
2018-1103-man2991
万葉短歌2991 たらちねの2803
たらちねの 母が飼ふ蚕の 繭隠り
いぶせくもあるか 妹に逢はずして ○
2803 万葉短歌2991 ShuF594 2018-1103-man2991
□たらちねの ははがかふこの まよごもり
いぶせくもあるか いもにあはずして
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第28首。男。
【訓注】たらちねの(垂乳根之)。飼ふ蚕(かふこ=養蚕)[下記注]。繭隠り(まよごもり=眉隠)。いぶせくもあるか(下記注)。妹(いも=異母)[下記注]。
【編者注-蚕】集中2か所に、同型で登場する。12-2991垂乳根之 母我養蚕乃 眉隠(たらちねの ははがかふこの まよごもり)、13-3258(長歌)帯乳根笶 母之養蚕之 眉隠(たらちねの ははがかふこの まよごもり)。
【依拠本注-いぶせくもあるか】原文「馬声蜂音石花蜘■荒鹿[■:(偏)虫+(旁)厨]」は『万葉集』の代表的な戯書の一つ。「馬声」はイ、「蜂音」はブと言ったのでこの用字がある。「石花」は海浜の岩石に付着している貝、「せ」(かめのての類という)の形状による表記(03-0319「せの海」参照[奈麻余美乃 甲斐乃国 ・・・ 石花海跡 名付而有毛(なまよみの かひのくに ・・・ せのうみと なづけてあるも)])、「蜘■」は虫のクモであり、「荒鹿」は山野の鹿(か)をいう。
【依拠本注-異母】一首の相手が異母妹であることを示すものか。母さえ違えば、当時の男女は結婚できた。用例は集中これ以外にはない。