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給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手の対応方法

2015-06-23 | 日記

運送業を営む会社を経営していますが,給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。


 運送業を営む会社においては,給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手は珍しくありません。従来,こういった運転手にお金を貸し付けて給料から天引きして返してもらうことが多かったようですが,会社経営者のために労働問題を扱っている弁護士の目から見てあまりお勧めできません。
 一般論として,「友達にはお金を貸してはいけない。」「友達にお金を貸したら,友達ではなくなってしまう。」と言われるのには,それなりの根拠があるのです。お金を貸したら利害が対立してしまっていい関係でいるのは難しくなり,残業代 (割増賃金)請求等の紛争を誘発します。
 そもそも,お金を貸して欲しいと言って来る運転手は,お金にだらしなく,金銭面での信用がないのが通常です。通常であれば,家族にお金の工面を相談したり,銀行からキャッシングしたりすることができるはずですし,信販会社や消費者金融からキャッシングすることもできるはずです。消費者金融ですらお金を貸さない運転手に素人の会社がお金を貸したらどのような結末になるのかは,容易に予測することができます。
 退職するに当たり,貸したお金を返して欲しいと伝えたところ,借金を踏み倒す目的で残業代(割増賃金)請求を受けたというケースは珍しくありません。これでは,残業代(割増賃金)請求を誘発するためにわざわざお金を貸していたようなものです。
 法律的な話をすると,貸金の給料からの天引きは,賃金控除の労使協定を締結した上で,給料からの天引きによる返済を合意しておかなければなりません。私の知る限り,賃金控除の労使協定を締結している運送業を営む会社はごく一部に過ぎません。
 賃金控除の労使協定を締結せずに給料から天引きすることは労基法違反で無効ですし,天引きした金額を支払えと請求された場合には,貸金と相殺することもできず,いったんは支払わなければなりませんが,賃金を支払った後に貸金を返して欲しいと請求したとしても,無資力になっていれば回収することができません。多額の未払残業代(割増賃金)を支払わされたような場合には,会社からの支払を原資として貸金を返済してもらえることもありますが,このような結末を会社が望んでいたはずはありません。
 やはり,運転手に対してお金を貸すのは,できるだけ控えるべきだと思います。お金を貸してくれないなら会社を辞めて,他の会社に転職すると言われるかもしれませんが,転職されてしまったとしても,お金にだらしない運転手がいなくなってかえってすっきりしたと割り切るくらいの心構えが必要だと思います。
 どうしてもお金がなくて困っているというようだから何とか助けてあげたいというのであれば,給料日前に給料の一部を前倒しで支給することも考えられます。お金を貸すのではなく,給料を前払いするわけです。もちろん,上限金額は,1か月分の給料までです。1か月分の給料が上限では足りないというような話であれば,給料の前払いも,お金を貸すことも断るくらいがちょうどいいと思います。


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休日なしで長時間働いてお金を稼ぎたいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。

2015-06-23 | 日記

運送業を営む会社を経営していますが,休日なしで長時間働いてお金を稼ぎたいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。


 運送業を営む会社を経営していると,休まずにもっと働いてお金を稼ぎたい,働かせてくれなければ辞めて他の会社に転職する,などと言って来る運転手がいることに気づくことと思います。
 たくさん働きたいという意欲は素晴らしいのかもしれませんが,使用者には運転手の健康に配慮する義務(労契法5条)がありますので,本人が望んでいるからといって,恒常的な長時間労働を容認するわけにはいきません。ある程度までであれば,多めに運転させても構いませんが,度を超して働きたいという希望を押し通そうとする運転手については,断固として長時間労働を拒絶する必要があります。その結果,転職してしまうかもしれませんが,やむを得ない選択と腹をくくるべきでしょう。
 なお,時間外割増賃金は1日8時間を超えて働かせたときだけ支払うものではなく,週40時間を超えて働かせた場合にも支払う必要がありますので,週6日以上働かせた場合には朝から残業(時間外労働)扱いになり時間外割増賃金の支払が必要となる可能性があります。また,休日を定めなかった場合であっても,7日続けて働かせた場合には,7日目の日は法定休日として取り扱われることになりますので,休日割増賃金を支払う必要があります。残業代 (割増賃金)請求対策という観点からも,恒常的な長時間労働を抑制する必要があるところです。



