演劇知

劇的考察譚

lab~六識~役者考察とは4

2015-11-30 23:27:48 | Weblog


打ち上げラストに撮った写真。この期の入り乱れ様。今回の公演を物語っている。



徳田雄士
我らが徳ちゃん。前出演作「亀井戸」では徳ちゃんの良さを引き出せなかった。今回出演にあたっての事前アンケート、どんな役やりたいですかに対して「いっぱいでたい」というQ&Aが噛み合わない返答をいただき、それならばと最多の三本に出演していただく。が、その代償として12時間稽古という苦行を味わうこととなるのだが…年長者組ということで自ら引っ張っていかねばという想いがあったようだ。コメディースターとして多くの笑いを取る。各作品のダイナモ的存在。松井花音との刑事コンビは魅入ってしまう。

佐藤凌
まずは照明として様々な知識、技能を教授いただく。加えて後進の育成にも尽力いただき、ただただ感謝しかない。本来夜帯が出演出来ないとのことでわたしとの ダブルキャストであったが調整してくれたようで全回出演となる。なお当初の予定だと土曜のみわたしが全回に出演するというとんでもない現象が起きる予定だったのでとても助かった。「抜き」の役者さんなので伍識の霧ヶ丘は苦労していたように見える。参識の釈迦も一発ギャグ含め苦労していたように見える。ノリ打ち照明含め苦労をかけまくった。鉄板ネタ「シャッカマン」を最後まで取っておく野心家。

西澤大
忙しい中毎回出演くださるベテラン勢トップ。彼が出演することで金にがめつい清澄が再登場し「金→水」の思考から弍識は生まれた。土曜日不在のためわたしとダブルキャストとなる。わたしは食ってやろうという気概で演じたが、翌日の西澤さん、弍識の清澄を完全に仕上げてきて圧倒的な存在感を見せつけた。ただただ凄い。大人の力を見せつける。稽古初日、場所を間違いタクシーですっ飛ばしてくるという大人の力を見せつける。博士役ではNo.01演じる利根川美百に己の尻しばきの指導をとてもとても熱心に、それは熱心に行っていた。

渡辺裕之
噛み倒した。精進します。



役者考察終わり。

lab〜六識〜役者考察とは3

2015-11-29 16:01:37 | Weblog



小屋入り後、差し入れとしていただいた水羊羹。鵜飼さんお手製。非常に美味しかった。裁縫でもお世話になった。プロトの歴史にその技術を残した。わたし、年齡に関係なく己に出来ないことが出来る人間を尊敬している。音楽や照明や制作、尊敬する子が沢山だ。

役者考察その3

高田明美
多くの外部活動をしている子。その熱意を買い伍識では先輩陣と共に文芸部三幹部の一人にする。参識のつつじは稽古場で見せた独特の台詞回しから、長文を句読点つけずに読むという怪演が生まれた。

鵜飼優
多くの先輩陣の心を掴む愛されっ子。しかし役での「愛され」に随分悩んでいた様子。伍識の氷川では熱量を上げた演技という新たなジャンルにも挑戦してもらった。誰よりも扇子を使いこなしていた。

内田有美子
本人は望んでおらず、また意図していないのだが、皆が認める怪演が出来る素晴らしい子。彼女が稽古にいるいないで全体のトーンが変わる。また参識で見せた切ない振り返りは今回お気に入りのシーンの一つ。

塩澤萌
声に特徴ある。参識ではナビゲート役に据える。突如リクエストされた藤娘に困惑していたが演技に己から溢れるものを乗せてもらいたかったから。テンション上がると突如としてタメ口になるのが面白い。

篠原あみ
この子も声に特徴ある。地声が太いのだ。「尊い!」の台詞は彼女のものとなった。毎回変わる高見歩留との雑談は密かな楽しみ。佐藤凌の尻を叩くのに苦労していた。前説ジュリエットは自主稽古の成果がちゃんと現れていたよ。

樋口沙也夏
陸識のインプロシーンでは毎回見事な話の切り出しを見せてくれ、その度にわたしは切り替え上手と声を発していた。ストップシーンではどこまで顔を近づけられるか、わたしは限界に挑んだ。ごめんね。金町の散り際が美しい。

見内萌恵
この子も陸識のインプロシーンで素晴らしい独創性を見せてくれた。本番もっと喋って欲しかったなぁ。歌いたいという事前アンケートにより前説の歌が生まれる。本人の意とするところではないだろうが、そんなことは百も承知だ。

