本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

天平の甍 井上靖

2005-08-06 | 小説

ハマリ本!!  

 恥ずかしながら、この年になって初めて読みました。学生の頃の読書量があまり多くないので、こういう名作というのは意外に縁がなかったのです。

  遣唐使として唐に渡った青年僧普照が、鑑真を日本に連れてくるまでの想像を絶する時間と苦難を淡々と描いているのですが、普照、鑑真という主役級よりもそれを取り巻く脇役たちが非常に魅力的で、その古めかしい文体もすぐに苦にならなくなり、読みながらじんわり”おもしろいなあ”と味わえた作品でした。

 なにより私が面白いなと思ったのは、業行という僧です。遣唐使として唐に渡り二十年以上のその殆どを写経に費やしている僧です。初めて普照が変わり者と評判の彼にあったときの言葉が  

自分で勉強しようと思って何年か潰してしまったのが失敗でした。自分が判らなかったんです。自分が幾ら勉強しても、たいしたことはないと早く判ればよかったんですが、それが遅かった。

 なんていうのです。唐に渡ったばかりで、やる気満々の普照には、業行の気持ちがこのときには判りませんでしたが、後に理解できるようになります。

 遣唐使に選ばれるほどなのだから、”秀才”かもしれないが、決して天才ではない。そんな人たちが真摯に生きる姿が新鮮でした。世の中殆どは凡人なのです。「子供たちはみんな個性と才能をもっているから、それを伸ばそう」なんて、今の世の中みんなで、幻想を見ているんじゃないでしょうか。

 本には、”補陀落山渡海記”という短編も収録されていました。この短編の主人公も同じ、真摯に生きる凡人です。まじめに生きる余りに無情な最期を迎えてしまった僧のお話。井上靖と言う人は紛れもない”文豪”だと思うのですが、きっと自分のことを天才だとは思ってなかったのでしょうね。

 私が手にしたのは、実家の父がずっと昔に購入した文庫本で、今手元にないので出版社は定かではないのですが、注解が各ページにあり、探さなくても読めるので、大変便利でした。これを読んで井上靖をもっと読もうと思ったのでした。(そのワリに、その後3ヶ月以上たってもまだ1冊もよんでないのですが。


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2 コメント

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初♪ (HANA)
2006-01-04 19:26:34
15歳ですが、こんにちわ。今回読書感想文の資料を探してたのですが、この子供へのコメントがとても面白かったので、コメントしました♪
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コメントありがとう (yeastcake)
2006-01-04 21:28:10
私はHANAさんのおかあさんくらいの年なのだけれど、子どもがいないので、こういうところで、HANAさんとコミュニケーションができてとても感激。

 私は自分でやりたいことを見つけて何かを始めることはできませんでしたが、自分に与えられた仕事は、とりあえず一生懸命やってきました。そしてその中に私を評価してくれる人がいて、新たなチャンスを与えてくれて、今に至っています。仕事でも、プライベートでもいろいろ失敗もしたけど、今では愛するパートナーにも巡りあい、今が一番幸せと思っています。

 HANAさんもこれから、いろんなことが待っているけど、いつも自分に正直にやっていれば、幸せになれるよ

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