弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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S市事件大阪高裁平成22年7月7日判決(労経速2081-28)

2010-11-15 | 日記

本件は,S市職員であった控訴人が,S市長から①自動車を酒気帯び運転し,進行方向道路脇に駐車していた車両と,反対車線路肩に駐車していた車両の合計2台と接触事故を起こし,②その報告を怠ったとして,平成20年4月30日付けで懲戒免職処分を受けたため,同処分には事実誤認(上記②の事実)があり,また控訴人に認められる情状を踏まえると重きに過ぎるとして,被控訴人に対し,その取消しを求めた事案です。

原審は,控訴人には上記②の報告義務の懈怠が認められるが,その事実をもって控訴人の責任が大きいとまでいうことはできないとしたものの,上記①の非違行為の状況等を踏まえると,上記懲戒免職処分には裁量権の逸脱濫用はないとして,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴しました。

控訴審は,原審判決で示された理由を基本的に肯定し,控訴審でなされた主張についても排斥して,控訴を棄却しました。

妥当な結論だと思います。

この判決を読んで私が思ったのは,同じことを民間企業の社員がした場合,懲戒解雇して有効となるかどうかという問題です。

果たして,民間企業の解雇についても,これと同じ程度の「裁量権」を認めていると言えるでしょうか?

弁護士 藤田 進太郎

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テレビ朝日ほか事件東京地裁平成22年5月14日判決(労経速2081-23)

2010-11-15 | 日記

本件は,原告らの子であるFが,被告らの関与していたテレビ番組についての制作業務を請け負ったところ,被告らの安全配慮義務違反により,過重な労働に従事させられた結果,くも膜下出血により死亡するに至ったとして,原告それぞれが,被告らに対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として,連帯して5531万2799円及びこれに対する訴状送達日の翌日(不法行為との関係では不法行為日の後の日)である平成20年1月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。

本判決は,まず,被告らが安全配慮義務を負っていたかについて検討し,「被告らについては,Fを雇用していたとも,実質的に使用従属させていたとも認められないから,Fの業務に対する従事状況を積極的に把握するなどして,これらが過重にならないように配慮すべき義務を負っていたものとは認められない。」として,これを否定しています。

これだけでも結論が出ているわけですが,「念のため」,本件業務とFの死亡との因果関係についても検討し,「Fが,高血圧であったとしても,本件業務が,これを増悪させ,さらには脳の動脈瘤を破裂させ,くも膜下出血を引き起こしてFを死に至らしめるほど,精神的・肉体的に過重なものであったとは認めるに足りないから,その死亡が,本件業務により惹き起こされたとはみとめられない。」として,因果関係を否定しています。

この事案を読んでいると,日本が訴訟社会になりつつあるのが感じられます。今後,司法試験合格者増大と相まって,ますます訴訟が増えていくことでしょう。

弁護士 藤田 進太郎

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労働問題FAQ 改訂

2010-11-15 | 日記

労働問題FAQを改訂しました。

 

労働問題FAQ

 労働問題の弁護士相談(使用者側)においてよくある質問に関し,回答集を作成しました。
 労働問題の予防解決のために役に立つ回答内容になるよう心がけたつもりですが,FAQというものの性質上,回答内容が個別の事案にそのまま当てはまるとは限らないという点についてご留意いただきますようお願いします。
 労働問題について弁護士の踏み込んだアドバイスが必要な場合は,四谷麹町法律事務所(東京)労働相談(使用者側限定)を電話予約していただきますようお願いします。

四谷麹町法律事務所
所長弁護士 藤田 進太郎

Q1
正社員の解雇が有効となるには,どのような要件を満たす必要がありますか?
Q2
普通解雇・懲戒解雇において,解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として,どのような事情を立証すればいいのですか?
Q3
整理解雇において,解雇権濫用の有無を判断する具体的事情としては,どのようなものが考えられますか?
Q4
懲戒解雇を行うにあたり,特に注意すべき点はどのようなものですか?
Q5
懲戒解雇事由と普通解雇事由が両方ある場合にした解雇の効力は,どのようなものになりますか?
Q6
試用期間中の正社員の本採用拒否(解雇)をする場合,どのような点に注意する必要がありますか?
Q7
配転命令を拒否した正社員を解雇することはできますか?
Q8
有期雇用労働者との間の雇用契約を終了させる際には,どのようなことに注意する必要がありますか?
Q9
解雇・雇止めをした場合,労働審判・訴訟などにおいて,使用者はどのような請求を受けることが多いのでしょうか?
Q10
辞めさせたい正社員がいる場合,どのように対処すればいいのでしょうか?
Q11
労基法上,使用者が割増賃金(残業代等)の支払義務を負うのはどのような場合ですか?
Q12
労基法上,月給制の正社員に関する割増賃金の金額は,どのように計算することになるのですか?
Q13
終業時刻を過ぎても退社しないままダラダラと会社に残っている社員がいる場合,会社としてはどのような対応をすべきですか?
Q14
使用者と社員が合意することにより,以下のような定めをすることはできますか?
Q15
管理職には残業代を支払わなくてもいいのでしょうか?
Q16
労災保険給付がなされれば,使用者は,労働者から損害賠償請求を受けずに済むのでしょうか?
Q17
業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷に関し,使用者が負う安全配慮義務の具体的内容はどのようなものですか?
Q18
身体に対する加害行為を原因とする被害者の損害賠償請求において賠償額を決定するに当たり,損害の発生又は拡大に寄与した被害者の性格等の心因的要因は考慮されますか?
Q19
アスベスト(石綿)に関する過去の知見,規制は,どのようなものだったのですか?
Q20
アスベスト(石綿)の危険性に対する予見可能性,使用者の安全配慮義務の程度は,どのようなものですか?
Q21
アスベスト(石綿)に関する安全配慮義務違反の具体的事実としては,どのような事項が検討されるのですか?
Q22
労働審判制度の主な特徴はどのようなものですか?
Q23
労働審判の申立て件数,審理期間,紛争解決実績はどうなっていますか?
Q24
労働審判を申し立てられた場合における,使用者側の主な注意事項はどのようなものですか?
Q25
労働審判手続において調停が成立しなかった場合は,どうなるのですか?
Q26
「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なくて拒むこと。」(労働組合法7条2号)は,不当労働行為の一つとして禁止されていますが,「使用者」とは雇用主のみを指すのですか?
Q27
「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なくて拒むこと。」(労働組合法7条2号)は,不当労働行為の一つとして禁止されていますが,「労働者」とはどの範囲の者を指すのですか?
Q28
使用者が団体交渉に応じているにもかかわらず,団体交渉拒否と評価され,不当労働行為となることもあるのですか?
Q29
団体交渉が行き詰まった場合は,団体交渉を打ち切ることができますか?
Q30
労働組合による街宣活動が違法と評価されるのは,どのような場合ですか?

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