本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

消えたカラバッジョ

2009-04-21 | ノンフィクション
消えたカラヴァッジョ
ジョナサン・ハー
岩波書店

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 レンブラントについては、展覧会にも行ったことがありましたが、恥ずかしながらカラバッジョについては、殆ど何も知りませんでした。

 

 

 実は、この本を読み始めたときも、カバーに書かれていたあらすじも読んでいなかったので、途中までフィクションだと思っていて、フィクションについてはところどころぎこちないし、”衝撃的発見”が、ちょっと中途半端だし、どういう話なんだろう・・・とちょっと退屈していました。

 

 

 内容は、1990年バロック絵画を代表する、カラバッジョの「キリストの捕縛」がアイルランドで発見されたという事実を軸に、それにまつわる研究者達の姿や、カラバッジョ自身の生涯を描いたものです。

 

 

 フランチェスカと、ラウラという二人の若い研究者は、マッティ家の古文書庫の1602年から1603年の会計記録からカラバッジョの「エマオの晩餐」、「洗礼者ヨハネ」そして、「キリストの捕縛」と思われる3点が購入された記録を発見する。その中の「キリストの捕縛」については、イギリス人美術史家ロベルト・ロンギが1930年に書いた論文の中で、1802年にスコットランドのニスベットという金満家が購入したのではという仮説を立てていたが、作品は不明のままだった。

 

 

 そして、その絵はアイルランドのイエズス会が所有していた。大変優れた作品だとは見れば分かるが、誰の作品かも忘れられたまま、教会の応接室に飾られていたのだ。その修復を依頼されたアイルランド国立美術館のイタリア人修復士が、カラバッジョマニアであったことから発見につながる。

 

 

 カラバッジョを知らない私には、この本を読み終わった後でも、それがどれほどの大発見だったのか、もうひとつ伝わりませんでした。

 

 

 ただ、現在もまだイタリアに貴族が存在し、一族の記録がきっちり残っている様子や、古い記録と新しい技術の両方から今まで分からなかった事実が少しずつ掘り起こされていく過程の面白さなどは伝わりました。

 

 

 自分の読解力を棚にあげますが、やはり少し構成が弱いような気がしす。それに翻訳の問題か原作の問題か、文章を何度か読み返しても何が言いたいのか、肯定しているのか、否定しているのか、よくからないところもいくつかありましたし、登場人物に対する評価に作者の好き嫌いがかなり反映しているようで、実際に今でも生きておられるだろうに、こんな書き方をされたらいやだろうなぁ・・・と余計な心配をしてしまいました。イタリア人は人に批判されても気にしないのでしょうか・・・。

 

 

 それに、ある学者の依頼で、資金もその学者もちで行った調査で見つけた内容を、いくらその学者の興味から少し外れた内容だったとしても、同意無しに勝手に学生ごときが別の雑誌に発表することが許されるんでしょうか・・・。私には分かりませんが、その学者が曲者のように描かれているので、ちょっと彼に同情してしまいます。

 

 

 また、発見後、アイルランド版「キリストの捕縛」が本物とほぼ固まった後でも、別の絵がこれぞカラバッジョと発表され、訴訟などのスキャンダルが相次いだ話など、この方が、フランチェスカの恋人とのエピソードよりもっと面白いだろうと思うのですが、さらっと流されて、ちょっと残念な気がしました。 

 

 

 なお、よく分からないなぁと思いながら読み終わった本書ですが、このサイトを読んで少しすっきりしました。 サイトの管理者であるTomioさんが書いておられるように、作品の写真を入れていないのが、少し不思議でもあり、不親切であるという風に私も思いました。(私が、この本がノンフィクションだと気がつかなかったひとつの理由が、普通ノンフィクションなら当然あるべき写真などが一枚もなかったことです。)

 

 

 それでも、カラバッジョという画家に対する興味がとてもいたのでネットで少し探してみたらすごいサイトを見つけてしまいました。

 

 オランダのゴッホ美術館のサイトで、 レンブラント・カラバッジョ展 が開催されたときに作られたもののようですが、二人の作品を比べながら細かいところまで見ることができます。これから読む方は、こちらで上記の3作品を確認しながら読まれるとより楽しいではないかと思います。