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運送業を営む会社における労働時間管理のポイントを教えて下さい。

2015-06-23 | 日記

運送業を営む会社における労働時間管理のポイントを教えて下さい。


 運送業を営む会社の特徴は,トラック運転手が事業場を離れて運転業務に従事する時間が長いため,出社時刻と退社時刻の確認を除けば,現認による勤務状況の確認が事実上不可能な点にあります。したがって,出社時刻と退社時刻の確認をして運転日報等に記録させるのは当然ですが,経営者の目の届かない客先や路上での勤務状況,労働時間の把握が重要となってきます。
 特に問題となりやすいのは休憩時間の把握です。一般的には,運転手本人に運転日報等に休憩時間を記載させて把握するのが現実的対応と思われますが,運転手は,出社時刻と退社時刻については運転日報等に記録してくれるのが通常なのですが,休憩時間については運転日報等への記録を怠る傾向にあります。おそらく,出社時刻と退社時刻さえ明らかにできれば,自分の勤怠,労働時間の始期と終期が分かることから,休憩時間をいちいち書き込むモチベーションが働かないからだと思われます。
 しかし,運転手に必要な休憩を与えることは使用者の義務であり,所定の休憩を取得できていない場合には,休憩を取得することができるよう配慮しなければなりません。また,一般に労働時間はその日の出社時刻から退社時刻の間の拘束時間から休憩時間を差し引いて計算されますので,休憩時間を的確に把握できなければ労働時間を的確に把握することもできません。労働時間の把握は使用者の義務ですので,運転手が労働時間なんて興味がない,どうでもいいと言っていても,使用者は労働時間を把握しなければなりません。残業代 (割増賃金)請求訴訟においては,休憩時間を取っていたにもかかわらず,「休憩時間はほとんど取ることができていなかった。」と主張されることも珍しくはありません。会社経営者は,運転手本人が望んでいるかどうかにかかわらず,休憩時間を運転日報等にしっかり記載させ,休憩時間や労働時間の管理をしていく必要があります。
 具体的には,
 ① 運転日報等に何時から何時までどの場所(現場等)で休憩時間を取得したのかを記載する欄を設けた上で
 ② 休憩時間をしっかり記録するよう粘り強く指導していく
ことになります。
 ①については,簡単にできることですので,運転日報等に休憩時間の記載欄がない場合は,すぐにでも運転日報等の雛形を作り直しましょう。
 ②については,根気の勝負であり,会社経営者が注意指導を億劫がっていたのでは,いつの間にか運転手が休憩時間を記録しなくなってしまうことになりかねません。



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運送業を営む会社において見逃しがちな残業代(割増賃金)の趣旨を有する賃金を教えて下さい。

2015-06-23 | 日記

運送業を営む会社において見逃しがちな残業代(割増賃金)の趣旨を有する賃金を教えて下さい。


 運送業を営む会社においては,基本給は1日当たりいくらといった日当の形で支払われるのが通常です。
 休日労働の対価として「日当」が支払われた場合には,「日当」は通常の労働日の賃金ではありませんので,これを控除して未払残業代 (割増賃金)額を算定する必要があります。
 「月給25万円」といった通常の月給制を念頭に置いていると見逃しがちな点ですので,ご注意下さい。



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運送業において,配送手当,長距離手当,業務手当等の手当の支払は,残業代として認められますか?

