l'esquisse

アート鑑賞の感想を中心に、日々思ったことをつらつらと。

VOCA展2010 -新しい平面の作家たち-

2010-03-29 | アート鑑賞
上野の森美術館 2010年3月14日(日)-3月30日(火) 会期中無休



公式サイトはこちら

まずは本展の概要について、チラシから転載しておきます:

1994年に始まったVOCA(ヴォーカ)展は今回で17回目を迎えます。VOCA展は全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などに40才以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方式により、毎回、国内各地から未知の優れた才能を紹介してきました。

去年に続いて、この短い会期に何とか間に合って足を運ぶことができた。今年は35名の作家の作品が集結。私にとってこの展覧会は、未知の日本人作家のおもしろい作品に出会えるのが一番の楽しみ。

会場に入って一番最初に目に飛び込んできた作品が、現代美術に疎い私ですら既にビッグ・ネームに思える石川直樹の作品だったのはちょっと意外だったが、去年も名和晃平、三瀬夏之介、小金沢健人らの作品が出ていた。結局のところ、今回私が既知の作家はその石川直樹の他には齋藤芽生ましもゆきのお三方くらい。

今回の各賞受賞者は以下の通り:

VOCA賞 三宅沙織 『内緒話』『ベッド』

VOCA奨励賞 中谷ミチコ 『そこにあるイメージⅠ』『そこにあるイメージⅡ』

VOCA奨励賞 坂本夏子 『BATH, L』『Funicula(仮題)のための習作b』

佳作賞 清川あさみ 『HAZY DREAM』

佳作賞/大原美術館賞 齋藤芽生 『密愛村~Immoralville』

上記作品の中で、私が個人的に最もインパクトを受けたのが中谷ミチコの作品。石膏、ポリエステル樹脂を使用したどちらかというと立体作品の範疇に入りそうな作風だけれど、とにかく実作品を観ないことにはその仕掛けの面白さはわからない。彼女らの目を覗き込んだら最後、右に動こうと左に動こうと、あなたを追いかけてきます。

VOCA賞の三宅沙織の作品は、一見普通の白黒の平面作品に観えるけれど、フォトグラムという古い写真技法を用いて制作されているそうだ。清川あさみも、写真の上にビーズやスパンコールなどが縫いつけられた、手の込んだ作品。受賞は逃したけれど、線香で和紙を焦がしながら作成するという市川孝典もいて、現代作家の作品を観るにはその手法も前知識として持っていないと鑑賞の楽しみも半減してしまうということが最近やっとわかってきた(レベルの低い話で・・・)。

話を受賞作家に戻し、坂本夏子の油彩画は歪んだ、ちりめんのような画面がユラユラ。齋藤芽生は相変わらずヒッソリと毒を吐いているような、怖くて美しい独特の世界。

勿論受賞作品以外にも個人的に目を惹いた作品がいろいろ。いくつか挙げておきたいと思います。

山本理恵子 『おばあちゃんと椅子』『生花』『お夜食』
それぞれのタイトルのモティーフが、言われてみれば頷けるという程度に抽象化された形で描かれている。絵具がとてもきれい。虹のようなグラデーションがひかれた、しっかり色が塗られた部分と、薄く溶いた絵具が染み込んでいる部分があり、色彩感覚が目に楽しい。

ましもゆき 『永劫の雨』
本作は真ん中にドンと鳳凰が構えていて、とても華やかでかっちりした構成という印象。相変わらずペンとインクによる緻密な描き込みは見事で、うっとりする。お馴染みのヒヤシンスの根っこのようなものも健在だったけれど、個人的にはもっと脳の営みが拡散したような、得体の知れない世界が好きかもしれない。

大庭大介 『SAKURA』
画面全体が淡い色で描かれ、しかもパールのような光沢を放つ作品。アクリル絵具でこんな典雅な画面が出来上がるのか、と新鮮にも感じた。美しいです。

以上、次回も多様な作品に出会えるよう期待したいと思います。