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「業務上の傷病」となるかの判断基準を教えてください。

2016-04-19 | 日記

「業務上の傷病」となるかの判断基準を教えてください。


 業務上といえるかは,実務上,①業務遂行性が存することを前提に,②業務起因性が認められるかどうかにあります。

① 業務遂行性

 その労働者の負傷等が事業主の業務を遂行しているときに発生したことが必要です。ただし,具体的な業務の遂行中であることまでは不要で,災害時に労働者が労働関係上において現に事業主の支配下にある中で発生すれば足りるとされています。

(1) 業務上の負傷の場合

 次の3つの類型に分類して検討していきます。

ア 第一類型の場合

 事業場内で作業に従事中に発生した災害

イ 第二類型の場合

 事業場内での休憩中や始業前,終業後に発生した災害

ウ 第三類型の場合

 事業場外労働中や出張中に発生した災害

(2) 業務上の疾病の場合

 労働者が事業主の支配管理下にある状態において疾病が発症することを意味するものではなく,事業主の支配管理下にある状態において「有害因子を受け」,疾病が発症することを意味します。

② 業務起因性

 業務と傷病等との間に条件関係(事実レベルの問題)があることを前提としつつ,両者の間に法的にみて労災補償を認めるのを相当とする関係があるかどうか(価値判断の問題)によって判断します(相当因果関係説)。

 言い換えると,業務又は業務行為を含めて労働者が労働契約に基づき事業主の支配管理下にあることに伴う危険が現実化したものと経験則上認められるかどうかによって判断していくとも言えます。

(1) 業務上の負傷の場合

ア 第一類型の場合

 原則として業務起因性が肯定されます。

イ 第二類型の場合

 労働時間中であれば業務起因性が認められる災害が,休憩中に発生した場合,事業上施設の不備・欠陥によって災害が発生した場合に限って肯定される。

ウ 第三類型の場合

 肯定されるケースが多いです。

(2) 業務上の疾病の場合

 労働基準法規則に対象疾病が列挙されています。

ア 対象となる疾病

 業務上の負傷に起因する疾病

 物理的因子(紫外線,赤外線など)による一定の疾病

 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する一定の疾病

 など

イ 認定基準

 行政通達の形で認定基準が示されていて,この基準が満たされた場合には,特段の反証のない限り「業務上の疾病」と認められます。

 例えば,過労死との関係では「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平13.12.12基発1063号)があります。


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