楽しめました。著者が想定しているバカとは、”哲学とか数学とか、抽象的なことが苦手な人たち”です。この本を立ち読みした時に、「それって私のことじゃない!」と思って買いました。が私はまだまだこの著者の想定しているバカのレベルにも達していないようで、まだまだ手の出そうもない本もかなり紹介されてはいました。
とはいえ、この著者の圧倒的な読書量は、尊敬に値するし、自分自身の価値観を明確にもって、これまで”名作”、”まずは読むべき本”とされていたものを、バシバシ切り捨てるその切れ味は読んでいて心地よかったです。もちろん、かなり辛口で、ひねくれ者にも見えますから友達にはなりたくないタイプですね。
例えば、”書評を信用しないこと”とあります。もちろん私自身も新聞や雑誌の書評は見ますが、さほど信用してはいません。とはいえ何故信用してはいけないかという説明が面白い。
「今谷(書評をした人)は、以前から井上(書評をされた本の作者)の書くものを面白いと思っていて、どこかで、どこかで褒めたいと思っていた。書評委員をやっていたときにたまたま出版されたのが『狂気と王権』だったので、この本の出来はともかく、井上を褒めたい一心で絶賛書評を書いてしまった」
言われて見れば、そういうこともあるのかと納得してしまいます。またやはり新刊本の書評はあまり悪いことをかくと、売り上げに関わるから、やはり同じ物書きとして、そいういうことはしたくないというのも理解できますね。 また、ブックガイドなど新刊に限らず自由に推薦できるものは、まだましだけれど、推薦者が実は一般の読者よりも、同業者や専門家の目を意識してしまって、「変に奇を衒ってしまう」ということがあるのだそうです。これも、納得。
最後にざっと推薦書を年齢、男女別に書きあげられていますが、この部分はホント、順番に読んでみようかなと思われるほど、そこそこ有名な人たちのさほど難解とは思われない作品が、並んでいて嬉しくなってしまいます。この手の本なら結構、古本屋などで安く入手できたり、図書館でも簡単に見つけられたりしそうで、お財布にも嬉しいです。
なんか今読んでいる本とは違うジャンルのものを読んで見たいけど、何を読めばいいのかなと思うときには、このの本の一番後ろの部分を本屋で立ち読みしてみるといいんじゃないでしょうか。