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生者と死者 泡坂妻夫

「短編が消える」「『しあわせの書』以上の衝撃作」という触れ込みの本書。先日読んだ作者の「しあわせの書」は読み終わった後に思わずもう1冊買ってしまったが、本書も人に勧める場合はもう1冊買ってから渡す必要があるようだ。普通の文庫本なのに、全てのページが20くらいの袋とじになっていて、まずその袋とじを破らずに開くことのできるページだけを読んでいくといつの短編として読める。そのあとで、全ての袋とじを開けて善ページを読むとそれが1つの全く別の長編になっているという。説明を読んだだけでは判らないが、実際に読んでみると想像以上の衝撃だ。短編の時に女性だった登場人物が長編では男性になっていたり、短編では名前だったのが長編では苗字になっていたり、短編では「トランプのクラブ」の意味だった個所が長編では「ゴルフのクラブ」になっていたりで、ここまで凝ったことをするこの作者は、一体どういう人なのだろうかというのが偽らない感想だ。(「生者と死者」 泡坂妻夫、新潮文庫)

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