またまた、社内の廻し読みの真保裕一作品です。今度は気象庁の職員の話です。
鹿児島県薩摩硫黄島付近の集中観測のために、鹿児島へ行った気象庁の研究員江坂は、現地でその観測が延期になると聞いて、元同僚で、2ヶ月前に左遷され、今は鹿児島勤務の森本を訪ねる。しかし森本は既に退職し、連絡がとれなくなっていた。森本の左遷に少し責任を感じていた江坂は、何があったのか気になって探し始めるのだが、実はそれは海底火山の活動から始まり、それを利用しようとしている国の壮大な陰謀が裏にあった・・・・。
著者の作品を3冊続けざまに読んで見て、少しこの人の傾向が分かってきました。まず、
「社会的ななことをネタに書きたい」
「いろんな職業の人をネタにしたい」
「科学的なことも入れたい」
硬派なエンターテイメントという分野があるとすればそれにあたるんじゃないかしら。かなり取材とか調査をしないと書けない内容ですね。この本は1993年刊行です。今では、竹島や尖閣諸島の領有権を巡る問題は一般の人にもかなり認知されていますが、当時はまだそれほどでもなかったのではと思います。(単に私がそういうことに無頓着に生きていただけかもしれませんが)そいういうところに目をつけたのも評価できると思います。
あらすじはかなりイケルし、女性問題でつまずいたまじめなベテラン職員とその娘の関係などがんばって書いてる。でも私には何か物足りないのです。これまで読んだこの人の作品はみんな同じ印象です。ありえない度でいえば、もっとありえない話は一杯あるのだけれど、この人のを読むと、ちょっとうまく行きすぎぃ・・・と思ってしまうのは何故でしょうか。
まだまだ会社で廻ってきそうなので次は期待します。