2015-06-23 | 日記

運送業を営む会社において,配送手当,長距離手当,業務手当,特別手当等の手当の支払は,残業代(割増賃金)の支払として認められますか。


 運送業を営む会社においては,日当のほか,配送手当,長距離手当,業務手当,特別手当等の手当が支払われていることがあります。これらの手当の支払は,残業代 (割増賃金)の支払として認められるのでしょうか。
 まず,配送手当,長距離手当,業務手当,特別手当といった名称の手当は,その日本語の意味を考えた場合,直ちに残業代の支払と評価することはできません。これらの手当が残業代の支払と評価されるためには,最低限,賃金規程にその旨明記して周知させておくか,労働条件通知書等に明記して就職時に運転手に交付しておくなどが必要となります。「口頭で説明した。」では,勝負になりません。
 これらの手当が残業代(割増賃金)の趣旨で支払われていることが客観的証拠からは読み取れない場合は,新たに同意書,確認書等を作成したり賃金規程を変更したりして,これらの手当が残業代(割増賃金)の趣旨で支給されるものであることを明確にする必要があります。
 もっとも,配送手当,長距離手当,業務手当,特別手当といった名称の手当を残業代(割増賃金)の趣旨で支払う旨の規定があったとしても,裁判では,実質的には残業代(割増賃金)の支払として認められないと判断されるリスクが残ることは否めません。「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった名称であれば,実質的にも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当と認めてもらいやすくなりますので,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当は,できる限り「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった名称で支給すべきと考えます。



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運送業を営む会社において,残業代の趣旨を有する手当を支給する際の注意点を教えて下さい。

2015-06-23 | 日記

運送業を営む会社において,残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当を支給する際の注意点を教えて下さい。


 運送業を営む会社において,残業代 (割増賃金)の趣旨を有する手当を支給する際の注意点は,大きく分けて
 ① 残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当であることを明確にすること
 ② 残業代(割増賃金)とそれ以外の賃金とを明確に判別できるようにすること
の2つです。
 まず,①についてですが,当該手当が残業代(割増賃金)の趣旨を有することが明確でない名目となっている場合,当該手当の支払が残業代(割増賃金)の支払として認められない可能性が高くなります。残業代(割増賃金)には見えないような名目の手当を支給しながら,残業代(割増賃金)請求を受けたとたんそれは残業代(割増賃金)だと主張しても,なかなか認められません。
 「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった一見して残業代(割増賃金)であることが明らかな名目の手当を支給している場合には,それが残業代(割増賃金)ではないといった主張は滅多に出てきません。問題となるのは,「業務手当」「特別手当」「配送手当」「長距離手当」といった残業代(割増賃金)であるとは読み取れない名目の手当を支給している場合です。当該手当の全額が残業代(割増賃金)の趣旨を有することが労働条件通知書に明記してあったり,賃金規程に明記されて周知されていたりすれば,労働審判等になってもそれなりに戦えますが,そうでない限り,苦しい戦いを余儀なくされることになります。
 「業務手当」「特別手当」「配送手当」「長距離手当」といった名称の手当を残業代(割増賃金)の趣旨で支払う旨の規定があったとしても,裁判では,実質的には残業代(割増賃金)の支払として認められないと判断されるリスクが残ることは否めません。「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった名称であれば,実質的にも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当と認めてもらいやすくなりますので,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当は,できる限り「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった一見して残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当であることが分かる名目で支給すべきと考えます。
 次に,②についてですが,通常の労働時間・労働日の賃金と残業代(割増賃金)に当たる賃金を判別できるようにしておかないと,残業代(割増賃金)の支払があったとは認められません。例えば,単に,残業代(割増賃金)込みの賃金である旨合意しただけでは,残業代(割増賃金)の支払があったとは認められません。
「業務手当には30時間分の時間外手当を含む。」といった定めも,通常の労働時間・労働日の賃金と残業代(時間外割増賃金)に当たる賃金を判別するためには方程式を使って計算する必要がありますので,リスクが高いものと思われます。残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当は,基本給や何らかの手当に含むという形で支給するのではなく,項目を明確に分けて金額を明示して定めるとともに,給料日には給与明細書に金額を分けて明示して給与を支給すべきと考えます。
 まずは,残業代(割増賃金)に相当する金額が何円なのか,残業代(割増賃金)の金額についてははっきりさせて下さい。その上で,当該手当が実質的にも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨を有する手当であることを明確にするために,その金額が何時間分の時間外割増賃金,深夜割増賃金,休日割増賃金なのかを追加で明記するのであれば,より望ましいと考えられます。



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運送業を営む会社が残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高いのはどうしてだと思いますか。

