ぽっぽぶろぐ

まだまだ謎の田園主婦・ぽっぽ(水須ゆき子)です。
題詠blog2008参加中。

【023:結】末松ちひろさん

2006年04月06日 | 宝石箱
髪の毛を結うとき右手が知っている力加減でドアノブまわす/末松ちひろ


末松さんの身体感覚は、
ものすごく独特ですねー。(感心)

頭が身体を動かしているんじゃない。
まずは身体が先に動いて、
それを頭が後から追いかけているような。

神経の連絡網が、
何となく自然に切れているところが、
私には非常にツボなのです。なんでだろ。

髪の毛を結うときの力加減は、
林檎を握りつぶすほど強くはないけれど、
かといって蟻も殺せないほど弱くはない。
けっこう力仕事ですよね。髪を結うのは。

それは右手が知っている。
毎日のように繰り返しているから。

その力でドアノブを回す。
これもたぶん毎日やっていること。

もしかしたら、
玄関のドアかな。
朝の登校風景とか。

右手に任せて髪を結い、
右手に任せて玄関を出る。
心は少し後からついてゆく。

動作はいつもと全く変わらない。
でも心の遅れは少しずつ大きくなっているような。
だから作者は自分がよく見えるのかも知れません。

【023:結】西宮えりさん

2006年04月06日 | 宝石箱
鈍行の連結 蛇腹がひらいたりとじたりするたびこの世に酔った/西宮えり


電車の連結部分の歌もいくつかありました。
これはその中の一首。

二句の半ばにある空白。
ブツリと切れて電車が大きく揺れたみたい。

前半に固まっている漢字表記を、
ひらがなの羅列がたどたどしく正しく繋いで、
読み手を結句まで連れて行きます。

「この世に酔った」という結論(?)は、
特に「この世」は大げさな表現ですけど私は納得しました。

電車に酔っているだけではない。
たぶん混んだ電車に無理矢理乗って、
こんな風に日々を生きなければならない、
現在の状況に揺さぶられて作者は酔っている。

電車から降りれば、
乗り物酔いは治まりますけれど、
この世からはなかなか降りられない。
作者の酔いはまだまだ続くのです。

【023:結】丹羽まゆみさん

2006年04月06日 | 宝石箱
あららぎの枝に結ばれ春の陽に大吉の字を透かすお御籤/丹羽まゆみ

「結」
幸せそうな歌が多くて、
なんだか不安になりました。(笑)

丹羽さんの歌も、
陽差し明るい春の一日。

あららぎは櫟(いちい)の別名だとか。
音も景色も明るくゆったりとしています。
全く破綻がない。丁寧に作られた歌ですね。

ただ、
私はへそ曲がりだから、
こんなに幸せでいいのかなと思ってしまう。
あまりにも言葉の歩調が揃いすぎているというか…。

これはもう、
好みの問題でしかないのかも知れませんが。
せめて「中吉」か「小吉」くらいにして欲しかったかも。

優しく柔らかく整っているだけに、
出来過ぎた明るさに見えてしまうんですよ。
ホームドラマの大団円に流れるセットの町並みのように。
失礼なことばかり言ってしまってごめんなさい。