本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること ネイサン・イングランダー

2013-08-14 | 小説

つまり、アメリカでホロコーストが起こった場合に、キリスト教徒の友人たちの誰が私たちを匿ってくれるだろうかって

アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること (新潮クレスト・ブックス)
ネイサン・イングランダー
新潮社

偶然、立て続けにユダヤ人の物語を読んでしまいました。

タイトル作を含む8編からなる短編集で、ほとんどが現代に生きるユダヤ人を描いています。

とは言え、あまりにもバラエティに富んだ内容で、どう受け止めてよいものやら・・・。

何も書けそうにないので、裏表紙に引用されている、大竹昭子氏の書評を引用させていただきます。

ユダヤ人の歴史が、宗教が、複雑にねじれた感情が、熾火のような情念が、1970年生まれの目で、「ユダヤ人」の内側に留まりつつ観察される。正義を行うとはどういうことか。そもそも義とは何なのか。現代小説の扱わなくなった問いが一篇ごとにごとに人間の奥深さをあらわにするさまに戦慄。

ということです。(さすがプロですね。そうよそれが言いたかったのよと書きたくなるような簡潔で完璧な総括。)

 ユダヤの歴史と宗教が現代に生きるユダヤ人にまとわりつき、そこから逃れられないもどかしさ、逃れてしまった後ろめたさなどが伝わってきます。

 正義を語ろうとしたときに、ユダヤ人という存在を無視することはできませんね。

 冒頭に引用した問いは、タイトル作の中で、アメリカで育ったユダヤ人の2組の夫婦の中で交わされる話。

 私も昨年、アンネの日記をウン十年ぶりに読み直して、アンネの運命よりも、ユダヤ人を匿ったオランダ人達がいたことが印象に残り、そのあと、時々、同じ立場なら自分にできるだろうかと考えてしまうことがありました。

 自分が捕まるのも怖いけれど、自分の家族まで巻き込むかもしれないとしたら、難しい決断です。

 そして、唯一出せた結論は、「自分がユダヤ人なら、周囲を巻き込まずに捕まろう」ということ。

 日本人的なのかもしれません。

 自分が迫害される立場だとして、誰が匿ってくれるかという視点では考えたことなかったです。

 とにかく日本人には絶対かけない小説。

 結構読みにくかったけれど、やはり読んでみてよかった。

 最後に、ストーリーとはあまり関係ありませんが、とても好きな一説を忘れないように書き留めておきます。

 彼女はどんどん縮んでいるのだ。彼のアグネスは。毎夏、老人たちは子供たちが大きく成長するようにどんどん小さくなっていく。この世の背の高さというものは限られていて、それぞれのインチは持ち主を変えていくに違いないとジョシュは思うようになっている。



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