2015-06-23 | 日記

運送業を営む会社が残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高いのはどうしてだと思いますか。


 運送業の運転手は従来,自営業者意識が濃厚な傾向があり,運転手のそういった傾向に対応して,運送業の会社経営者は残業代 (割増賃金)を支払わなければならないという意識が希薄な傾向にありました。運送業では,給料が「1日現場に行って来たら1万○○○○円」といった形で定められている会社が多く,労働者というよりは個人事業主に近い形で労務管理がなされている傾向にあります。昔からそのやり方で問題なくやってきたわけですから,多額の残業代請求を受けて大きな損失を被らない限り,なかなか制度を変更しようとはしません。簡単に言えば,脇が甘いわけです。残業代(割増賃金)請求を受けると強い被害者意識を持つ会社経営者が多い傾向にあるのも運送業の特徴です。
 他方で,最近では残業代(割増賃金)に関するトラック運転手の意識が急速に変わってきています。おそらく,「○○さんは,弁護士に頼んで○○○万円も残業代を払ってもらったらしい。」などと,トラック運転手同士で情報交換しているうちに,自分も残業代(割増賃金)が欲しくなるトラック運転手が増えてきたものと思われます。運送業では,長距離運転があったり,手待時間が長くなったりしていることが多いことなどから,労働時間が長くなりがちで,残業代(割増賃金)も多額になる傾向にあります。少額の残業代(割増賃金)しか取れないのであれば会社と争っても仕方ありませんが,何百万円といった多額の金銭を取得できるのであれば,会社経営者との関係が悪化したとしても残業代(割増賃金)を取得できた方がいいと考えるトラック運転手が増えるのもやむを得ないところがあります。何しろ労基法で認められた正当な権利を行使しているだけなのですから,「残業代を払わないできた会社が悪い。」と自分を納得させることができますので,良心の呵責も大きくはありません。
 運送業で残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高い一番の理由は,運送業の会社経営者が残業代(割増賃金)を支払わなければならないという意識が希薄な傾向にあるのに対し,残業代(割増賃金)を請求すれば多額の残業代(割増賃金)を取得できることを知って残業代(割増賃金)を請求する意欲が高まっているトラック運転手の意識のギャップにあると考えています。実態と形式にギャップがある状態は,残業代(割増賃金)請求の格好のターゲットとなります。残業代(割増賃金)を請求する運転手の立場からすれば,ガードを固めた会社と戦うのは大変ですが,脇が甘い会社であれば,大して難しいことをしなくても簡単に残業代(割増賃金)を取得できてしまいます。
 個人事業主に近い実態があるにもかかわらず,形式的には労基法上の労働者に該当することが多いことから,そのギャップを突かれて多額の残業代(割増賃金)の支払を余儀なくされているというのが実情に合致していると思います。



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定額(固定)残業代制度導入の手順を教えて下さい。

2015-06-23 | 日記

定額(固定)残業代制度導入の手順を教えて下さい。


 定額(固定)残業代 制度導入の手順は,以下のとおりです。
 ① 当該業務に通常必要とされる時間外・休日・深夜労働時間等の勤務実態を調査し,調査の経過及び結果を記録に残す。
 ② 調査結果に基づき,何時間分の時間外・休日・深夜労働に対する時間外・休日・深夜割増賃金を定額(固定)残業代として支払う必要があるのかについて協議決定し,記録に残す。
 ③ 「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」等,時間外・休日・深夜割増賃金の支払であることが明白な名目で定額(固定)残業代を支払う旨及び不足額があれば当該賃金計算期間に対応する賃金支払日に追加で支払う旨賃金規程に定めて周知させたり合意したりする。
 ④ 給料日には,「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」等,時間外・休日・深夜割増賃金の支払であることが明白な名目で,金額を明確に分けて給与明細に記載して支給する。



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使用者と社員が合意することにより,日当を1日12時間勤務したことの対価とすることはできますか。

