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採用した労働者のパフォーマンスが低く期待外れとなってしまった場合の,解雇の可否の検討方法

2016-03-29 | 日記

労働者を採用したのですが,そのパフォーマンスが低く,期待外れとなってしまいました。この場合の解雇の可否の検討方法を教えてください。


 回答を先に申し上げると,その労働者の職務内容,労働者の能力不足の程度,改善の余地,配置転換の可否などを総合的に検討していくことになります。以下,詳説していきます。

 ご質問のケースは,類型的にみて能力不足を理由とする解雇といえ,以下,FAQ531 で説明した普通解雇 の検討手順(①解雇 の客観的合理性に絞って)に沿ってみていきます。

 解雇事由の特定

 就業規則に能力不足を解雇事由としている条項があるかどうかを確認します。

 たとえば,「業務遂行能力,勤務成績が劣り,または業務に怠慢で向上の見込みがないと認めたとき(解雇する)」という条項が考えられます。なお,ここで「著しく劣り」というような規定にしていると,どのような場合に「著しく劣る」といえるのか問題になるおそれがあるため,このような形容詞はいれないほうが良いでしょう。

 将来的予測の原則に基づく検討

 第一に,労働契約上,その労働者に求められている職務能力の内容を検討します(専門的能力が求められているか,責任の重い管理能力が求められているか)。

 第二に,その職務能力の不足が,労働契約の継続を期待できないほど重大なものであるかを検討します。この検討は客観的総合的に行うべきものであり,使用者の主観的な評価(人事考課)は,一資料にとどまります。

 最終的手段の原則に基づく検討

 客観的にみて,使用者にそれでもなお,雇用の義務を負わせることができるか,これができる場合には期待可能な解雇回避措置として考えられる方法及び使用者がこれを尽くしたかを検討していきます。

 この点,裁判例には,会社が人事考課の相対評価が下位10%未満の従業員を「労働能率が劣り,向上の見込みがないと認めたとき」と定められていた就業規則に基づいて解雇した事案につき,主に次の二点を指摘して解雇を無効にしたものがあります。つまり,相対評価の人事考課から直ちに労働能率が劣っているとは言えないこと(),指導により能力向上を図る余地や配置転換による雇用維持の努力をしていなかったこと()を指摘して,解雇を無効にしました。

 これらの検討を経てはじめて①解雇の客観的合理性の判断ができます。

 ①が肯定された場合には,さらに②解雇の社会的相当性(FAQ531 )の検討に続きます。


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