会社の人から、頼まないけど廻ってきました。作家の方には申し訳ないけれど、本にとっては廻し読みされるのが幸せ、だと私は思います。
この本は、公正取引委員会の審査官が、ODAにまつわる談合をフィリピンで調査する・・・のかと思ったら、ある日本人誘拐事件にどんどん巻き込まれていくという話です。 経済援助という名前の裏で、そのもたらす金に群がる日本企業の構図が解き明かされていくのかなと最初は思い、かなり後半までそうと信じて読み進んでいったのですが、傍系だと思われた誘拐事件が実はこの話のメインでした。
そういう意味ではちょっと期待はずれだったかなぁ。 内容は、結構面白かったです。これぞ、”渾身の作”と思いました。少し前に読んだ食品汚染を扱った小説、「連鎖」のあとがきに、”著者はあくまでもミステリーの題材として食品汚染を選んだのであり、社会に何かを訴えようとしたわけではない”ということが書かれてありましたが、この小説でも同じなのでしょうね。
ただ、もう一つ人物が書ききれていない気がしました。主人公と、高校時代の友人の遠山の関係がちょっと無理がある。高校時代それほど親しくなかったのに、なんでそこまで分かり合えるかなぁ・・・。”良い人だから”と言う以外の必然が感じられないのでした。
まだまだ初期の作品みたいだし、多分会社では真保裕一のファンがいるので、まだまだ廻ってきそうなので、もう少し最近のものを読むのが楽しみです。