北欧デンマークおばさんの独りごちブロ

「住み慣れた地域で最期まで」をテーマにデンマーク高齢者福祉を研究し、世界のこと・日本のことを独りごちっています。

医療の質を高めるのは市民

2008-04-25 | 医療
つどい場さくらちゃんのリレー・セミナーで、
町医者として活躍しておられる長尾宏先生の話を聞きに行く。
以下、長尾先生のお話。

在宅医療は、これからもっともっと広まっていく方向にある。
最期は家に帰りたい、というのは、
人間として、当たり前の感情だ。

「畳の上で死にたいけれど、先生来てくれますか?」と
病院から帰る車の中から急に連絡があって、
言われた時に、すぐに行って間に合わない時もある。
ずいぶんとお叱りを受けたこともある。

主治医とは、できるだけ早くめぐり合って、
お互いに話して、お互いにどんな人なのか?
どんな人生を送ってきた人なのかを、理解しあいたい。

早ければ早いほどいい。

また、みなさんは、しっかり主治医を選んでください。
互いの相性もあるし、資質もあるし、、、、
しっかり信頼できる町医者を選んでください。
との、強いメッセージを発信された。

聴衆(ケアマネ)からの意見。
「娘のお姑さんが、倒れて病院に担がれた。
 病院では、痰吸引のための気管切開、
 食べられないから胃ろう増設のすすめがあり、
 これをしないと、殺人になりますよとの、説明を受けた。
 お母(お姑さん)さんは、延命治療を拒否されていたことは、
 息子さんもその娘さんも知っておられた。
 その旨を医師に告げると、その医師は、
 気管切開や胃ろう増設は延命治療に当たらない。と、説明した(!)

 困り果てて、かかりつけ医に、相談して、
 どちら(延命治療)もしないで家に帰りたいが
 どう思うか?と相談すると、かかりつけ医の先生は、
 できること(気管切開、胃ろう増設)しないと、新聞沙汰になりますよ、
 と説明した」

そのケアマネの方は、娘さんからの説明(医療現場の認識の間違い)に、
驚き、驚きをとおして笑いが出てしまったとのことであった。

これを聞いて、聴衆の中にいた、阪神淡路大震災で人生を捧げて
看護にあたられた黒田裕子さんが、強い口調で、
「医師や、看護師を育てるのは、市民です!
 みなさん、しっかり言葉にして疑問をなげかけ、
 おかしいことはおかしいと言い、
 どんどん学んで、医療や看護のおかしな点を正していきましょう」
と、メッセージを発された。

長尾先生の言葉。
「残念なことですが、今話された事が医療者の現実です。
 だから、僕はこうして講演などで、話しているんです。
 諦めや泣き寝入りをしないで、しっかりと発言し、
 医師を選んでいきましょう」

聴衆からの質問も多く、具体的で有意義なセミナーであった。
これまでブラックボックスだった医療が、徐々に利用者主体のものに
変わりつつある。
そのためには、利用者の学びや勇気が必要だ。

先生の講演と聴衆のやり取りを見ていて、
こうしたセミナーが、
市民がパワーをつけていく第一歩になるように思った。

介護も看護も、医療も、主権は利用者にある。
市民の厳しい目が、よい医療を育てる。
でも、これって、政治全般にも当てはまるよね。


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