめ、しばらくすると微笑みの貴公子が話しかけてきた。
「あっちからしてもいいですか?」
僕と対戦してもいいですか、と彼は聞いてきた。普通、対戦をするときに相手側に承諾をとる必要はないのだが、微笑みの貴公子はどうやら礼儀を重んじる人らしい。

1回戦目、3-0で僕が勝利。するとすぐに再度対戦してきた。また勝利。そのまま3連勝すると、彼がこちらにきてまた微笑みかけてくる。優しそうな印象をもつが、ちょっとここまでくると逆に怖い。それからまた3連勝し、第7戦目に僕が負ける。僕は「負けたー」と言いながら体を後ろにのけぞらせた。もう帰ろうと思い、微笑みの貴公子に負けないくらいの微笑みで僕は彼に会釈をする。と、やはり彼は僕よりも数段上の微笑みで返してくる。

ゲームで勝って微笑みで負けた。