ぼくには数字が風景に見える D. タメット 講談社 このアイテムの詳細を見る |
これは、サヴァン症候群の青年、ダニエル・タメット氏の自伝です。
彼は自閉症で、そして、サヴァンの青年です。サヴァン症候群とは、映画「レインマン」で有名になった、すごい記憶力など限られてた分野で特異な能力をもつ人をいうのだそうです。
タイトルにあるとおり、彼は数字に特別な感覚を持っているのだけれど、それはまるで、音楽を聞いたり絵を見て優しいとか暖かいとかの感情が沸くのと同じように見えます。 この前に読んだ、「妻を帽子と間違えた男」の作者オリバーサックスが、彼らのことを「数字は友達」と想像して呼んでいたけれど、そういう風にも見えます。
彼はまた、特殊な言語感覚を持っており、何ヶ国語も理解し、話すことができる。彼が1週間でまったく未知の言語であるアイスランド語を習得するというチャレンジをした話も書かれているが、まったくすごいの一言です。
しかし、この本を読んで感動するのは、彼のそういう特異な才能に対してではなく、寧ろ、一人の青年の成長記としてなのです。
彼は、自閉症児でしたので、両親にとってはとてつもなく難しい子供だったと思うのです。ご両親の苦悩は、もしかしたら彼には理解できないことだったのかもしれませんが、それでも彼の視点から語られる両親は、とても忍耐強く、そしてあるがままの彼を受け入れて見守ってきたようで、その親子関係にとても感動します。
彼は、人とのコミュニケーションの難しさをこう表現しています。
子供の本などに、点と点を順番につなげていくとある形が現れてくるものがあるが、それと同じで、点のひとつひとつは見えるが、それをつなげて形にできない。だから「行間を読む」ことができないのだと思う。
一人一人の脳は違うんだ・・・と、あまりにも当たり前のことに気づかされました。
人間は一人一人個性をもっている。彼の場合はその個性が強烈だということ。しかし、成長の過程で、自分と人との違いに気づき、それに対処する方法を学んで、自分にできること、できないことを自覚した上で、自分のできる範囲で努力をして、自立して生きて行っている。
障害って、病気ってなんだろう。
頭がいいって、どういうことなんだろう・・・。
幸せってなんだろう・・・。
相手を尊重するということはどういうことなのか。
そんなことを、深く訴えて、心に残る一冊でした。
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