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武漢日記 方方

中国武漢在住の小説家が、コロナ禍でロックダウンになった武漢での60日間を綴ったブログ日記の日本語版。日記の内容は、著者自身の日々の暮らしぶり、友人とのメールのやり取り、友人である4〜5名の医者からの情報の紹介とそれに対する感想などだが、武漢の人々がコロナ禍で何を考えどう行動したか、各所からの情報がそれにどのような影響と結果をもたらしたかがビビッドに伝わってくる。これを読むと、武漢の人々が、如何に忍耐強く振る舞い、如何にお互いに助け合い、如何に危機を乗り越えようとしたかがよく分かる。その一方で、ウイルスの存在が、明らかになってからの約20日間の失政がどの様に被害を大きくしてしまったかも浮き彫りになってくる。この日記は、中国当局?によって何度も削除されたがそれでも世界中に拡散し武漢の実情をオンタイムで教えてくれたという。一方、政府や当局の上層部を容赦なく批判する著者に対してネットでの誹謗中傷や脅迫がものすごい勢いと量でなされ、それはコロナ禍が沈静に向かうと逆に激しくなっていったという。まさにネット社会の功罪両面を見せてくれる。また、本書ではすでに2月の時点でコロナから回復した人の後遺症の問題が指摘されているなど、その後の世界で問題になっていることがいち早く書かれていて驚かされる。武漢で何が起きたかを世界中で教訓にして欲しいという著者の思いを無駄にしてはいけないということを心底思わせる一冊だ。(「武漢日記」 方方、河出書房新社)
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