山谷早帆子
以前から見せていた曲者感より神の御子の一員となる。恐らく神の御子を引き継ぐのは菊川だろう。伍識では高田明美とのコンビネーションを本番直前に完成させた。あと蜜柑ばらまき過ぎ。

吉田麻里子
普段女性は女性役として書くのだが本人の希望を尊重し男性役を充てる。むつきの一発ギャグ、腸ドロドロは修行の一環。これもやはり演技に己から溢れるものを乗せて欲しかった。チョンマゲもげるが好き。


続く。

lab〜六識〜役者考察とは2

2015-11-28 17:12:56 | Weblog




稽古中体の硬さを確認し合う二人。さながらティディベアの兄妹。当社比として柔らかい加藤さんにもしてもらう。稽古合間の癒しのワンシーン。こういうの好き。


役者考察その2

高見歩留
卒業以来の本当にお久しぶりの方。呼びかけに応え集ってくれた。感謝。すっとぼけの表情が大変素晴らしく稽古場でも本番でもとても笑わせてもらった。終演後日誌にもあったその経験から、弐識では実にリアルに演技が出来ていたと思う。甲良の心の声、物語終盤の叫びに彼女の内に潜む狂気を見い出した。

剣持弥生
「とにかく忙しいけど演技がしたい」という無茶を通すべく尽力。蜘蛛はただそこにいるだけのマスコットキャラになってしまったが、彼女が本来持つ雰囲気もあるのだろう、多くのお客様から愛された。共演者の内田板橋も愛した。「とにかく忙しいけどダンスがしたい」という無茶も通すべく尽力。その独特な足さばきがなんか可愛らしかった。陸識のぶっ込み隊長。

渡邉彩弥加
この人も本当に久しぶりの方。集まってもらったというよりも力を貸してもらったという方が正しいだろう。桜は今回のメンバーで彼女が最も適しているだろう。共演レポーターをけなすシーンがあるのだが「己の言葉で」とリクエストしたところ、本番で終わらないんじゃないかと思うくらいけなし倒す。しかもアドリブにもかかわらず一回も噛まないという強者。参った。陸識のランドセルは今回のメンバーで彼女が最も適している。

有村凌雅
出演するか否か迷っていたところを強引に引きずり込んだ。学生時代の演技に向かう真摯さと卒業後の情熱を知っていたからだ。人外に「なる」という気概、無い物を己から産み出す覚悟、参加してもらって本当に良かった。また音響補佐として存分に甘えさせてもらった。わたしが舞台に上がれたのは彼のおかげ。内田板橋とのマッチアップは素晴らしい相乗効果だった。皆から愛されるボーイ。


加藤ゆうみ
前作では彼女の魅力をわたしが全く分かっていなかった。今回参加してもらえるということでそれまで見てきた彼女の演技を全面に出すべく充て書き。しかし陸識で配役シャッフルで彼女の新たな魅力を見ることとなる。メイドも声低い刑事も出っ歯刑事も悉くはまっていた。先輩陣もその成長に驚く。己の力量の低さを思い知らされる。まだまだ彼女の魅力を引き出したい。

利根川美百
今回役者参加を募った際にいの一番に連絡をくれたナイスガール。周囲への気遣い、役作りの姿勢、演出への調整、どれをとっても素晴らしく先輩陣からも一目置かれる。おおくまたかはるとのマッチアップは素晴らしい相乗効果だった。靴のゴム部でおじさんの尻を思い切りしばくという演出にもちゃんと応えてくれた。


続く。

lab~六識~役者考察とは1

2015-11-26 10:44:01 | Weblog


稽古場に行く道すがら突如として始まった「ケーキを買う買わないで揉める家族」エチュード。普段ならこういうのには参加しないのであるが、思わずノッてしまう。その時に感じた




あ、家族っていいなぁ




という切なる思いが今も忘れられず。あぁ独り身の侘しさよ。このエチュード、揉めた原因のケーキ屋の名を取り「劇団KIHACHI」と心中創立していたが即解散






続いて役者考察。思ったことをつらつら書きます。

○すはらゆうこ
現場経験の多い彼女に今回の公演概要(もっぱら待機状態)を説明するのが本当に申し訳なかった。しかしそれでもやはり出ていただきたかった。これまで彼女の役は悉く人外のモノであった。しかし今回赤城、No.4を充てたのはドラマパートの根底をしっかりと担う人間を演じて欲しかったからである。そして本人から「宣伝出来る役で」というオファーをいただいたからである。確かに前作品の役「婆からの橋姫」は宣伝しようがないよな…
赤城に関しては従来彼女から醸し出る小物感は身を潜め、隊のリーダーとして確かにそこに居た。なお、彼女の役は致死率の高さで有名。今回もやっぱり逝ってしまった。

