本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

行儀よくしろ。 清水義則  ちくま新書

2005-09-03 | 評論

 さすが清水義範氏の作品で、「教育論」といっても、とても読みやすいです。最終章に、「とりとめのない雑談を繰り広げてきたような気もするが」とありますが、まさに話し上手のおじ様の話を、ついつい聞き入ってしまったのような読後感です。

 「教育論というと、世間では真っ先に学校が悪いというが、学校で教えるのは知識であり教育は家庭でそして社会がするものだ。もし今の若者たちが本当に酷くなっているとしたら、それは日本が長く培ってきた文化が壊れようとしていることの反映でしかない。」というような主旨でした。  まさに、”俘虜記”で引用した大岡昇平氏の言葉の通り、過去の真実を否定することは現在の自分を愚かにするということなのですね。即ち、敗戦によって日本人が過去を否定してしまったため、新しい価値を見出すこともできず、結局は経済的な勝ち負けでしか、価値を評価できない社会になってしまった。そんな社会がどんな風に次世代を教育できるのだろうか? ということなんですね。  

 著者は、「教育が悪い=学校が悪い」という風潮にかなり怒っておられるように見えます。私は、子供もいなくて、学校にも縁のない生活をしているため、そういう議論にふれる事がなく良くわからないのですが、一般的な考え方はそうなのでしょうか? 街でお行儀の悪い若者見ても、学校はおかしいぞなんて思わないですけどね。親が悪いという人が大半のように思い込んでいましたけど・・・。

  まあ日本人は、戦争に負けたのでかなり早い段階で自分たちの文化を捨ててしまったのですが、遅かれ早かれ我々の文化は、”グローバライゼーション”の看板に押しつぶされていたかもしれませんね。

  ただ若者たちは、自分たちの親の世代が失ったものに対して、なにか気がついているのではないでしょうか。静かな”沖縄ブーム”は、自分たちが失ってしまった固有の文化を守り続けている身近な人たちに対する憧れのように私には見えます。

 アメリカのハリケーンによる大惨事のニュースをみても、日本人の若者が震災などの災害時に示した反応との違いは際立っています。(もちろん、ニュースにはならないが、人のために一生懸命働いている若者はあちらにもいるに違いないでしょうが)。

  今の若者だからこそ、60年前の敗戦のトラウマから抜け出して、新しい日本人としての価値観を作れるのではないかと思います。頑張って!若者!!!