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休職期間満了後の労働者が復職したいと言っているが休職前の職種で復職することは困難な場合の対応

2016-04-19 | 日記

休職期間満了後の労働者が復職したい(できる)と言っていて,仮に休職前の職務では難しいのであれば別の職種で復職したいと言っています。使用者としては休職前の職種で復職することは困難だと考えています。この場,労働者の申入れどおり,別の職種で復職させる必要があるのでしょうか?


1 復職の可否の判断の仕方

 裁判上は,その労働者に職務限定があるかどうかで判断の仕方を分けています。

 そして,休職期間満了時のその労働者の客観的な傷病の回復状況によって判断すべきとされています。

(1) 職務限定がある場合

 復職の要件である「治癒」(=休職事由の消滅)とは,従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したことを意味するとされています。すなわち,その特定された業務を支障なく遂行できる状態になっているかが「治癒」したかどうかの判断基準といえます。

(2) 職務限定がない場合

 次の最高裁判例が参考になります。

 「労働者が,職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては,現に就業を命じられた特定の業務について労務提供が十全にはできないとしても,その能力,経験,地位,当該企業の規模・業種,当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ,かつ,その提供を申し出ているならば,なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。」

 地裁などの裁判例は,この最高裁判例を踏まえて,労働者側と使用者側からの具体的な事情を考慮し,労働者の従前の業務に限定せず,使用者側で配置可能な業務を広く見出して労働者に対してそれを提示すべきあるとしています。その上で,労働者の健康状態が回復して通常程度に遂行可能かどうかを判断する「職務」とは,限定された従前の職務にとどまらず,その配置可能な業務全般と解するべきであり,その業務の内容や不可等に照らして,復職可能かを判断すべきとする傾向にあります。

(3) 貴社のケース

 貴社のケースでは,労働者の職種限定の有無を確認したうえで次のように検討することになります。

Q その労働者は職務が限定されていたか

A 回答

ア 限定→その業務を支障なくできるまで回復したか

(ア)肯定→復職の方向へ

(イ)否定→退職の方向へ

イ 非限定→①その業務を支障なくできるまで回復したか

(ア)肯定→復職の方向へ

(イ)否定→②配置可能な他の業務があるか(労働者の申し出があるか)

   ある→復職の方向へ

   ない→退職の方向へ

2 復職要件が満たされなかった場合

 就業規則上,その労働者が自動退職になるのか,解雇 になるのかを確認する必要があります。

 一般的には,「休職となった者の休職期間が満了し,休職事由が消滅しないときは休職期間をもって退職とする。」という就業規則が考えられます(定めるだけでなくその労働者にこの定めを通知しておくことも重要です。)。

 この点,「解雇とする」という規定であれば,解雇手続(解雇予告手当の支払など)を実施する必要が生じるので注意してください。


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