2015-06-23 | 日記

使用者と社員が合意することにより,日当を1日12時間勤務したことの対価とすることはできますか。


 所定労働時間を1日12時間とすることはできませんが,「1日12時間勤務したことの対価」の意味が,「1日8時間の所定労働時間内の労働と4時間の時間外労働をしたことの対価」という趣旨であると解釈でき,残業代 (割増賃金)に相当する金額が特定されていると評価できるような場合であれば,このような合意も原則として有効と考えられます。ただし,このような合意の仕方は,何時間分の対価として賃金額が定められたのかとか,残業代(割増賃金)に当たる部分が特定されているのかという点について問題が生じやすく,細心の注意を払わないと,所定労働時間を12時間と定めたものであるとか,残業代(割増賃金)に相当する金額が特定されていないと評価されて,日当は8時間の所定労働時間内の労働の対価と認定され(労基法13条・32条2項),日当全額を基礎として計算された残業代の支払を余儀なくされるリスクがありますので,注意が必要です。
 日当が残業代込みの金額であるというためには,最低限,日当が12時間分の労働の対価であることくらいは,書面上明示しておく必要があります。1日何時間働かなければならないのか不明確なまま,「日当1万○○○○円」と定めただけでは不十分です。このような定め方では,労基法の労働時間の上限である8時間(労基法32条2項)の労働の対価と評価されてしまい,8時間を超える労働に対しては,別途,残業代の支払を余儀なくされることになります。
 日当が12時間分の労働の対価であることが書面上明示されている場合は,訴訟になってもそれなりに戦うことができると思いますが,そのような場合であっても,1日8時間の所定労働時間内の労働に対する賃金が何円で,4時間の時間外労働に対する残業代が何円なのかが,方程式を使って計算しないと判明しないような場合で,1日12時間を超えて働いた場合に不足額を追加で支払ったことが一度もないような場合は,労働者に残業代(割増賃金)に相当する金額が特定されていないとの主張を許すことになってしまうリスクが生じます。他方,1日12時間を超えて働いた場合に,その都度,残業代の不足額がきちんと計算され,追加で支払われているのであれば,リスクが低くなります。
 トラブル防止のためにも,1日の賃金額については,例えば,「(8時間分の)日当1万6000円,(4時間分の)時間外勤務手当1万円,合計2万6000円」といったように,1日8時間の所定労働時間内の労働に対する対価の部分と,残業代(割増賃金)に相当する金額とに明確に分けて一日あたりの賃金額を定めることをお勧めします。このように,1日8時間の所定労働時間内の労働に対する対価の部分と,残業代(割増賃金)に相当する金額とに明確に分けて賃金額を定めておけば,1日12時間を超えて労働した場合に不足する残業代の額を計算することが容易なため,多少問題があっても,全面的に敗訴するリスクは低くなるものと思われます。


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残業代込みということで基本給を支払った方が,社員募集の際に体裁がいいのではないでしょうか?

2015-06-23 | 日記

残業代(割増賃金)を基本給とは別に支払うよりも,残業代込みということで基本給を支払った方が,基本給の金額が高く見えて,社員募集の際に体裁がいいのではないでしょうか。


 それはそうかもしれませんが,残業代 は,残業代以外の賃金とは別に支払うべきものであり,残業代と残業代以外の賃金との内訳が判別できないと残業代の支払があったとは認められませんので,残業代不払を理由とした残業代請求を受けないようにするためには,残業代の金額と残業代以外の賃金の内訳を明らかにする必要があります。残業代の金額と残業代以外の賃金の金額を明らかにしてしまえば,結局,残業代を除いた基本給の金額がはっきりしてしまいます。
 採用された社員が騙されたと感じるような採用募集広告では,結局,すぐに辞めてしまって定着しませんので,正直にありのままの労働条件を説明し,正攻法で対処しないと,根本的な解決にはなりません。



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定額(固定)残業代の支給名目はどのようなものがいいでしょうか。

