北欧デンマークおばさんの独りごちブロ

「住み慣れた地域で最期まで」をテーマにデンマーク高齢者福祉を研究し、世界のこと・日本のことを独りごちっています。

民間健康保険の掛け金肩代わりで人気とり

2008-06-19 | デンマーク最新
王室の夏の宮殿があるフレーデンボー市が、市の職員に対して、
民間健康保険の掛け金の肩代わりを検討していることがわかりました。

6月23日の議会で検討されるようですが、これが可決されれば、
デンマークではじめての制度を取り入れた市(コムーネ)に
なるとのことです(copenhagen post)。

デンマークにおいては、医療・介護については税金で賄われており、
現在のところ原則無料となっております。
ならば、民間健康保険を掛ける必要などないではないか?
と、思われるかもしれません。

不思議に思い、デンマークの方に確認してみましたら、
カイロプラクティックを利用したり、
歯科治療(成人)には自己負担があるので、
民間の健康保険は必要だとのことでした。

足・腰・肩の痛みには、もちろん家庭医に相談しますが、
カイロプラクティックに通って改善することも
あるようです。
また、デンマークで手術をしようとすると待機リストが長くて、
なかなか手術を受ける事ができません。
それに輪をかけて、8週間にもおよぶ看護師のストがあります。
(急性期医療については、日本は本当にすぐれていると思います)
超お金持ちは、大枚をはたいて私立病院で治療してもらうようです。
(ごくごく一握りの話です)

そこで、医療費は原則無料のデンマークでも
民間の健康保険が必要になってくるわけです。

雇用主がこの民間健康保険を肩代わりすることは、
民間企業ではよく行われているようで、大きな魅力になっているようです。
フレーデンボー市としては、職員を引き止めておくためにも
このことは必要だと議論を始めたわけです。

つまり、施設介護や在宅介護の現場で働く職員は、
一部を除いて、そのほとんどが市の職員です。

一部を除いて、というのは、在宅介護においては
「自由選択」が始まっていますので、利用者は公共・民間の
どこからサービスを受けるか選ぶことができるのです。
デンマークでは、介護については長く公共の独占で行われてきたため、
「民間に依頼する」という意識が高齢者にもなかなか浸透せず、
民間企業からのサービス提供を選ぶ人の割合は伸びませんでした。

しかし、公共サービスの民営化はたしかに始まっており、
市が、派遣会社から看護師などの人材を派遣してもらっている
市も実際にあります。

もっとも公共色の強い介護の世界でも、民営化がすすんでいるのですから、
他の領域においては、想像にかたくありません。

ということで、この動きは、
公共(市)としても、民間と同様の就労条件を整備
しておかなければ、「よい人材が民間に流れしまう」という危機意識を
持ち始めた証拠といえます。

GDPの半分が税金に廻り、
GDPの約3分の1が社会保障につかわるデンマークは、
文字通りの「大きな政府の国」です。

でも、ひたひたどころか、確実に
民営化、市場競争の原理が押し寄せていることを感じます。

本日は、ちょっとまじめな話でした。


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