○やまだあいこ
冷静で静かな役を充てようと当初より思っていた。結果それがNo.2という役になるのだが、こちらの要望通り対応していただけた。内なる演技、表にダダ漏れしない演技を感じていただきたかったのだけれどもどうだったであろうか。蛎殻に指示を与えなかったのはそのままで良いと思ったから。基本現場での指示はリクエストなので、それでよければ特に手は加えないのです。吉野家で働く「野毛」が仮にそのスキルで周りの家族と闘った場合どうなるかという質問受けたが、恐らく牛丼食べて火事場のクソ力を出すというキン肉マンの闘いであっただろうなと思った。

○内田板橋
出演することに悩んでいたが口説き落とした。結果それが彼の今後にとって素晴らしくプラスに働くのではないかと願いも込めて思うのである。当初荒木という役は戦力分配の関係でおおくまたかはるに充てていたが、推敲時に「これ内田板橋がやった方がハマるな…」という想いで内田板橋として書き直す。柳役の有村凌雅とのコンビネーションを見て修整して良かったと思っている。台詞「次は俺達梶井会だ!」は今公演屈指の台詞。年長者の自覚を持ち、ムードメーカー、お兄さんポジションとして今公演を引っ張っていってくれた。

○おおくまたかはる
当初麹町という役は戦力分配の関係で内田板橋に充てていたが、推敲時に「これおおくまたかはるがやった方がハマるな…」という想いでおおくまたかはるとして書き直す。千歳役の利根川美百とのコンビネーション、共に「神の御子」へと進んでいくその姿を見て修整して良かったと思っている。ここ最近、芝居へ真摯に立ち向かう決意をしたようで、その姿、演出からのリクエストに瞬時に応えるその姿勢は後輩たちに良い影響を与えたことであろう。一発ギャグマシーンとしても気合を見せてくれた。

○片桐瞳
「稽古時間が取れないが出たいです」という熱意を持ち参戦。結果20時半~21時のみ稽古場にいるという30分お化けとなる。わたしとの掛け合いでなんとか対応しようと思い勝島というパートナー役を充てたのだが30分お化けとスタッフ作業てんてこまいのわたしとでは稽古時間の確保が出来るはずもなく、本番大丈夫かと非常に不安になった。が、新垣結衣を意識したと自負する勝島の演技に大変助けられた。赤城の後ろから顔をのぞかす山吹の表情は往年の鬼を髣髴とさせた。

○松井花音
終演後日誌にも書いてあったが彼女の決意が今公演の引き金の一つとなった。とにかく色々なことを色々な面を見て欲しいということでジュリエットからインプロまで縦横無尽に活躍していただく。学生時代には見られなかったコメディエンヌの才能が開花したのはその後の人生のおかげであろう。稽古場で見せた七変化は横で見ていた内田板橋も感嘆する素晴らしさ。いつかまたその姿を見たいものだ。
パリスとして死すわたしの顔に短剣で命を絶ったジュリエット松井のお尻がぶつかった瞬間、パリスはちょっと生き返った。

○MaraShI
こちらの方も「稽古時間が取れないが出たいです」という熱意枠の人。が、時間割いていただけたようでしっかり稽古出来ていた。薬王寺の妻という飛び道具を充てたがこれまでにない素晴らしい爆発力を見せてくれた。「人参は~」のくだりはどの回も満遍なく笑いがとれていた。これは凄いことなのですよ。また本番に仕上げてきたNo.5の狂気は大変素晴らしいと思った。仕上げる代償として失われた「声の大きさ」がキチンと録画出来てることを願うばかりである。


続く

lab~六識~製作ノートとは

2015-11-24 23:59:32 | Weblog


写真は梱包四天王。小道具をわたしの家に送るべく箱詰めしてくれた。そのテトリス全消し的なテクニックには舌を巻く。


恒例の振り返り。lab~六識~まずは製作ノート。


今年3月に行われた17期修了公演。打ち上げのサイゼリアからの帰り道、この子達とact orchとを繋げたいと思う。しかしこのact orch、やるにはとにかく根気、気力、体力を要し確実に寿命が縮む。なかなか重い腰が上がらず。加えて諸事情有りで夏まで全く時間取れず。