2015-06-23 | 日記

定額(固定)残業代の支給名目はどのようなものがいいでしょうか。


 定額(固定)残業代 を支給する場合は,基本給の中に一定の金額・時間分の残業代が含まれる扱いにしたり,営業手当等の名目で一定額を支給する扱いにしたりするよりも,「残業手当」「時間外勤務手当」「深夜勤務手当」「休日勤務手当」等,それが残業代であることが給与明細書の記載から直ちに分かるよう記載しておくといいと思います。残業代であることが明白な名目で支給することにより,労働者の納得も得られやすくなり,それが残業代の支払であるか否かといった論争を回避することができます。
 他方,残業代の支払かどうか一見して分からない名目で残業代を支給した場合は,それが残業代の支払であることを労働条件通知書,賃金規程等に明記して丁寧に説明しておかないと,労働者の理解を得るのが難しくなりますし,訴訟でも残業代の支払として認められないリスクが高くなります。当該手当が残業代の趣旨で支払われる手当であることを労働条件通知書,賃金規程等に明記することは最低限必要であり,口頭で説明したにとどまるような場合は,負け筋の論点となってしまいます。
 当該手当が残業代の趣旨で支払われる手当であることを労働条件通知書,賃金規程等に明記されている場合であっても,給与明細書にそれが残業代の趣旨で支給される手当であることが分かる形で記載するなどして労働者の理解を促しておかないと,残業代が不払いであると誤解されて労働審判 等を提起される可能性が高まりますし,事案によっては一定の敗訴リスクすら残ります。
 どういうわけか,残業代だと分かる形で賃金を支給するのを嫌がり,残業代とは分からないような名目での手当の支払の形を取りたがる経営者が,それなりの割合で存在します。残業代請求を受けると,「業務手当」「特殊手当」「特別手当」「配送手当」「長距離手当」などといった一見して残業代とは分からない手当が残業代だと説明するのですが,それらの手当が残業代だということが賃金規定や労働条件通知書に記載されているかどうか聞いてみると,どこにも記載されていないという答えが返ってくるケースは珍しくありません。かえって,賃金規程では,それらの賃金は基準内賃金に分類され,勤続年数や技能に対して支払われる手当との説明がなされていたり,残業代の計算式の基礎にも算入されていたりすることも多いところです。
 このような定め方をすれば,残業代の請求を受ける可能性が高くなりますし,訴訟でもこの論点では負けてしまうということを,よく理解しておくべきでしょう。



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月例賃金に占める定額(固定)残業代の比率は,どれくらいまでなら許されますか。

2015-06-23 | 日記

月例賃金に占める定額(固定)残業代の比率は,どれくらいまでなら許されますか。


 月例賃金に占める定額(固定)残業代 の比率と定額(固定)残業代の有効性との間には,論理必然の関係はありません。
 もっとも,脳・心臓疾患や精神疾患を発症した場合に,長時間労働を理由として労災認定がなされる可能性が高い時間外労働を予定するような定額(固定)残業代制度を採用すべきではなく,月80時間分の時間外割増賃金額を下回る定額(固定)残業代額にすべきと考えます。個人的見解としては,月例賃金に占める定額(固定)残業代の比率は,金額では月例賃金全体の20%~30%程度,時間外労働時間数では月45時間程度までに抑え,それを超える時間外・休日・深夜労働については追加で時間外・休日・深夜割増賃金を支払う定額(固定)残業代制度とすることをお勧めします。
 最低賃金との関係では,定額(固定)残業代部分は最低賃金算定の基礎賃金には含まれないことに注意して下さい。
 月例賃金に占める定額(固定)残業代の比率が高い会社は,社員の離職率が高く,労使紛争が起きやすく,定額(固定)残業代の合意等の有効性が裁判所により否定されやすく,労働組合などによる労働運動のターゲットとされやすい傾向にあることにも留意して下さい。



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固定残業代を採用した場合に追加で支払わなければならない残業代の金額を教えて下さい。

2015-06-23 | 日記

定額(固定)残業代を採用した場合に追加で支払わなければならない残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の金額を教えて下さい。


 定額(固定)残業代 の支払により使用者が時間外・休日・深夜割増賃金を支払ったと認められた場合は,当該定額(固定)残業代を含む除外賃金を除外した賃金を基礎賃金として労基法37条及び同法施行規則19条の計算方法で残業代(割増賃金)の金額を計算した結果,定額(固定)残業代の金額で不足する場合は,その「不足額」を当該賃金の支払期に支払う法的義務が生じることになります。
 定額(固定)残業代の支払により使用者が時間外・休日・深夜割増賃金を支払ったと認めてもらえなかった場合は,定額(固定)残業代も残業代算定の基礎賃金に算入されて残業代(割増賃金)が算定され,その「全額」を当該賃金の支払期に支払う法的義務が生じることになります。



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定額(固定)残業代の有効性を判断する際のイメージを一言で教えて下さい。

2015-06-23 | 日記

定額(固定)残業代の有効性を判断する際のイメージを一言で教えて下さい。


 定額(固定)残業代 の支払は,一定金額の時間外・休日・深夜割増賃金の支払がなされていることが明確であればあるほど,時間外・休日・深夜割増賃金の支払があったと認められやすくなり,時間外・休日・深夜割増賃金の支払がなされていることが分かりにくくなればなるほど,時間外・休日・深夜割増賃金の支払がなかったと認定されやすくなります。
 会社経営者は,普段は時間外・休日・深夜割増賃金とは分からない名目の手当等を支給した上で,残業代請求を受けた途端,当該手当は時間外・休日・深夜割増賃金だとか,基本給には残業代が含まれているだとか主張できるような制度設計を望む傾向にあり,こういった会社経営者の意向に迎合した賃金制度が散見されます。
 しかし,「いいとこ取り」しようとして,定額(固定)残業代の支払が時間外・休日・深夜割増賃金の支払だとは分かりにくくなればなるほど,時間外・休日・深夜割増賃金の支払があったとは認めてもらいにくくなり,多額の残業代請求が認められてしまうリスクが高くなることを理解しておく必要があります。



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基本給等の通常の賃金と金額を明確に分けた形式で割増賃金を支払う場合の固定残業代

2015-06-23 | 日記

基本給や他の手当等の通常の賃金とは金額を明確に分けた手当の形式で時間外・休日・深夜割増賃金を支払う場合の定額(固定)残業代は,どのような場合に有効となりますか。


1 賃金規程等の定め
 「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」等,時間外・休日・深夜割増賃金の支払であることが明白な名目で金額を明示して支給した場合は,通常は時間外・休日・深夜割増賃金の支払があったと認められます。
 他方,「営業手当」「管理職手当」「配送手当」「長距離手当」「特殊手当」等の一見,時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨で支払われる手当とは分からない名目で支給した場合は,当該手当が時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨で支払われる手当である旨定めた賃金規程等の定めがない限り,通常は時間外・休日・深夜割増賃金の支払があったとは認められません。


2 当該手当が実質的にも時間外・休日・深夜労働の対価(時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨で支払われる手当)であること
 「営業手当」「管理職手当」「配送手当」「長距離手当」「特殊手当」等の一見,時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨で支払われる手当とは分からない名目で支給した場合,当該手当が時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨で支払われる手当である旨定めた賃金規程等の定めがある場合であっても,実質的に時間外・休日・深夜労働の対価(時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨で支払われる手当)であるとは認められないとして,時間外・休日・深夜割増賃金の支払があったと認められないリスクがあります。
 例えば,営業手当はその全額を時間外割増賃金の趣旨で支払う旨の賃金規程の定めがある事案において,反対尋問において,「営業手当はどういった趣旨の手当ですか?」と労働者側弁護士から質問されると,「営業の精神的負担や被服・靴などの消耗品に対する金銭的負担を補填する趣旨の手当です。」等と回答しがちです。このような趣旨の手当では,時間外割増賃金の趣旨で支払われる手当とはいえないので,時間外割増賃金の支払があったとは認められなくなるリスクがあります。
 模範解答どおり,「時間外割増賃金の趣旨で支払われる手当です。」と回答したとしても,「営業手当の全額がそうなんですか?」「営業の精神的負担や被服・靴などの消耗品に対する金銭的負担を補填する趣旨も含むんじゃないですか?」等と尋問されると,これを否定するのはつらくなり,「基本的には時間外割増賃金の趣旨で支払われる手当なのですが,営業の精神的負担や被服・靴などの消耗品に対する金銭的負担を補填する趣旨も含んでいます。」等といった回答をせざるを得なくなる可能性があります。
 営業の精神的負担や被服・靴などの消耗品に対する金銭的負担を補填する趣旨と時間外割増賃金の趣旨とが混在する場合,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外割増賃金に当たる部分とを判別することができなければ時間外割増賃金の支払があったとは認められないと考えられますが,上記のような場合,営業手当のうち何円が営業の精神的負担や被服・靴などの消耗品に対する金銭的負担を補填する趣旨で支払われるもので,何円が時間外割増賃金の趣旨で支払われるものか分からないため,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外割増賃金に当たる部分とを判別することができないと判断されて,時間外割増賃金の支払があったと認められなくなるリスクが高いものと思われます。