その後幸か不幸か秋にポッカリと時間が出来る。何かやるかと思案はしていたがそれでもact orchという事業に対しては重い腰が上がらず。我が団体多少婦人の話もあったのでそちらをやろうかとも思っていたが、ここで子の2つのツイートを見る。1つは「人生最後の芝居になる」という演劇を断つ決意の言葉。もう1つは「エチュードとか芝居とかやりたいです。」という演劇から離れた人間の戻りたい趣旨の言葉。この2つがガチっと噛み合い「ならもう一度やろうじゃないかっ!」とようやく腰が上がる。なお余談であるが、打ち上げ時わたしの大入り袋を渡してくれたのがその2人のうちの1人だったのがなんとも趣きがあるではないか。

腰が上がったのが9月上旬。秋にはやらねばということで11月に時期を設定しそこからキャスト招集、会場決定、予算組み、稽古場確保、脚本執筆の怒涛の流れが始まる。キャスト招集は「そもそも誰も集まらなかったらどうしよう」、「というかツイートした2人が参加しなかったらばどうしよう」という一抹の不安があったものの蓋を開けると20人程集まった。そこから更に数名口説き落とし、結果26人もの人間が集まってくれた。本当に感謝。


毎回の劇場であるjoyjoyが使えずプロトシアターを押さえる。雰囲気はまさにact orchにうってつけ。しかし果たして大人数のact orchキャストが全員入るのかという楽屋事情に不安を覚える。が、



まぁなんとかなるか


で強行決定。(しかし結果なんとかならず様々な問題が起こるのだがそれはまた別の話で)


脚本執筆。「インスタレーション」というやりたいことは明確であったので、演目ルール(五感+第六感)はすぐ決まる。しかしここからが大変であった。「インスタレーション」としても「芝居」としても成立させるということがこれほどまでに難しいとは…


○壱職…視覚
鍾乳洞の話。以前から温めていたネタ。観客が照明となる今公演最大のインスタレーション。SST(ソリッド・シチュエーション・スリラー)というわたしお得意の内容でありすぐに脚本が書けた。しかし前回執筆からブランクあり鈍っていたのであろう、すはらさんをレポーター金町の親且つ逃亡中詐欺師というなんかよく分からない役で充て書きしすぐに展開に詰まったので全て書き直した。


○弐職…味覚
何を飲んでいただくかで悩む。お茶という候補もあったが宗教、人肌、羊水、原始、というテーマから塩水となる。宗教というキーワードと出演者西澤大さんとが結びつき歴代作品に出てきた「神の御子」を再々投入。テーマソング(第九)、ポーズ(ストゥーパ)に続き今作品では「神の御子」のシンボルが出来る。この作品もすぐに書けた。

○参職…触覚
「踏む」というのは決まっていた。役者に何を踏ませるかとダイソーを歩き回っていたところ目についたのがステンレスたわし。そこから賽の河原の小石を思いつき、芥川龍之介「蜘蛛の糸」をオマージュした作品となる。こちらもわりとすぐに書けた。本当は親と子どもの職業スキルを使い戦いを展開していくという流れであったが時間の兼ね合いで割愛。なお割愛しなかったらば間違いなく武士が最強

○肆職…聴覚
同じ台詞を違うシチュエーションで話したらば聴こえ方は変わるであろうかというコンセプトのものと執筆。なるべく両極端のシチュエーションがいいなとコメディとSSTのシーンとなる。先にコメディパートから書いてしまったのでSST部分で苦労することとなる。書くのはストーリーラインというよりも言葉の使い方の調整に大分時間を要した。

○伍職…嗅覚
これが一番きつかった。匂いを使う意外なにも思いつかず。それもただ匂うのではなく、その匂いに意味を持たせなければならない。何度でも言おう、大変だったの。締め切り当日昼まで何も浮かばず。浮かば無さ過ぎて荒川を延々と歩く「二ノ宮金次郎」作戦に出るもそれでも浮かばず。一旦休憩しようと近所のイトーヨーカドーに昼飯買いに行く最中突如閃く。そこからはとにかく書いて書いてで、思いつくまでは過去最長の時間を要したが実際起こすのは六作品中最速。

○陸職…六感
インプロを作品中盤に設置しているので何も考えずすぐに書けた。


配役は上記内容というよりも個々人の演技の特徴を戦力化し均等に分散。先輩と後輩が上手く混ざるようにした。

フライヤー。動物園における五感ということで目、鼻、口、耳、肌の特徴ある動物を撮ろうと思っていたが危機を察知するミーアキャットに六感を見出し決定。危機回避能力がわたしっぽいなぁと思った。わたしの場合はチキンハートの石橋叩きすぎて壊しちゃうなのだが。撮影中、ライトの兼ね合いで一筋の光が挿した画が撮れ即決。