3 通常の労働時間・労働日の賃金に当たる部分と時間外・休日・深夜割増賃金に当たる部分との判別可能性
 通常の労働時間・労働日の賃金とは金額を明確に分けた手当の形式で定額(固定)残業代 を支払う場合,当該手当の全額が実質的にも時間外・休日・深夜労働の対価(時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨で支払われる手当)であると評価できるのであれば,支給した時間外・休日・深夜割増賃金の額が労基法37条及び同法施行規則19条の計算方法で計算された金額以上となっているかどうかを容易に計算(検証)できるため,通常の労働時間・労働日の賃金に当たる部分と時間外・休日・深夜割増賃金に当たる部分とを判別することができます。
 全額が時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨を有する手当の「金額」さえ明示すれば,通常の労働時間・労働日の賃金に当たる部分と時間外・休日・深夜割増賃金に当たる部分とを判別し得るのですから,当該手当が何時間分の時間外・休日・深夜労働時間の対価か(時間数)を明示することは必須の要件ではないと考えます。
 ただし,当該手当が時間外・休日・深夜労働の対価であること(実質的にも時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨で支払われる金額であること)を明らかにするためにも,当該手当の金額が何時間分の時間外・休日・深夜労働を見込んで設定されたものかといった当該金額の算定根拠を説明できるようにしておくべきと考えます。
 また,労基法上の割増賃金には,時間・休日・深夜割増賃金の3種類があり,それぞれ時間単価が異なるため,当該手当と時間外・休日・深夜割増賃金との関係を明確に定義しておく必要があります。

 

4 定額(固定)残業代で不足額があれば当該賃金計算期間に対応する賃金支払日に不足額を追加で支払う旨賃金規程に定めて周知させたり合意したりすることが必要か
 定額(固定)残業代で不足額があれば当該賃金計算期間に対応する賃金支払日に不足額を追加で支払う必要があるのは労基法上当然のことですし,最高裁の法廷意見がこのような要件を要求したことはないのですから,定額(固定)残業代で不足額があれば当該賃金計算期間に対応する賃金支払日に不足額を追加で支払う旨賃金規程に定めて周知させたり合意したりすることは,定額(固定)残業代の支払により使用者が時間外・休日・深夜割増賃金を支払ったといえるための要件ではないと考えられますが,実際には,定額(固定)残業代で不足額があれば当該賃金計算期間に対応する賃金支払日に不足額を追加で支払う旨賃金規程に定めて周知させておくとともに,個別合意を取得しておくべきと考えます。


5 定額(固定)残業代の支払により使用者が時間外・休日・深夜割増賃金を支払ったといえるためには,「賃金支給時」においても支給対象の時間外・休日・深夜労働時間と時間外・休日・深夜割増賃金の額が労働者に明示されていることが必要か
 「賃金支給時」においても支給対象の時間外・休日・深夜労働時間と時間外・休日・深夜割増賃金の額が労働者に明示されていることは,定額(固定)残業代の支払により使用者が時間外・休日・深夜割増賃金を支払ったといえるための要件ではないと考えますが,実際には,通常の労働時間・労働日の賃金と区別されて時間外・休日・深夜割増賃金の支払がなされていることを明らかにするために,給与明細書においても,時間外・休日・深夜割増賃金の「金額」を明示すべきですし,支給された定額(固定)残業代が時間外・休日・深夜労働に対する対価であること(実質的にも時間外・休日・深夜割増賃金の趣旨で支払われる金額であること)を明らかにするためにも,当該金額が何時間分の時間外・休日・深夜労働を見込んで設定されたものかといった当該金額の算定根拠を説明できるようにしておくべきと考えます。



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